第29章 そして戦場へ
第126話 予想外の戦い
「さて、それでは現場へ向かうとしよう」
「いえ、その前にまだ確認したい事があります」
ミトさんだ。
「何でしょうか」
「サダハルやスグル君が神に用意された存在だというのは理解しました。今までに思い当たる事は幾つもあります。
しかし二人に神と戦えるだけの力があるかどうかは正直なところ疑問です。少なくとも私の知っているサダハルやスグル君はそこまでの強さはまだありません。私はそれだけの強さを見ていません」
何を言うつもりなのだろう、ミトさんは。確かに俺もそこまで自分が強いという自信はないけれど。
サダハルも何故といった表情だ。
「ええ。確かに今のサダハルさんとスグルさんにはそこまでの力はないでしょう。ですので成否はこれから神へとの戦いに到達するまでで、そして神との戦いの中でどれだけ成長できるかにかかっています。
ただし今現在の時点では全てが上手く行く可能性はそこまで高くありません。そこはミトさんが危惧する通りです。
それで、貴方はどうするのでしょうか?」
「戦いに赴くだけの実力がある。それを言葉では無く実力で示して欲しいのです。
だからサダハル、そしてスグル君。全力の私と戦って下さい。戦って、そして勝って帰って来るというのならそれくらい造作も無いでしょう」
フローラさんとエレインさんが顔を見合わせて、そして頷いた。
「私も参加するわよ。神と戦う位だから一対二じゃ不公平でしょ」
「同感。二対三で勝てる位で無ければ認めない」
おい、待ってくれ! 何だそれって! つまりミトさん達と、此処で本気で戦えって事か。
「面白い。なら残ったシュウヘとナリマの実力は僕達で確認させて貰おうか」
「そうですね。私とソウに勝てないようではニールやナタリアにすら勝てないでしょう」
ミトさんは頷いて、そして全員を見回した後、口を開いた。
「そういう事です。よろしいでしょうか、リサさん、ミーツさん。勿論サダハルやスグル君が」
リサは頷く。
「わかりました。確かにここで負ける程度ならそれまででしょう。時間ももう少しだけ余裕があります。外の第三運動場をフルに使いましょう」
ちょっと待ってくれ。何でこうなったんだ。訳がわからない。
打ち合わせていたという事は無い筈だ。そんな状況は俺は知らないし感じていない。サダハルもミトさんがこの件を言い出した時にはわかっていないという表情だったし。
わからないまま俺達は会議室を出て廊下を通り外に出て、そして第三運動場へ。
中央まで行ったところで先頭を行くリサが立ち止まる。
「私とミーツは一切介入しません。判定もしません。反則その他も一切とりません。勝利条件は相手が納得するか動けなくなるまで。
それでいいですね」
「ええ。ありがとうございます」
ミトさんはリサに頭を下げる。
「私とエレインは最初スグルを相手する。だからミトちゃんはサダハル相手に専念して」
「感謝します」
ミトさんは2人に頭を下げ、そしてサダハルの方を向いて構えた。
サダハルはミトさん相手だと分が悪い。少なくとも学校等での練習試合では。つまり本気で倒すつもりという事だろうか。しかし何故なんだ。
俺はフローラさんに問いかける。
「理由を聞いていいですか。ここで戦わなければならない理由を」
「まずは問答無用よ。練習試合と違って、怪我しても死ななければ上等くらいの勢いで行くから注意してね」
「同じく」
そう言った直後、二人の姿が消えた。
ヤバい! とにかく全力で前方へとダッシュする。
背後を強烈な
更に俺は踏み出した右足で強引に地を蹴り左へ向きを変える。俺の右側、さっきまでの進行方向を遠距離攻撃がかすめた。
これはエレインさんだ。高速で移動しつつ敵の進行方向に遠距離攻撃を放つ技。少しでも動きが単純になると直撃を食らう。
三歩めでまた右足で強引に向きを変え、全力ダッシュ。フローラさんからの第二撃を躱す。
こちらが攻勢に出る余裕はない。質問をする余裕すらない。
フローラさんとエレインさんの速度を知っている俺だからこそ何とか躱せる。だがそれでもギリギリだ。
厳しい。少なくとも授業だの放課後の練習試合の時より数段上の攻撃だ。
ただ速いだけではない。当たると確実に動けなくなる位の
このままでは避け続けるだけで精一杯だ。どこかで活路を切り拓く必要がある。
しかし今のフローラさんとエレインさんのコンビネーションはほぼ完璧だ。俺一人では完璧に避け続けてもそれ以上は出来ない。
空へ逃げるのは下策だ。空中対地上の場合は遠距離攻撃がメイン。そうなると俺一人より二人の方が圧倒的に手数が多い。つまり撃ち負ける。
この状態を破る方法はないでもない。しかし少しばかりリスクが高い方法だ。
しかし俺には他には思いつかない。今の防戦一方から抜け出せて、なおかつ二人に練習試合以上の打撃を与えない方法は。
何度目かのフローラさんの攻撃を躱した直後、俺は身体を右回りにひねると同時に軽く跳躍。
同時に両手を重ねて開いて前方へと突き出す。
予想通りエレインさんの遠距離攻撃が襲ってきた。
しかし攻撃を避ける事を予想していたフローラさんの軌道からは逸れた。
姿勢制御しつつ地を蹴って距離を取る。二人から一気に30m近く離れた。
もちろんこの距離でも二人なら瞬時に間合いを詰める事が出来る。
しかし今、俺から同じ方向に二人の位置が重なった事が重要だ。左右に別れるにしろ、一瞬の間が生まれる。
この僅かな間を使って俺は呼びかけた。
「この戦いの意味は何なんですか! 目的は何なのですか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます