第128話 敵影捕捉
そして今、俺達は北へと向かっている。何というかもう、一瞬も気を抜けないような猛速度で。
「一時的にですが速度の恩恵を貸し与えます。向こうへ着くまでに自分のものにして下さい」
つまり神力によるチートだ。ただし速度恩恵を使えるようになったところで時速300km超えるのはきついし厳しい。
回復と持久の恩恵を使う余裕もない。全筋力と
この速度では一瞬の不注意が大怪我に繋がるだろう。だから次の足を置く場所、その先の状況等を必死に把握しつつ走る。
おかげで時間感覚がよくわからない。もうどれくらい走っただろう。わからない。坂がきつくなっていないからステルム地方はまだ先だろうけれど。
そんな事を思いつつとにかく走っていたところで。
「ちょうどいい練習台を発見しました。ここで
ちなみに人間はこの速度で前を向いて会話出来るようには出来ていないと思う。少なくとも俺は無理だ。
というのはともかくとしてリサが言った練習台とは何だろう。少しだけ意識を前方へと向ける。
とんでもない
小さいのといっても普通の人間の
そして大きい方は強大さも歪さも人間とは思えない。これが
「各所に捕らわれていた元
異形なる者、ソウが
前方遠くに目でも集団が捉えられるようになる。大きい者は小さい者の2倍近くある。大人と子供が走っているのだろうか。
しかしすぐに気づいた。小さい方も人間の大人程の大きさがある。大きい方が大き過ぎるのだ。
「気絶撃は効かない。力を求め変容した者を解き放つには力に絶望させる事のみ。具体的には相手に『かなわない』と思わせれば勝利となる」
圧倒してやればいい訳か。口で言うのは簡単だが実際は大変そうだ。何せ敵、特に五つある大きいのはどいつもこいつもとんでもない
「あれらの肉体は既に人間のものではありません。神力で与えられたエーテル体を物質化したものです。元の肉体はあの身体とエーテル的に繋がった別空間にあります。
ですから相当に手荒な攻撃をしても死ぬことはありません。思い切りよくやって下さい」
思い切りよくと言うがどう考えても向こうの方が
向こうも北へ向かって走っている。それを俺達が更に高速で追っている形だ。俺達の方が常識外過ぎる速度なので距離はみるみる縮まっていく。
敵、異形の集団の中にある覚えがある
これはムナールだ、おそらく。ついこのまえヤったばかりなのでわかる。
ちなみにムナールとおぼしき異形はこの中では小さい方だ。なお視界に入っているからステータスを見る事が出来る。
『ムナール・ウガ・ナグル 種族:
筋力235 最大235
特殊能力:不死 称号:
やはりムナールだった。ただ人間では無く種族が
意外だったのが能力。確かに高いことは高い。しかしリサあたりと違って全部の数値が読める。勿論俺と比べるとずっと上だが、そこまで異常に強そうでもない。
念の為に一番
『ブルグト・ムブグ・トラグルン 種族:
筋力412 最大412
特殊能力:不死 称号:
確かに強い。しかし手が届かない範囲では無い気がする。少なくとも神と戦うなんてよりはずっと。
そこまで思って気づいた。神と戦って、そして無事に帰るのだった。約束をしたのはサダハルという形になっているけれど。
ならば。この位の敵を倒せないでどうする!
「こちらが敵である事に気づいたようだ」
前方のうち一番巨大な奴、ブルグトが吠えるような音を発する。ムナールを含む小さめの連中が六体、速度を落とした。
「どうやらこちらを倒せと下っ端に命じた様です。一人一体ですから私とミーツも一体ずつ受け持ちます。手早く片付けましょう」
こちらも速度を落とす。風圧が一気に下がった。呼吸が大分楽に感じる。
「なら一番右側は僕がやります」
ナリマがそう宣言した。
「なら僕はその隣をやろう」
「拙者はその隣にするでごわす」
となると俺は当然、右から4番目、左から3番目だろう。ちなみに該当の敵はムナールだ。
「順番通りなら僕は右から4番目ですね。折角ですしもう一度かわいがってやりましょう」
勿論今度はああいう可愛がり方ではない。同じ実戦でも筋肉を使う方の戦闘だ。
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