第54話 筋肉採用の弊害?
30分ほど走って、そして俺は気付いた。後方からそれなりに大きな
「あれ、は、てき、で、すか?」
「ええ。
部下の皆さんは追跡を諦めたようです。やはり第一
ちょっと待ってくれ。筋肉貴族が追いかけてきているのか。それって一番まずい事態なのではないだろうか。
ただリサの様子をみる限りではそんな危機感は感じられない。
「このまま走ると40分で追いつかれます。ただそれでは面白くありません。あと20分程走った場所がちょうど開けています。そちらで迎え撃つ事に致しましょう」
面白くない!? だから迎え撃つ???
俺には理解できない。しかしきっとリサ的には問題ないのだろう。そう信じて余分な心配はしない事にする。
あと20分で休みが取れるのはちょっと嬉しい。この速度で走り続けるの、実は結構厳しいのだ。リサにそう言うと『鍛え方が足りません』と言われそうだけれど。
何とか頑張って走って。
「そろそろいいでしょう。ゆっくりと止まります」
そういって停止したのは広い河原だった。
堤防で囲まれているのは500m位の幅。そのうち水が流れているのはせいぜい5m幅くらい、残りは草地と雑木林、砂利と土だ。
リサは担いでいた背負子を下ろす。
「ケーリーさんもぐっすり寝ているようです。出来るだけ起こさないように戦うつもりですけれど、少し難しいかもしれません。現サトウリアス男爵はわかりやすい戦い方が好きですから」
「知っているんですか?」
「ええ、第一
さて、ちょうどいいのでお坊ちゃまには対人戦のやりかたについて見学していただきましょう。3分間程度ですから集中して見て下さい。対人戦闘における
見学? 3分間?
何というか疑問点だらけだ。
「相手は筋肉貴族ですよね」
「筋肉貴族もピンからキリまであります。残念ながら現サトウリアス男爵はキリの方です。ですが筋肉量が多く打たれ強いので、デモンストレーションの相手としては悪くはありません。
手加減すれば3分間くらいは持つでしょう」
サトウリアス男爵、酷い言われ様だ。そんなに弱いのだろうか。
そう思って俺は思い直す。俺が限界近い速度で走ってくるのに追いついてくるような奴なのだ。弱い訳が無い。という事は、つまりリサが強すぎ……
「折角の休憩ですのでここで行動食を摂取しておいて下さい。追いつかれるとは言えそれなりの速度で走りました。補給は必要でしょう」
「わかりました」
あの速度では走りながら行動食を食べるのは無理だ。少なくとも俺は。
だからリサが言う通りウエストポーチから袋入りの蒸しチキンと紙パック入りの乳清飲料を取り出す。
摂取している間に追っ手、サトウリアス男爵の
そして
「さて、それでは行ってきます。食べながらでいいのでしっかり戦闘を見ていて下さい。見学には少々暗いですがお坊ちゃまの目なら問題ないでしょう」
リサはそう言って今まで来た方へゆっくり歩き出す。俺から50m位離れた場所で立ち止まり、街道のトリプトファン側を向いた。
道の前方に人影が見えた。かなり大きな男だ。俺はステータス閲覧スキルを起動する。
『キヨシ・マーカス・ルール 26歳 身長192.1cm 体重138.2kg
筋力248 最大285
特殊能力:速度1+ 耐久2+ 称号:サトウリアス男爵、
でかい、それが第一印象だ。身長も高いが筋肉もでかい。騎士団お約束のマントとブリーフ姿なのでよくわかる。
筋力が250近く、他の能力も強い。速度や耐久の恩恵も持っている。どう考えても相当強いとしか思えない。
しかしリサと違って能力の全部が見える。
あと気になるのは
しかしサトウリアス男爵の
サトウリアス男爵はリサの30m向こう側で止まった。
「第一
「参考までに聞きます。逮捕状は何の罰条でしょう?」
「うーんと」
そう言ってサトウリアス男爵は斜め掛けしていた鞄から紙を取り出し、自分の目の前に広げる。
「ビルダー帝国刑法第95条、公務執行妨害の罪だ」
ここでリサ、ため息をつく。
「今の立場で言うのも変ですが、逮捕状を執行する場合は相手逮捕状を示さなければならない事になっています。ビルダー帝国刑事訴訟法201条にありますし初級
筋肉貴族になったのならせめてその位は覚えて下さい。
何か変な展開だ。何というか緊張感が無くなる。
そう言えばリサが言っていた。
『第一
おそらくサトウリアス男爵、筋肉採用で知的処理能力が今ひとつなのだろう。
何というか……何だかなあ。
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