第109話 密談にふさわしい場所?
フィジーク公立中央図書館は公園のような庭までついた広大な敷地の中にあった。建物ももちろん大きい。ビルダー帝国の中央図書館と同じくらいか、もう少し大きい程度と感じる。
公園部分に入ってすぐナリマは隠ぺいを解除し俺に質問。
「そう言えば
もちろん問題なはい。
「持っています」
帝立学校の
「なら良かった。証明書がなくても知力検査を受ければ入れるけれどさ。かかる時間が勿体ないから」
そう言えば帝立中央図書館は13歳未満は入れなかった。帝立校の
そこを知力検査で入れるというのは親切かもしれない。
ただちょっと疑問に思ったので聞いてみる。
「帝立学校の
「問題ないさ。帝国発行の証明書なら大体アナボリック大陸の何処でも通用する。国が大きいからその分便宜を図っているんだろう。
「あと知力検査ってどんな内容なのでしょうか」
「文章形式の問題が10問並んでいて、どれでもいいから2問を選んで解答するという形式だ。初等学校4年くらいまでの内容だからそれほど難しくはない。文章を論理的に読み解けない輩だと無理だけれどさ」
「なかなか合理的ですね」
建物の中へ。受付で身分証提示を求められ
「どうぞ」
あっさりと通してくれた。ある意味残念だ。検査の問題を見たいなんて気持ちも心の中にあったから。
「さて、まずは話が出来る場所に行こう。地下1階の
受付から左へ入り、昇降口から下に飛び降りて地下1階へ。昇降口前の廊下から開けっぱなしの入口を入る。
うん、なかなか良く出来た
「人が少ないですね」
俺達を除くと4人しかいない。うち1人は担当官兼指導員っぽい男性だ。
「フィジークは夏の間は海にいるのが普通だからさ。自由になる時間ならば。冬でも割とそうだけれど。だから海や太陽が見えない地下の
「勿体ないですね」
「ああ。僕もそう思う」
ナリマはそう言いつつ端の方へ。レッグカールとかレッグエクステンション、アダクションといった機材が並ぶ辺りで立ち止まる。
「この辺がいいだろう。フィジークでは脚系統の筋トレはあまり人気が無い。基本的に胸と上腕の筋肉、腰の引き締まりを重視するからさ。だから多少は占拠しても文句は出ないだろう」
なるほど、確かにビーチでは太もも辺りの筋肉がいまいちの人が多かった。上半身は割と筋肉ムキムキなのに。その辺は
とりあえず手近なアブダクションの重さを200kgに調整し、シートに腰掛け足パッドの位置を調整。膝を開いたり閉じたりを開始する。これで尻と股関節を鍛える訳だ。
なおナリマはレッグエクステンションを使っている。調整が終わって使用を開始。足が上へ下へと動き始めた。
ただナリマのこれは多分に他の目を誤魔化す為の行動のようだ。負荷が50kg程度しかかかっていない。一般人ならともかく、ナリマにはこれは軽すぎる。
実際に動かしているのは右手の、それも肘から先部分だ。
俺の知らない動きだ。しかし目的は想像出来る。
「その動きは音の遮断用ですか?」
「ああ。これを放っている間は普通に話しても範囲外には聞こえない。割と便利な手業さ。似たような方法で壁等を振動させる方法もあるけれど、腕でやる方が手軽でいい」
それは確かに便利そうだ。部屋の中でアッー! な事をしてもバレないで済む。
「さて本題だ。明後日、中等部1年の
目的は僕の暗殺、そして可能ならシュウヘの暗殺。今の教団暗部は主流派の手足と化しているからね。ついでに言うと今度来る幹部は主流派でもバリバリの強硬派の1人だよ。僕の暗殺、既に5人程失敗しているからね。業を煮やした中間管理職自らが出陣ってところさ」
話としては理解出来る。しかし確かめなければならないポイントが幾つかあるようだ。
「それで何故そんな情報がこっちに漏れているんですか」
「反主流派の学長と、元教団
なるほど。
「そのムナールというのが今回来るという中間管理職ですか」
「ああ。ムナール・ウガ・ナグル。代々にわたる世襲聖職貴族ナグル家の一員さ。筋力はあるんだけれど頭は今ひとつという定評で、出世も同等の世襲聖職者家の連中と比べて遅い方。だから全般的に焦っているようだね」
うーむ。構造としてはわかるのだけれど気になる。
「何か安直じゃないですか。色々と」
「正直なところ僕もそう思う。しかし教団の連中、上位層ほど教団内の常識と神の威光以外の物が見えないらしくてさ。
教団外とも交渉が必要な連中はそれでもまだある程度の現状把握が出来るようだ。しかし内部で教団外と関わりがない連中、特に高位の聖職者家の連中はダメダメ。自分達が決めた事は神の名によって遂行されるべき。その程度の認識しかない。
今の教団主流派はそういった連中が主流らしい。だからそのうち聖職貴族家なんて制度を廃止して正常化しなければならないだろう。組織が腐っているのはその辺の重用なんてのも大きな理由だから。
そういった面では世襲がない
とりあえず納得はした。説明が本当ならという条件で。
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