第79話 対サダハル戦⑴
その後第8試合、私立ジストロフィン学園のヒロマサ戦は高速移動からの正拳突きで勝利。第12試合は帝立ヒスチジン校のムネノリ戦はやはり高速移動と投技で勝利。
そして第16試合の相手はサダハルだ。
サダハルは第1試合でイストミア聖学園のヤスシ、第6試合で帝立ヒスチジン校のムネノリ、第11試合で帝立スレオニン校ヒロオを倒している。
ヤスシ以外とは正面から組み合い、圧倒的な筋力で押さえ込んだというビルダー帝国流の王道勝利だ。
『サダハル・ジェイ・カトラー 筋力88 最大119
特殊能力:回復5+ 持久5+ ステータス閲覧 前世記憶
称号:勇者(公認前)、鉄壁』
『スグル・セルジオ・オリバ 筋力76 最大108
特殊能力:回復5+ 持久5+ ステータス閲覧 前世記憶
称号:
俺がステータスで勝っているのは速度だけ。しかもサダハル、いつのまにか鉄壁なんて称号までついている。
確実に勝てる方法は思いつかない。筋力では勝てない以上、接近して組み合うのは避けるべきだろう。なら基本的には遠距離攻撃主体に戦闘を組み立てるしか無さそうだ。
ただしサダハルの防御はかなり固い。
攻撃を通す事を狙うなら遠隔攻撃は大モーションで威力を上げたエアシェルを使うしかないだろう。しかしこれは隙も大きくなる。相応に距離が無いと使えない。
俺の方がサダハルより有利なのは体重が軽い事を利用した高加速高減速くらい。しかしそれはサダハルもよくわかっている。だからおいそれと隙を見せないし隙を作りにくい。
高加速移動で間合いを保ちつつ遠距離戦。隙を見て投げや接近
引き分けは狙わない。引き分けなら狙える自信はある。しかしそういったせこい方法論はマッチョらしくない。ビルダー帝国マッチョ帝を目指す身としては、正々堂々と勝負を挑むのみ。
あともちろんだがアッー! な技も無し。人目が多すぎるし、サダハルとはまだまだ長い付き合いになるだろうから。ミトさんにその辺がバレてもまずいし。
第15試合、チョージ対ヒロマサの戦い。残り1分でチョージの蹴りが決まった。倒れた後の押さえ込みからカウントが入る。
「1、2、3、4、5。勝負あり!」
いよいよ俺とサダハルの試合だ。深呼吸をした後、試合場を去るチョージと交代する形で試合場に出る。互いに礼をして、左半身に構えて。
「始め!」
まずは遠隔攻撃、そう思った直後に俺は考えを改めざるを得なくなった。サダハルが開始直後にいきなり突っ込んできた。それも超加速を使用して全速力で。
中途半端な技では止められない。エアシェルを放つ余裕は無い。横方向へ逃げると姿勢が崩れたところで追いつかれる。
上へ飛ぶか。いやそれこそ悪手だろう。おそらくサダハルはそれを狙っている気がする。
ならば。俺は
サダハルは俺の意図に気づいたようだ。姿勢をすっと低くする。
しかし俺とサダハルでは身体の大きさが違う。サダハルがいくら低い姿勢となっても限界がある訳だ。
一応俺の潜り込みは防げる程度には下げられる。しかし俺より低く下げるのは脚や胴、肩の厚み的に無理。
サダハルと激突する直前、俺は今の姿勢で放てる最大限の
バン! 極限の
下方向へ押しつぶされるような衝撃。しかし俺の方が有利な筈だ。下から上へは床があるから踏ん張れる。しかし上から下は重力以上に踏ん張れない。
空中移動の要領で
サダハルが俺の前方やや右に吹っ飛んだ。しかし俺も完全には耐えきれずに床面を転がる。
2回転目で立ち上がり空中姿勢制御の要領でむりやり立て直した。サダハルもほぼ同時に体勢を整える。
正面から5mの間を置いて向かい合う形となった。
「流石だな。意表を突いたつもりだったんだが見事に返されてしまった」
「構えた状態で間合いがあったから返せただけです」
俺は自分で言った言葉で理解した。相手が構えているならどんな技でもそうは決まらないという事を。
ただしもう少し間合いが近かったら。もしくは俺も別の攻撃をかけようとして体勢が崩れていたら、サダハルの今の攻撃を避けられなかっただろう。ミトさんならそういうところで狙ってくる。
ならばサダハルを崩す事を狙うべきだろう。勿論待ちでは無理だ。積極的な攻撃を仕掛けて崩す事を狙う。俺自身が隙を作ってしまわないよう気をつけながら。
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