第124話 神々の失敗
「814年の大悪魔襲来事案は、公式には大
そう。それが俺達が知っている大悪魔襲来事案だ。
リサに続いてミーツ氏が口を開く。
「南下の理由は不明とされている。だがあの場で神力を使用して戦った僕とリサは理解している。今は
「
「故に戦いを、より強い相手、己を取り戻せる可能性の高い相手を求めて南下した。スパイン山脈の稜線に沿って、
ここまでが814年、大悪魔が襲来した背景だ」
なるほど。事象としては記録にあった『大悪魔が襲来した』通りだ。しかし背景には神の病気、狂った神があったという事か。
「ビルダー帝国も堕神連合も強力な
ただ私もミーツもまだ自分の持つ能力とその意味に気づいていませんでした」
「神は病の中にあっても常に狂っている訳ではない。時折正気を取り戻し、自らを回復させる為の方法を模索する。
その模索により特別な能力と運命を埋め込まれた人間は少なからず存在する。ただし大部分はその能力や運命が活かされる事無く平穏に一生を終える。後にそれではまずいという事で自分の能力を確認出来るようにした者も生まれたようだが」
そうか。ステータス閲覧能力が無いから気づけないという事がある訳か。その欠点に神も気づいてシュウヘ以降はステータス閲覧能力をつけたと。
もっともシュウヘやナリマ、サダハルや俺は異世界転生者だ。ステータス閲覧能力があるのはそのせいもあるかもしれない。
「大悪魔、
そこでやっと神の力と意思を取り込んだ存在同士による戦いとなった訳か。さぞかし強烈な戦いになった事だろう。
ただし俺は気づいている。その戦いで神の病は治ったのなら現在の事態にはならないと。
つまり、それが意味するところは……
リサ達の説明はここで止まった。何かを待っているような沈黙。
「『神の残光』を使用して、神力を使った戦いでも、神の病は治らなかったのでござるか」
シュウヘが静かな口調で問いかける。
ミーツ氏とリサは頷いた。
「その通りだ。神を宿した激烈な戦いであっても、神の病を完全に治すことは出来なかった。戦いを終えた後の僅かな間、正気を取り戻させただけ。
引き換えとなったのは多くの犠牲者。
一〇八三体余りの
「そしてビルダー帝国第三
国民の動揺をおそれて正しい犠牲者の数は隠されました。ですので知っているのは神力でそうと知った私とミーツだけとなります。魔竜アポトーシスはこの戦いで死亡しましたから」
理解した。これがリサが
一呼吸置いた後、今度はリサから話し始める。
「この戦いで僅かな間ながら、神は正常な思考力を取り戻しました。故により確実に、正常な思考を取り戻す方法を模索しました。
しかし人間を使用した方法では、戦いを使用する以外の方法を見いだせませんでした」
「ならば、と神は考えた。この激烈さにおいてほぼ人間世界の限界とも言える戦いで、それでも結果が得られなかった理由は何だろうかと。
その結果結論を出した。この戦いそのものが心を揺さぶるものでは無かったからではないかと」
「
ですが実は同じ神でもあるのです。主神にして統一神である
神の病も元はと言えばこの構造が原因です。アストラルと対をなす世界であるエーテル界を司る神、統括して
何かが俺の心に引っかかった。何かを思い出せそうな気がした。
しかしそれがわからないまま、ミーツ氏の説明になる。
「元は同じ神故に戦い方や能力も熟知している。また使用している肉体は自分達の手で生み出したこの世界のもの。
故にこの戦いは激しくはあるが既知の範囲内で進行した。
知っている技、知っている動き、知っている神力の枠内でのみ戦われた事。意外性が無かった事。激しくはあったが既知の戦いをなぞったものでしか無かった。
故に正常な状態を取り戻すほど、心が動かされなかった。それがおそらく失敗の理由だろう。そう結論づけた」
「ただし神はそのような事態を想定していました。ですので次の手は既に打たれていたのです。この戦い以前、蝕まれ消えていく正気を残したほぼ最後の頃に。
具体的には他の世界から元となる魂を召喚して、恩恵を授け、育てていました。自分達の想定外の戦いを生み出せる存在を作り出す為に。
それがここにいるうち、シュウヘとサダハルになります」
つまり勇者召喚&育成という訳か。なら俺とナリマはどうなのだろう。
「ナリマとスグルもおそらく同じ考えて召喚された存在だろう。しかしこの召喚は
二神はそれぞれ召喚時の事故だと認識した。しかし
他の神、おそらくはエーテル世界を司る三柱の神いずれかの仕業であろう。それがどの神なのか、
俺やナリマは別の神によって召喚されたという事か。
エーテル世界の神というと、今話に出てきた
何かが思い出せそうな気がする。しかし今の俺にはまだわからない。
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