第135話 気流
今の状況で俺に有利なのは何か。答はすぐに出た。ニールと俺の位置が離れつつある事だ。
ニールは上昇の勢いが止まらない状態で下にいる俺に遠距離攻撃を放っている。結果更に上向きの力を得ているのだ。
一方で俺は下降気流&自然落下中。
覚悟を決めた。落下速度はできる限り落とさない。といっても限界は高度40mというところだろう。それより下では全力の
とりあえず攻撃を避けつつ下降気流の中心から少しずつ外れていく。
ニールから結構離れた。これで少しの動きで遠距離攻撃を避けられるようになった。
遠距離攻撃は距離が離れるにつれ円錐状に広がる。しかしこの範囲を完全に避ける必要はない。威力が大きくダメージを食らう中心部分から逃れればそれで充分だ。
そして威力が弱まった遠距離攻撃は俺を更にニールから離れた位置に追いやる。つまりダメージにならない程度に食らう方が今は正解。
ニールの遠距離攻撃の頻度が落ちた。俺が離れていく事に気づいたのか移動に重点を移したようだ。
チャンスだ。この機会に俺も一気に移動。何とか下降気流を脱する。
同時に俺は
今の速度と気流の位置を維持すれば、何とか着地は可能だ。更に木の枝をクッションに使えば充分だろう。
ニールからの遠距離攻撃は散発的に続いている。だが移動を重視しているようで威力も間隔も落ちた。避けるのは容易だ。
遠距離攻撃を避けつつ俺は森の中へ落下。木々で遠距離攻撃の射線が遮られる中、手近な木々の枝を数本犠牲にして落下速度を殺し、無事着地。
木々の間に入ったので見通しが悪い。位置は
鬱蒼とした森なので夏でも下草はそこまで酷くない。無論道よりずっと動きにくいが、俺ならそこそこの速度で移動可能だ。
ニールの
上からの遠距離攻撃がバサバサと枝葉を散らしつつさっきまで俺がいた場所を穿った。
問題無い。これくらいなら
さてどうするか。現時点ではニールが有利だ。
俺から攻撃しても躱すのは簡単。ニール側の攻撃もなかなか通らない。
しかし森の中より空中の方が動きやすい。
俺のほうが有利になる場所……それは速度を活かせる場所だろう、やはり。
なら森の中より足場のいい街道上だ。ただそうなると森の中と違い障害物が無くなる。空中相手ではかえって不利だ。
かといってこのまま森の中というのはじり貧だ。何か手は無いか。ニールの攻撃を避けつつニールを、そして周囲を確認する。
ニールの高度が落ちてきた。何故だろう。
周囲の気流を見て理解、上昇気流が少ないからだ。地面の温度があたたまりにくい森では上昇気流ができにくい。
その上攻撃と移動に
更に周囲の気配を確認する。リサ達やシュウヘ達が遠い。大分南側へと戻ってきてしまったようだ。
となるとこの辺の地形は北に向かってゆるい登り坂だ。そしてその先は北向きの下り坂。戦闘前に通った場所だ。
そうだ、思いついた。この地形は利用できる。上手く行けばニールを落とせるはずだ。
俺は街道目がけて走り始める。
ニールは俺を追って来た。高さは80mを切った位だろうか。もう少し高度が落ちた方がいいだろう。
俺は一度立ち止まって、ニールに向けてエアシェルを放つ。ニールは当然のように俺の攻撃を避け、そして立ち止まった俺に遠距離攻撃を連射する。俺はぎりぎりで避け、そして逃げてまた攻擊。
上昇気流が少ない森の上でこれを続けると当たり前だが高度が下がる。だがあまり高度を下げすぎてもまずい。
ニールの高度が70mを切ったところで俺は街道へ出た。この辺の街道は幅8mの石畳。北に向かって上りの傾斜。路面が温まっていて上昇気流が出やすい状態だ。
森の中と比べると障害物が圧倒的に少ない。つまり上空にいるニールが圧倒的に有利だ。
自由に動ける上に上昇気流もある。攻擊と移動に重点をおいても高度が落ちにくい。
ニールはそう判断するだろう。そう思いつつ俺は北へ向かって走る。
案の定ニールは遠距離攻撃を連射してきた。俺は加速と左右移動を使って攻撃を避ける。この後の事を考えると速度を落としたくない。
それに冷静になるとこの攻撃、確かにきついが今までで一番という程ではない。加速と左右への回避だけで攻撃の芯を外せるから。
つい数時間前にもっとヤバい攻撃を受けた。全力で方向も変えつつ逃げないと逃げ切れない、かつ少しでも食らうと立てなくなるような攻撃。
そう、フローラさんとエレインさんの連携攻撃だ。あれに比べればこんな攻撃怖くない!
先程リサ達と走っていた速度よりさらに高速に達した。今の俺には限界の速度だ。
ニールは俺の速度についてくる為、重力と空気抵抗を使ってを斜め下方向に加速をかけた。上り坂なので高度差が更に縮まる。
そして峠を過ぎた。下り坂になる。
日陰に入った瞬間、
空気抵抗を受け俺の速度は一気に落ちる。それでも足に力を込め、俺は走る。
空気が動いた。俺の
気流が生まれた。峠を越える南から北への気流、そして峠上方からこの気流に加わる下降気流!
ニールの高度が一気に落ちた。上昇気流が下降気流へと変化したのだ。もはや重力加速度に抗して支えてくれる力はない。
勝機だ。俺は
ニールが落ちてきた。気流に裏切られ重力に引かれて。そんな中でも
ニールが遠距離攻撃を放つ。躱さない。左腕に込めた
ニールが下降気流と重力加速度で街道に叩きつけられた。それでも両手で路面を叩き姿勢を回復しようとする。
だが俺の方が速かった。
背中を路面で押さえつけられた形のニールは力を後方に逃がせない。それでも
確かに手応えは感じた。しかし直後に起きた
身体を丸めつつ先程の攻撃で駄目駄目になった両腕でコントロールして路面を二回転。立ち上がってすぐ左へ飛びつつ方向転換、ニールを確認。
ニールは俺の攻撃を受けたままの状態で倒れていた。
倒せたようだ。そう思うと同時に両腕から激痛。慌てて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます