第92話 俺の強み
昼食休憩の時間になった。例によってミトさん達と大会本部前で合流する。
「女子はもうメインの試合は終わりなのか」
「4位まで確定」
「5位の順位確定戦があるから午後も試合はあるよ。ただ私達は試合終了。あとは例年通り女子から5人、もしくはそれ以上選ばれるかどうかってだけ」
ミトさんが同率1位でフローラさんが2位がいない3位、エレインさんが4位だ。
「男子の方は混戦だ。僕もスグルも安全圏内ではあるけれどさ。本試合が午後3時に終わっても順位決定戦はかなりかかるだろう」
サダハルの言う通り4位以下は混戦だ。一応イストミア聖学園のハツヒコとヤスシ、
その下はもう大混戦で、午後の試合いかんでどうなるかわからない状態だ。
「ただここにいる5人はよほどの事が無い限り合宿参加は決定したようなものだよね。リサさんと、あとリサさんを連れてきてくれたスグル君に感謝かな。リサさんに超加速や高速移動、遠距離攻撃を教わらなければ私やエレインは戦抜突破なんてとても出来なかったから」
「同意」
実はこの返答、用意済みだったりする。
「今の結果が実力だと思いますけれどね。それにリサはフローラさん達に教えるのが楽しいみたいですから。フローラさんの超加速やエレインさんの連続超高速移動なんてべた褒めでしたしね」
事実だ。なお褒めた後には俺に対しての地獄の特訓が始まる、というのはまあ置いておいて。
「ただスグルのこの後の試合、コウイチ戦とニール戦だろう。コウイチはともかくニールは強い。僕もとっておきの新技を出す羽目になった。
スグルは何か対策を考えているのか。マサユキ相手に何かを試しているように見えたのだけれど」
周囲の
なら問題無いだろう。そう判断して俺は口を開く。
「ええ。マサユキ相手に基本に戻って確認したんです。結局僕の強みはやっぱり先手必勝的な速さと打たれ強さだって」
そこまで言って、ふと思い出したので言っておく。
「そういえばマサユキが褒めていましたね。相手を観察して手持ちの最適な手を出す事が出来るのはミトさんとエレインさん位だって」
「マサユキ君は強くはないけれど怖い相手ですね。下手に動きを見せるとその先を全部読まれますから」
「同意。迷いを見逃さない」
サダハルも頷いた。
「確かにそういう戦い方だな、マサユキは。だから僕の場合は逆に飛び込まず、どうにでも対処できるようゆっくり近づいて筋力勝負に出る事にしているけれど」
「私の場合は逆でとにかく先手必勝。読まれても対処する前に倒してしまえば問題無いって方法」
そう、僕のニール戦で予定している戦法はフローラさんの方法に近い。先手必勝。防がれても多少の反撃は気にせずすぐに別の技を繰り出す。言わば先手必勝型高速消耗戦という形だ。
なおコウイチ戦ではこの方法は使わない。ニールにどう戦うかバレないようにする為だ。コウイチ相手はいつもと同様、遠距離戦メインの戦術でいいだろう。
◇◇◇
そして午後。
最初のコウイチ戦は予定通り遠距離戦闘メインで勝利。エアバレットで端に追い詰め、一か八かの反撃に飛び出したコウイチをエアシェル3発で沈めたという結果だ。
ニール戦の前にサダハルの最終試合。イストミア聖学園のソウとの戦い。
ここで俺にとっての番狂わせが出た。サダハル、引き分けてしまったのだ。試合そのものは遠距離戦から近接戦闘までサダハルが攻めていた。しかし攻めきれず逃げられたという感じだ。
ただ俺の試合はサダハル達の試合のすぐ後。だから本人の意見は聞けない。後でじっくり話は聞くとして、まずは目の前の試合だ。
『 ニール・ムンツァー 筋力95 最大128
特殊能力:一時強化5+ 疑似回復5+ ステータス確認
称号:勇者(完成体) 破壊者疑惑』
『スグル・セルジオ・オリバ 筋力76 最大108
特殊能力:回復5+ 持久5+ ステータス閲覧 前世記憶
称号:
筋力は圧倒的に負けている。しかし回復が圧倒的に勝っていて速度も少し俺の方が高い。燃費はまあ試合中程度は問題無いから無視。
そしてこの試合、俺は自分の長所を最大限に使わせて貰う。僅かでも上回る速度と回復力の圧倒的な高さを。
挨拶して、構える。半身で足は通常よりやや膝を曲げた状態。
「はじめ」
全力で前へ超加速をかける。右でも左でも無くニールに向けてまっすぐだ。
ニールは遠距離攻撃で牽制しようとする。しかし超加速した俺がニールの目前に行く程度の時間で威力とタメが大きい攻撃は放てまい。そう信じて正面から突っ込む。
ヤバい、結構痛い。しかし超加速を止める程ではない。そして俺の回復能力はチート付き。それを信じて更に加速をかける。
俺の中段追い突きがニールのみぞおちに吸い込まれるように決まる。確かな手応え。しかしまだ俺は止まらない。第二撃、今度は
左側へ逃れようとするニールにこれも決まった。手応えは第一撃ほどでは無い。しかし込めた
ニールは左後方へと倒れていく。しかし途中で気配が変わった。
特殊能力の一時強化か一時回復か。多分両方使っている。今の二撃でかなりのダメージを与えた筈なのに
構わない。それに今の体勢は圧倒的に俺が有利だ。ついでに言うと俺の回復力はチート級で、特殊能力にまで回復がある。だから負けない。
接近しつつエアシェルを構えて撃つ。ニールが
この攻撃で間合いが少し開く。ニールが
「アドミナブル・アンド・サイ!」
腹筋と脚から凶悪なまでの
だが問題無い。問題無くはないが耐えられる。一瞬痺れかけた手足の筋肉も動く。
だから俺は意識する。ニールのように
ヒントはサダハルがニールとの試合で使った北斗○拳やか○はめ波に似た
バチッ! 感電したかのような衝撃。右拳に強烈な手応えがあった。だが同時に俺は背後方向に巨大な力で跳ね飛ばされる。飛びそうな意識を何とか保ちつつ
着地と同時に地を蹴り2歩目から超加速。ニールの真横方向へ回り込もうとして気づいた。ニール、先程から動いていない。
ステータスを確認する。
『状態:気絶、弱体化(一時強化使用による。持続時間残り29分)
筋疲労(疑似回復使用による。回復時間残り1時間29分)』
ニールがゆっくりと倒れた。審判員のカウントを数える声が響く。
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