第70話 試合場入場
今年の夏休みは7月23日の第3曜日から始まる。これはビルダー帝国内の初等学校、初等部共通だ。
そして『アナボリック大陸合同・
この行事は学校経由で申し込んでいて、昨日には参加票や会場案内なんてのも受け取った。それによると俺は戦抜の第一回戦がトリプトファン南公園第二運動場にある第15会場。時間は朝10時30分からとなっている。
「それじゃ行ってきます」
「気をつけて行ってきて下さい。お坊ちゃまの実力なら問題はない筈ですが、万が一という事はありますから」
「わかりました」
出席義務がある開会式などは無い。だから家を出て直接会場であるトリプトファン南公園へ向かう。ミトさんやサダハル達は会場も時間も違うので、今日は1人だ。
多分リサもついてきてはいると思うけれど、そこは気にしない。
会場に向かう途中でも気を抜かない。有力な
それに関係ない事故で……となると非常に悲しいし。
走路も裏道も使わず大通りを走らず歩いて会場へ。今日は朝から結構暑い。一応行動水は2リットル持ってきたし、今日は一試合だけだから問題無いとは思うけれど。
暑さ以外は特に気になる事もなく会場へと到着。会場のトリプトファン南公園はそれなりに戦抜仕様になっていた。
いつもはただ広くて平らなだけの運動場に壁代わりの土嚢が積み上げられている。土嚢は2mくらいの高さで試合場4つを囲っていて、外から戦抜の様子を直接見る事は出来ない。
更に各試合場の4隅には土嚢よりやや高い、高さ3m位の櫓が立っている。おそらくあれは審判員用だろう。
公園の時計台を見る。もうすぐ10時だ。受付は戦抜開始30分前から10分前まで。だからちょうどいい時刻だろう。
俺は『受付』と大書した建物へと向かう。
◇◇◇
受付をして、荷物を預けて、そして案内に沿って出場者控え場所へ。控え場所といってもトイレと更衣室以外は屋根と椅子があるだけの空間。でも今日は暑いから風が通るこういった建物の方がいい。
この控え場所もこの戦抜の為に作った仮設の建物だ。この世界は日本のテント感覚でこういった仮設の建物を使う。この辺はかつて野外学習で経験した通りだ。
さて、知り合いはいないだろうか。周囲を見回す。同じ試合にはならないと言っても試合場は4つある。だから知り合いの1人くらいはいても不思議ではないが……
知っている外見も
あと周囲を見てみてあまり強そうな
もちろん
とりあえず油断はしないようにしよう。そう思いつつ静かに待つ。
なお他の皆さんの時間の使い方は様々だ。俺と同じように椅子に座って静かに待っている奴が一番多い。他にはストレッチが40人くらい。スクワット15人くらい。ラジオ体操的な事をしているのも10人くらい。
微妙にぴりぴりした空気感がある。そのせいか会話している
もっとも此処では最小限の会話以外はしないようにと受付で言われている。かつてここで共謀の相談をして有利に勝ち抜こうとした輩がいたかららしいけれど。
なお不審な動きをするなんて事がないよう監視員もいたりする。この辺の配慮、微妙に細かい。きっと過去に色々と問題があったのだろうなあ、なんて事を思ってしまう。
カンカンカンカンカンカーン。鐘の音が響いた。何処かの試合場で決着がついたようだ。音の方向は俺からみて左斜め前、第15会場。まさに俺がこれから戦う会場だ。
屋根の外で、上から誰かが飛び降りてきた。
「ただいま第15会場で前の試合が終わりました。多少早いですが会場整備が終わり次第、参加番号1021番から1050番までの
こちらに01から30までの番号が書かれています。1021番は01番、1022番は02番というように自分の番号から1020をひいた数値のところに立って下さい。これで出来た列で試合場まで移動します。
なお移動時には前の者から2m程度間隔を置いて歩いて下さい。他の
戦抜試合前の不公正な攻撃を防ぐためだろう。やっぱり過去にそういった事案が起こったに違いない。
俺は1034番だから14のところだな。並びながら他の
並んだのは男子24人女子6人。既に全員揃っている。体格は大小さまざま。ちなみに俺が最小だ、多分。
そしてやはり、誰からも強そうな
これだと特に誰を先に倒すとか今の段階では決めにくい。もし俺を狙ってくる奴がいればそいつから倒せばいい。しかし全員が様子見で動かなければどうしようか。俺から近い順に攻撃を仕掛けるか。それとも無差別遠距離攻撃でもかけようか。
「第15会場、入場準備OKです」
先程の鐘と同じ方向からそんな声が聞こえた。
「それでは移動します。先程言ったとおり2mの間隔を開け、他の
列は動き始めた。俺も当然前の図体だけはでかい男子
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます