第26章 堕神の申し子⑷

第114話 お約束? な聴取方法

 三日目の午後。今日は残念ながらクヒオビーチ作戦は中止。午後一でやってきたシュウヘを加え、ナリマの部屋で会議。


「夜は目一杯使えるようでごわす。ムナールも部下のエリッヒも泊まり番の残り2人を睡眠掌で完全に眠らせると決めたそうでござるから」


 何というか……


「そこまで漏れているんですか。向こうの計画は」


「ムナール、よっぽど部下に見放されているようでござる」


 何だかなあと思いつつも計画を確認する。

 なおシュウヘの情報を元に計画の一部を変更した。ムナールからお話を聞かせて貰う場所を、ナリマの部屋から風呂場へ変更したのだ。


「指導員が全員起きないのなら、寮でこそこそする必要はないでごわすよ。この部屋では話を聞くのに狭すぎるでござる。それにスグル殿が話を聞くのなら、掃除しやすい場所の方が良いでござるよ」


 確かにその通りなので、聴取場所は風呂場に変更。

 そしていよいよ夜となる。 


 夜の点呼、消灯、そして夜間の第一回寮内巡視の後、予定通りの時間に筋配けはい隠匿を使ってナリマの部屋へと潜り込む。

 既にシュウヘも部屋へと来ていた。


「御協力、感謝でごわす。スグル殿が聴取されるなら、おそらく全てをはくでござろう」


「全力を尽くします。それでは筋配けはいを消して待つとしましょうか。予定ではあと1時間後でしたでしょうか」


「その通りでごわす。ただムナールの交代時間が23時からなので、そこから後はいつでも対応出来るよう心がけた方がいいでござる」


「了解しました」


 23時まではあと30分程度。筋配けはいを最大限に隠匿し、部屋の入口側、扉から死角となるところで座って時を待つ。


 それほど待つ必要はなかった。交代時間である23時を少し過ぎたところで筋配けはいがこちらへ向かってくるのを確認。


 生徒トレーニーと大差ない筋配けはいだが就寝時間帯に堂々と廊下を歩いてくる生徒トレーニーなどいない。つまりこれがターゲットだ、多分。


 ナリマはベッドの上で筋配けはいを二割程度まで殺している。これは睡眠を装っているから。

 俺やシュウヘの部屋は筋配けはいゼロなのだが、睡眠状態によってはそういう事もある。だから多分大丈夫だろうとは思っているが、少しだけ不安。


 筋配けはいはまっすぐこの部屋に近づいて来た。扉の前で内部を伺うように立ち止まる。合鍵で部屋の扉を開けるようなガチャガチャ音。ノブを回すかすかな音。


 そして男が部屋に入ってきた。ちょうどいいのでステータス閲覧を実施。


『ムナール・ウガ・ナグル 29歳 身長183.2cm 体重90.4kg

 筋力89 最大101 筋配けはい63 持久48 柔軟45 回復55 速度45 燃費38

 特殊能力:なし 

 称号:中級使徒メタボリック(※家の威光) パワハラ 駄目上司』


 何だこの称号、パワハラとか駄目上司とかついている。でもまあ理由は想像がつく。きっと影でそう言われているのだろう。


 そして中級使徒メタボリックに対して家の威光なんて注釈がついている。そこまでの実力はない、家の威光でついているだけ。それが称号にまで反映されてしまっているようだ。


 その辺はステータスを見ると頷ける。筋力こそそこそこ大きいが他はブートキャンプに参加する生徒トレーニーの方が高いだろう。数値で勝てるのはきっとマサユキ位。ただ実際に戦った場合、おそらくマサユキが勝つと思う。奴は数値以上に強いから。


 俺と同じように筋配けはいを殺していたシュウヘがすっと動いた。ムナールが振り向く間すら与えず後頭部に一撃を叩き込む。

 あっさりムナールの意識は刈り取られた。倒れて床に崩れる前にシュウヘが抱える。


「あとは事情聴取でござる。お頼み申した」


「わかりました」


 シュウヘはムナールを、俺とナリマは聴取道具一式を持って風呂場へ。三角木馬(初心者用)を置いてその両脇に踏み台を一番高い位置でセット。天井の梁からロープを吊す。

 燭台にろうそくを5本立てる。点灯させるだけなら1本おおよそ2時間ちょっと持つ蝋燭だ。ヘビィな使い方をすると消費が激しいので、念のため多めに用意。

 

 本人は全裸にひんむいて革製目隠しと革製マスクを装着。両手は後ろに回して革製拘束具をつける。足はおもりを装着可能な革バンドを左右につけてと。

 天井に回した縄で腹部を縛ればほぼ準備完了。


「マスクをしては喋れないのでは」


「喋りたくなるまではマスクをしたままにします。呼吸もある程度抑制した方が面白い、いや効果が高いので」


 酸欠もまたエクスタシーに至る方法のひとつだ。

 一通りセットした姿を見てとりあえず俺は満足する。うむ、男でも筋肉質の奴が全裸&拘束姿で倒れているのは悪くない。


 しかし一物がエレクトしていないのが欠点だ。画竜点睛を欠くというところだろうか。これからのお仕置きで天国までかせてろう。それまでの辛抱だ。


「蝋管の準備はいいのでござるか」


「いつでもできるように準備だけはしておいてください。録音はマスクを外して合図してからです」


 三角木馬の上にムナールを置いて、縄で少し釣って股間が木馬の背ぎりぎりになるよう調節する。足は踏み台の上であまり暴れられないようある程度余裕を持たせて縛る。


「これで準備が出来ました。それでは話を聞く前の準備運動から開始します」


 後頭部に一発入れて気絶撃を解除。


「ム、ムムムムム……」


 ムナールが何か喋ろうとしているが言葉にならない。革マスクをしっかりかけているから当然だ。


「それではこれからムナール、貴方を新しい世界へと案内するわ……」


 調教、開始。


 ◇◇◇


 二時間後。


「それでナリマの暗殺を命じたのは誰? はっきり言いなさい」


「そ、そ、総主教様です。堕神メタボリック教団総主教、マージュ・レン様となります」


 ムナール、完全に墜ちた。今はただ苦痛ごほうびを欲しがるただの豚だ。


 俺がオネエ口調になってしまっているのは勘弁して欲しい。俺の観念では責めるのは女王様の役目となっているからだ。


 ただし女王様と言っても女である必要はない。少なくとも俺はそう思っている。ドラァグクイーンなんてのもあるぐらいだから。


「それは何時、何処で命令されたの。答えないとご褒美は上げないわよ」


「は、はい。7月25日、朝10時の幹部会議の後です。は、はやくご褒美を……」


「そうね。それじゃ少しだけ縄を緩めてあげる。お願い」


「了解」


 ムナールの体重を支える縄をシュウヘが少しだけ緩める。三角木馬の背中が奴の股間を押し広げる。


「あっ、あああっ……」


 ムナールは腰を振りつつ苦痛かいらくを貪っている。その隙に俺は小声でナリマに尋ねた。


「これで聞きたい事は全部ですか?」


 ナリマの暗殺以外についても一通りは聞いた。命令系統とかそのほかの違法活動内容とか、違法行動拠点の位置とか。


 もちろんこの辺の質問内容は俺が考えたものではない。ナリマやシュウヘが用意したものだ。

 プラスして更に引き出せそうな情報も随時聞き出している。

 

「十分以上です。これだけ情報があればフィジーク公国も動かざるを得ません。独立国と言えどレプチンは小国、ただでさえビルダー帝国には敵視されている現状で、フィジークと事を構える訳にはいきません。フィジークからの外圧で教団も正常化せざるを得ないでしょう」


 よしよし。ならもういいだろう。最後にフィニッシュブローで昇天させてやろう。


「それじゃ縄をまた上げて頂戴。20cm」


「えっ! 何で……」


 シュウヘが縄を操作。奴の身体が上に引っ張られ股間が木馬の背から離れて浮く。


「お慈悲です! もっとご褒美を! 何でも喋ります! だからもっと!」


「大丈夫よ。貴方は十分に話したわ」


 蝋燭は既に全部使用済み。ムチ打ちも跡を残さない程度の強さには慣れてしまっただろう。

 だから使える苦痛は残り少ない。予定通りのペース配分ではあるけれど。


 最終的なご褒美をやるとしよう。全てを話した奴と、ここまで尋問を頑張った俺に。


 俺は自分のズボンのベルトを緩め、パンツごと下ろす。クロスアウト、下半身だけ状態だ。

 そして木馬の、奴の後ろ側へと腰掛ける。俺は体重が軽いしこの木馬は背を丸めてある。だから開脚気味になる以外の実害はない。


 目の前は奴の身体。俺の逸物の前は奴の尻。そう、ヤる事はひとつだ。


「それでは私からの最後のご褒美よ。昇天するまで味わいなさい! 邪剣・夜じゃけん、よる!」」


 ウホッ! ウッ!!!!! 

 アッー!!!


 ◇◇◇


 奴を元通り気絶させ、聴取現場である風呂場は水を流して掃除して、蝋管録音の複写を実施して。

 ナリマが当直の指導員2名を起こして連れてきた。更に事情を把握した指導員は警備担当の筋士きし団を呼んで……


 おかげでブートキャンプ四日目は午前の訓練無し、自由時間となってしまった。ただし俺やナリマ、シュウヘは別。

 筋士きし団に同行の上、昼近くまでみっちり事情聴取されるという目にあったのだった。

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