第123話 もう一人の到着
次の瞬間、リサが出現する。フィジーク当局の警備を考えてか
「お久しぶりです。遅くなってすみません」
リサが一礼し、そして空いている席に座る。
「ビルダーの方も大変だっただろう。距離もある。それでこの時間で到着したのなら決して遅くは無い」
「そう言っていただけるとありがたいところです。さて、状況説明はどこまでしましたでしょうか?」
「レプチンと
「聖戦宣言を出した流れについては私も聞きたかったです。ですがその辺は後にしましょう。
もう少しここで話をする余裕があるようです。ですからこれから私から、現在のビルダー帝国と
しかし確かにビルダー帝国の状況は気になるところだ。少なくともビルダー帝国から来た皆さんはそうだろう。勿論俺もそうだ。
「本日の10時過ぎです。
内容はもうご存じかも知れません。『
この場合の神にそぐわぬ勢力とは政府や治安機関等、神に関係なく人が作り出した組織を指します。また最後の聖戦とは神の名の下、対立する神とその僕を滅ぼす為に行う戦闘の事です」
この辺の内容はサダハル達が言っていた事とほぼ同じだ。リサの話の方が詳しいけれど。
「
教会は街ゆく人に聖戦を訴え、教団
ただ政庁の方は健在です。
この辺りはおそらくフィジークと同じだと思われます。」
その通りだ。しかしリサの口調から考えるとまだ先がありそうな感じがする。
「他に注目するべき事が一点。トリプトファンの北西にあるコレカルシフェロールの刑務所で大規模な囚人脱走事案が発生しました。
脱走したのはデキスター・ジャクソン元総司祭をはじめとした旧教団幹部。目撃者の話によるとそれらの者は異形なる姿に変容して牢を破壊し、北へと向かったそうです」
「異形なる者、ですか?」
ミトさんの言葉にリサは頷く。
「目撃者はそう表現しているそうです。他の証言もあわせますと、おおよそ身長五メートルほどの巨人に変化したようですが、一部人と姿形が異なる部分があるそうです。ただ北へ向かって以降どうなったかは不明です」
「
ソウの呟きにリサは頷く。
「外典のイストミア記、第五節ですね。おそらくそういった存在でしょう。さて」
そこで言葉を止め、リサは俺達の方を見回す。
「この事態を完全に止める方法はひとつです。神を狂気から引きずり出す事。
これを人間側から為す方法は多くはありません。平常時なら対話も可能ですが、既に神は狂っています。故に言葉は通じません。
残された方法はただひとつ、力です。具体的には神をこちら側へ強引に顕現させ、戦いで、筋力でもって対話することとなります」
何だその脳筋的解決方法は! 神と戦ってわからせろって!
そう言いたい。しかしそうなる予感がしていなかったかというと嘘になる。だからこそ俺はミーツ氏に聞いたのだ。
『人間は神と戦って、勝つ事が出来るのでしょうか?』と。
だから俺はこう質問する。
「神を倒す事は出来ない。一柱でも神を失えばこの世界はバランスを失って崩壊する。そう伺ったのですが」
「その通りだ」
今度はミーツ氏が答えるようだ。
「実際、この世界で戦っても人間に勝ち目はない。ここは神が作りし世界だからだ。戦いで神が傷ついたとしても顕現を解けばそれで済む。神自体が損なわれる事はない」
そこでリサが口を開く。
「しかし戦いという形式なら神との対話は可能です。例えそれが神本体ではなく顕現した対象であったとしても、戦いという会話は神へと通じます。
その戦いが神の想定外であればあるほど、神が我に返る可能性が高くなります。そうやって神に我に返って貰う事、自分が病んでいると気づかせる事。それが人間側から可能な、この事態を解決する手段です」
「精神的に病んでいる際、身体を動かすことによって回復させる手段がある。神であってもこの手段は有効だ。むしろ神そのものが身体を動かすという機会が滅多に無い故、人間以上に有効であったりもする。動かすのが顕現先の肉体であっても」
どうやらミーツ氏とリサで交互に説明するようだ。そう思った瞬間、リサの
何だったのだ、今のは。
「今のは神力です。皆さんの力と運命を確認させていただきました。ここにいる皆さんは事情が違うにせよ、それぞれがここにいる意味があるようです。
ですからお話ししましょう。かつて似たような事態が生じた際、私とそこにいるミーツが試みた、病の治療行為とその失敗を」
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