第77話 俺の出番
第2試合は私立ジストロフィン学園のヒロマサ対帝立ヒスチジン校のムネノリ。見た目はどちらも
試合が始まった。最初から組んでパワー全開という戦い方。見ていて安心出来る内容だ。遠隔攻撃や
試合を見ながら第4試合で俺と戦う相手となるイストミア聖学園のハツヒコ・ムンツァーのステータス確認をしておく。
『ハツヒコ・ムンツァー 筋力79 最大109
特殊能力:一時強化2+ 疑似回復1+
称号:勇者(実験体) 破壊者疑惑』
『スグル・セルジオ・オリバ 筋力76 最大108
特殊能力:回復5+ 持久5+ ステータス閲覧 前世記憶
称号:
ヤスシと姓が同じなのは気にならない。孤児院などでよくある事だ。親がわからない為に施設の責任者等の姓をつけたのだろう。
問題はヤスシと同じ称号や特殊能力、そしてステータスだ。
ヤスシよりやや小柄だからか筋力は低め。それでも俺よりは筋力は上だ。他もヤスシよりややバランスがいい感じに見える。
「……8、9、10。勝負あり!」
第2試合は終始力比べ。筋力と持久力に勝ったムネノリが最終的に相手を5カウント押さえ込んで勝利という形だった。動きが少なく派手さはないが、ある意味ビルダー帝国の初等部生らしい正しい戦いという感じだ。
そして第3試合、こちらは1組のアキノブが出る。相手は帝立スレオニン校のヒロオ。
こちらも組み合って筋力勝負だ。体格はヒロオが
こちらも遠隔攻撃なんて技は使わない。組み合って筋力で圧倒するという、よくある戦い方だ。
見ながら俺は更に自分の試合の組み立てを考える。だが遠距離攻撃で疲れさせ、隙を狙う以外の方法は思いつかない。
今回は俺の本来の得意技にして決め技、いわゆる男の寝技は使えない。禁止とは何処にも書いてはいないが常識的に考えて使用不可だ。だから決定打に欠ける。
試合場が充分に広ければ遠方からヒット&アウェイを仕掛けるのが正しい。相手を無理矢理動かし持久力の違いを活かす戦法だ。
ただし今回の試合場はそこまで広くない。無理だろう。
やはり基本的には対サダハルと同じ戦法で戦うしかない。
サダハル相手でも授業のときは敢えて組み合ったりもする。訓練という意味もあるからだ。
しかし試験等の勝負モードのときは筋力差を知っているからまず近寄らない。近寄るのは勝負を決める時だけ。
なら先程のサダハルと似たような
取り敢えず距離を取ってエアバレットを連射して様子を見るのが適当だろうか。連射して近づけず、隙を見せたらミトさん流に高速で飛び込んで投げるという方針で。
観戦中の第3試合が動いた。じわじわ押していたアキノブがヒロオを押さえ込んだのだ。
「……3、4、5。勝負あり!」
この結果は仕方ない。体格差と筋力差だ。同学年ならアキノブ程のパワー馬鹿はそういない。アキノブ、筋力だけならサダハルといい勝負なのだ。速度は圧倒的に落ちるけれど。
俺の出番だ。立ち上がって試合場入場場所へと移動。アキノブと入れ替わるようにして入場する。
開始線で立ち止まり礼をした後、左足を前にして半身に構える。
「始め!」
まずは予定通りエアバレットを連射。当たると地味に痛くて体力を消耗する程度の威力で秒間3発レベル。
ハツヒコは俺から見て左側に急加速してかわした。そのまま高速で移動して俺の攻撃を避けながら接近するつもりのようだ。
上等だ。俺は右足を軸に回転しながらハツヒコへの速射を続ける。この状態なら俺は試合終了までエアバレットの連射を続けられる。一方でハツヒコはそのまま動けるのか。1分程度は様子見させて貰おう。
そう思った瞬間、不意にハツヒコが移動方向を変えた。左側へ回り込む方向から俺へ真っ直ぐ方向へと。
ならばだ。俺はより大きいモーションで更に威力を込めたエアシェルを放つ。これは先程までのエアバレットと違う。普通に当たればまずダウンするレベルだし、攻撃範囲もやや横に広い。
左右に避けるのは無理だ。当たればそれでよし、ジャンプして避ければむしろこちらのチャンス。空中で動けない相手に遠隔攻撃し放題。
しかし次の瞬間、俺は失敗を悟った。ハツヒコは最大限に
中程度のダメージ上等! 捕まえれば勝ち! そういう戦法だ。
まずい。確かに捕まると不利だ。逃げねば。しかし次の瞬間俺は愕然とする。
やられた! ハツヒコ、避けるように動きつつ俺を誘導していたようだ。その場で回転しながら遠隔攻撃を連射していたつもりだったのだが、実際は端の角近くに動いてしまっている。
前方向からはハツヒコ、左右と後ろはそれぞれ3m程度。逃げるスペースはない。
相打ち覚悟での攻撃は体格と筋力的に不利。次に打つべき手段は!
試合場での位置を再確認。俺の目にあるものが見えた。これだ!
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