第105話 合宿の開始
集合当日は全員集まってのオリエンテーションの他、部屋の指定、夕食、その後の自由時間、そして就寝というタイムスケジュール。
部屋は個室だ。広さはベッドと机がギリギリ入り、あとはスクワットがかろうじて出来るという狭さ。
しかし個室なので
なら就寝後に抜け出せるか、トイレへ行くふりをして周囲の
どうやら難しいようだという結論に達した。
合宿所には宿泊して参加
確認した訳ではない。6名中2名が起きていて他4名が寝ているところからそうだろうと判断しただけだ。
主任指導員2人は遠距離攻撃を使えた。つまり他の指導員も
なら脱出するには
しかし合宿所の周囲には高さ3m以上の壁がある。これを
仕方ない。就寝時間に脱出するのは諦めよう。かといってブートキャンプ参加者とアハーン♡するのも避けたい。後腐れがあっては困るからだ。
やはり午後の自由時間が勝負だろう。そう結論づけた後、明日の為に就寝することにした。
◇◇◇
カーン、カーン、カーン……
甲高い鐘の音。何だろうと思ってすぐ気づいた。起床の合図だ、これは。
この合宿では起床点呼なんてのがある。だから服装だけ確認して、すぐに部屋から出て中庭へ。
順不同なので着いた順、男女関係なく五列で並ぶ。
指導員がやってきた。昨日集合時に規則の説明をしたイタロというガチムチ系な男だ。
「少し待ってくれ。寝起きが悪い者が3名いるようだ。指導員が体調確認を兼ねて起こしに行っている」
なるほど、朝の点呼は体調確認も兼ねている訳か。
そしてこの状態で誰が出ていないか、指導員は既にわかると.やはりここの指導員、手練れのようだ。やはり深夜の脱出作戦の決行は不可能らしい。
女子
「さて、これで全員集合だ。それでは朝の体操をはじめる……」
こんな感じで一日が始まった。
体操の後は一度部屋に戻って個室の掃除、着替え、洗面。そしてその後は朝食。
ひととおり終えて朝8時に集合したら、いよいよブートキャンプの開始だ。
「今日の午前中は現状の体力測定だ。配られたカードが組み分けと指示書、記録用紙になっている。配られたら指示書にある最初の科目のところで各組集合。あとは組単位で指示書通りに回ってくれ」
組み分け指定書を見てみる。俺は5組だ。
メンバーは俺の他に、
○ ゴメス(東岸北部ブロック)
○ カズヨシ(東岸北部ブロック)
○ マサユキ(東岸中南部ブロック)
○ ヴィヴィアン(東岸中南部ブロック・女子)
○ ニエベス(西岸北部ブロック)
○ メグナ(西岸北部ブロック・女子)
○ ノブヒコ(西岸中部ブロック)
○ ナミ(西岸中部ブロック・女子)
○ ヒロキ(西岸南部ブロック)
の9人。
昨日に簡単な自己紹介はした。しかしまだ顔と名前が一致しない。そして最初に握力測定という組はもう1つある。
ただマサユキがいるなら問題はないだろう。なんて思いつつ握力測定のコーナーへ。
「5組はまずここへ名簿順に並びましょうか」
案の定マサユキが整理をはじめた。なので特に問題なく全員あっさりと集合完了。
「それじゃ最初、名簿順にやる形で行きましょう」
マサユキの指示というか整理ですんなりと開始。以降、ボール投げ、立ち幅跳び、前屈、上体起こし、反復横跳びと進んでいく。
その間に当然雑談というかお互いの会話も進むわけだ。俺が最初に話をしたのは東岸北部ブロックのカズヨシ。
「なんだ、元はロイシンの出身なのか」
「ええ。父の仕事の関係で学校はトリプトファンですけれど。学校に入るまではロイシンにいました」
これは事実だ。ただし俺がパクトラリス伯爵の息子だなんて事は言わない。
「俺もゴメスもロイシンだ。帝立ロイシン校からはあと男子2人女子1人、北部は帝立校が多いからわりとバラバラ。
南部は帝立トリプトファン校と私立の新設校で二分したらしいな。他も1人いたらしいけれど」
どうやらイストミアの事は他のブロックでも話題になっていたようだ。
「ええ。強いですよ、イストミア聖学園。ブートキャンプに残った6人は全員
「何だよそりゃ反則だろ。いや反則じゃないけれどさ。そんなのトリプトファンでは習っているのか?」
確かにそう思われても仕方ない。しかし実情は勿論違う。
「少なくとも帝立トリプトファン校ではまだ教えていません。イストミアでは教えていたようですけれど。帝立トリプトファン校選抜で使えるのは元上級
「ならあの子も使えるのか?」
カズヨシは目線でヴィヴィアンさんを指した。
「ええ。ヴィヴィアンさんはイストミア出身ですから」
この会話でわかった事がある。
なおヴィヴィアンさん、他の学校から来た女子2名とうまくやっているようだ。横目で見た限りは、だけれども。
洗脳されていない分、こういった場では普通に振る舞えるのだろう。
ところで皆、大陸全土から戦抜されてきただけあって、なかなか強そうだ。
俺にはステータス閲覧能力がある。体力測定の結果を見なくても判断可能だ。試しに目の前のカズヨシを確認。
『カズヨシ・スタンディングウェーブ 筋力74 最大101
特殊能力:隠蔽2+ 称号:寝技王』
ステータスは結構高い。しかし気になるのはむしろ特殊能力と称号だ。隠蔽と寝技王、これは何を意味しているのだろう。
何か微妙に不安が……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます