第110話 事情聴取実行計画

「そのムナールを捕らえて情報を聞き出す。基本的な内容はそれでいいんですね」


「ああ。仕掛けるのは明後日の夜、0時ころ。

 当日夜の寮務当直にムナールともう1人の暗部が入っている。

 東寮の起き番がムナール、西寮の起き番が教団暗部のもう1人という時間に見回りと称して寮へ入り計画を実行するつもりらしい。


 ムナール1人で熟睡している僕を殺して、そのまま死体を外へ運び出す。あとは外で待ち構えている別の暗部が死体を受領して始末するという計画のようだ」


 うーん、何というか……


「敵ながら大雑把な計画ですね。万が一のリカバリーとかそういうサブプランは無いんですか。予定時間を過ぎると助っ人を寄越すとか、計画中止時に外部に連絡する手段とか」


「ムナールが全部断ったらしい。自分1人の手柄にする為に。ついでに言うとムナール本人は自分の筋力と技に自信を持っているから失敗するとは露とも思っていない。むしろ部下全員が無能とばかり思っている。


 そんな感じだから予定通りに行かなくてもムナールを助けようと介入してくる部下はいないだろう。心配はいらないよ」


 他にも確認しておくことがある。


「ムナール本人の実力はどうでしょう。中級使徒メタボリックだと聞きましたけれど」


「家の力でそうなっただけで実際は初級の実力すら無い。まあその辺は明後日に実際に見てみればわかるさ」


 はあ、と思う。


「そんな駄目駄目な奴が中間とは言え管理職なんて、組織の皆さんに同情したくなりますね。どうせ似たようなのが他にもいるんでしょう」


「そういう事。さて、それでは次に具体的にこちらがどう動くのかについて」


 更に説明は続く……


 ◇◇◇


 その後はナリマの案内で、開架書架で裏付け資料の閲覧。

 堕神エストロゲン教団の説法記録集や公開人事記録なんてので、教団がどう変容していったかとか、現在の人事とかについてを確認した。


 更には今回のターゲットであるムナールの言動なんてのが確認出来る資料なんてのも閲覧。名家のボンボンだからか発言だの何だの、更には全身像や似顔絵まで見つかった。


 うむ、この絵の通りなら肉体的には喰い甲斐がありそうだ。そして性的趣向も何となく把握できた。これでより効果的に『お話を聞く』事が出来る。


「こんなところさ。という事で、協力して貰っていいかい? まあ随分資料を調べていたから大丈夫だとは思っているけれどさ」


「ええ、受けましょう」


 聴取の為の計画プランは立った。しかしムナールの趣向を考えると少しばかり道具が必要だ。買い出しをする必要がある。

 そして俺はフィジークには詳しくない。買い物をするなら案内役がいた方がいい。


「効果的に話を聞くために幾つかの道具が必要になります。ですが僕はフィジークには不慣れです。ですからこれから店を案内していただけないでしょうか。具体的には革道具店と、照明器具店と、木工所と……」


 ◇◇◇


 今回はお話を聞くという大切な作業がある。だからサダハル達にはあえてこの件については話さない事にした。万が一ミトさん達にお話の聴取方法がバレたらまずいというのもある。


 買い込んだ道具類のうち、木工所で作ってもらった大物を寮で組み立てる。比較的コンパクトな方だが、それでも椅子2つ分位の大きさになった。

 各部位に力を入れて、頑丈さを確認。


「うん、これなら使用に十分足りるでしょう」


 本気仕様のものに比べると上辺の角度がヌルいというか角を丸めてある。クッションまでつけたやわやわ仕様だ。

 しかし相手はおそらく初心者。だから今回はこの程度でいい。


 そして革製の各種道具類。正直この世界には乗馬文化は無いからあまり期待していなかった。しかし転用できそうな道具がいい感じに揃っていた。


 買いまくったおかげで結構入っていた財布の中が空に近い状態。しかし俺としては満足だ。


「何というか、教団暗部以上に危険というか邪悪さを感じるのは気のせいかな」


 ふっ、そう感じるのはまだ甘い証拠だ、ナリマ。これはあくまで初心者用。そこまで危険な域には達していない。


 前世では責められる方が多かった俺だが得意なのはむしろ責める方。変態宗主国日本の誇る文化を未開なアナボリックの民に伝授させて貰おう。


「心配はいりません。これは苦痛をもたらす為のものではありませんから。録音しても拷問と判断されない事を約束しましょう」


 苦痛で吐かせるのは拷問だから法律で禁止だ。自白の任意性だって疑われる。


 しかし快感で吐かせるのは法律では禁止されていない。拷問ではない、とは言い切れないかもしれないし、自白の任意性が担保されるかは微妙だけれども。


 なお部屋が汚れまくる事が予想される。だから防水布だの清掃用具だの臭い消しだのも準備済みだ。

 幸いアナボリックは生化学関係は割と進んでいる。強力な汚れ取りとか臭い消しなんてのが普通に手に入るのだ。


 俺は用意したグッズを再確認。革で作った鞭代用品。麻縄。比較的低温で溶ける蜜蝋ロウソク。革製の目隠し、手枷、足枷、そして足枷に付けられる鎖とお守り。


 そして最大の目玉は三角木馬だ。しかし馬の背部分は初心者用に角を丸めてあるし、玉が裂けないようクッションまでつけている。


 初心者用なので突き刺さるような痛さはアウトだ。狙うのは食い込んだ尻肉や股間が引き延ばされる快感。


 木工所で細かく注文しながら作って貰った。勿論実際の用途は説明していないが。足枷につける鎖とお守りは勿論これに乗った後に足を引っ張る為。


 麻縄にも木馬にも蜜蝋クリームをしっかり染み込ませておく。なお縄は本当は煮て乾かしてからクリームを熱で浸透させるのが正しい。しかし今回は設備がないのでクリームを塗って浸透させるだけ。


 だからあまりギンギンに縛るのには適さない。あくまで拘束感を楽しむ為程度か、他の補助程度にとどめるべきだろう。


 そう、今回は全般的にライトな初心者用SM装備。身体に拷問と思われるような跡を残さないという意味ではきっと正しい。


 ああ、使う場面が来るのが楽しみだ。まだ一日以上先だけれども。楽しみすぎて股間がギンギンになってしまう。

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