第23章 堕神の申し子⑵

第103話 合宿所到着

 午後3時過ぎ、ビーチブレイクの最北部にある合宿所へと到着。集合までまだ1時間近くあるが、既に半数以上の生徒トレーニーが到着している模様。


 到着受付をした後、周囲を確認。ミトさん達やサダハルはまだのようだ。ただ何人か知り合いの筋配けはいがある。

 どうやら中庭にいるようだ。まだ自室に入れない状態なのでそっちで待機しているのだろう。そう思いつつそちらへと移動。


「よお、スグル。お疲れ」


 中庭部分の芝生グラウンドでマサユキがゆっくり目にストレッチをやっていた。どうやら到着後の整理運動のようだ。

 なお横にあと3人いる。どうやら4人でここまで来たらしい。


「いつもの5人で先行した筈だろ。だからとっくに着いていると思っていたんだが、何処かで休んでいたのか?」


 これはマサユキの横で伸びていたコウイチから。奴は倒れたまま目だけ動かして俺を確認。

 なお更にその横にいる2人、アキノブと帝立スレオニン校のオマリーは伸びてというより倒れている。疲労困憊、消耗過多、そんな感じで。

 

「ビーチブレイクに到着したところで別れました。ミトさん達は観光中です。サダハルは調べたい事があるからってアメイワの中央図書館へ行っています」


「タフだな、元五班の連中は。ここまで380kmあるんだぜ」


 コウイチに言われて改めて気がついた。確かにその通りだと。

 俺もサダハルも走っている時は結構きつかった。ただ回復の恩恵のおかげか着いてしまえば特に問題は無い。辛そうだったサダハルすら10kmちょい離れたアメイワへ行こうとする位だし。


 女性陣3人に至っては間違いなく余裕だったと思う。俺やサダハルと違って持久や回復の恩恵なんて無し。特殊能力スキルは速度だけの筈なのに。


 あの3人のそういった体力、化物なのだろうか。ステータスにはそういった記載は見えないけれど。


 さて、トリプトファンから来ているグループはもう1組ある筈だ。勿論3組だったとは確認してはいない。しかし元五班、ここの4人の他にはイストミア聖学園の生徒トレーニーしかいなかったりするから。


「イストミアの皆さんは一緒ですか?」


「ぎりぎり位のペースで来ると思うよ。持久力が無いって言っていたしさ」


 マサユキの言葉でそれぞれのステータスを思い出す。確かにそう言えばそうだったなと。


「何かイストミアの誰かに用があるのか?」


「話を聞きたいって人がいるんです。やはりこのブートキャンプに参加している中等部1年の生徒トレーニーですけれど」


「なるほどね。あとでソウ辺りに話をしておこうか。参考までにどんな話だい?」


「教団で使われていた用語の幾つかについて、イストミアでも使われていたか、使われていたらどんな意味なのかを知りたいらしいです。例えば勇者とか」


 これくらいなら言ってもいいだろう。

 

「そう言えばスグルは前も聞いていたな、その勇者について。何か特別な意味があるのかい?」


「僕では無くその知り合いが調べているだけです。だから何故知りたいのかはあまりよくわかりません」


 適当にその辺は流しておく。知りたがっているのは勇者本人、サダハルとシュウヘだなんて事は勿論言わない。

 なんて話していたら知っている筋配けはいが近づいてきた。サダハルだ。


「お疲れ様でした。どうでした?」


「予想以上だ。やはり教団の影響力が弱い分、記録が多く残っている」


 どれどれ、ならば確かめてみよう。


「ガーブリエーラの『最後の顕現』とか、堕神エストロゲンの申し子とかですか?」


「スグルも図書館に行ったのか?」


 どうやら図星だったようだ。ここは素直に種明かしをしておこう。


「シュウヘに会ってそんな話を聞きました。中等部1年の部でこのブートキャンプに参加するそうです」


「来ているのか!」


 思ったより強烈な反応だった。


「ええ。西部北・中ブロックなので明明後日から参加だそうですけれど」

 

 中等部一年の日程は俺達より三日ほど遅い。俺達の第四日目が中等部一年の一日目に当たる。


「なら練習試合の機会くらいはあるか」


 サダハル、リベンジする気満々なようだ。


「シュウヘって、サダハルやスグルの知り合いかい?」


 マサユキの言葉に俺は頷く。


「ああ、知り合いだ。先々月に遊びに来たので模擬試合をやったんですけれど完敗してしまった」


 どういう知り合いかまではサダハルも言わない。まあ当然だろう。ビルダー帝国にとっては使徒は敵以外の何者でもないし。


「強いな。サダハルが完敗する相手って、相当だ」


 今まで倒れていたコウイチが反応した。筋肉強硬派なので強い相手となると実力を試したくなるのだ。

 なら少し煽ってみるか。


「ええ。僕の空中戦の師匠みたいなものです」


「スグルの空中戦の師匠!? どういうレベルだよそれ。まだ中1だろ」


 確かに中1だが中級使徒メタボリックだったりするのだ。なんて事は勿論言わないけれど。


「流石ブートキャンプだな。とんでもない強者が集まっていそうだ。明日から戦えるんだな」


 移動の疲労でぐったりしていたコウイチ、あっさり復活した。しかも屈伸とかはじめだしたし。コウイチらしいけれど。


「学年が違うから明日すぐに練習試合は無理だろう。それに空中戦モードのスグルに勝てるくらいでないと勝負にならない」


「うう、燃えるぜ!」


 この辺はいつものノリだ。


「ミトさん達にも言っておかないとな」


「ええ。いきなりでは驚くでしょうから」


 さて、そろそろミトさん達もやってくるだろう。そしてイストミアの皆さんも。

 と思ったら受付方面にミトさんの筋配けはいを確認。どうやら観光組も無事到着した模様だ。

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