第13章 王都脱出
第53話 王都脱出
約30分後。リサは
「お坊ちゃまがどういう尋問方法を使用したかについては不問としましょう。それどころではない事態ですから。
とりあえず早急に此処を脱出する必要があります。
そこまでの事態なのか。今までちまちま襲撃してきただけなのに。そう思ってすぐに自分の考え間違いに気づく。
今の俺達は証人となる人物を抱えている。この事態を放置する事は敵にとって致命的だという事に。
「必要な場所に連絡をしておきます。終わったらすぐに出ましょう」
「わかりました。ケーリーはどうしますか」
「気絶撃をかけて背負子にくくりつけておいていただけると助かります。背負子は倉庫に入っています」
「わかりました」
リサは自室に入りテレタイプを操作し始めた。俺は言われた通り、倉庫へ向かう。
◇◇◇
「既に街門には手配が行っている可能性があります。それに
ですので手っ取り早く街壁を飛び越えていきます」
街の中を走りながらリサがそう説明する。なるほど。それはそれで合理的だ。しかし疑問がある。
「門でない場所を飛び越えたら向こう側に道が無いですよね」
「ええ。ですので外周走路の北東角バンクから北へ向かって飛び越えます。そうするとリシン方面へ通じる街道の近く、街へ入る際の入門待ち用の広場に出ます。ですのでそのままリシン方面へ向かう街道へ走り抜けられます」
確かにそのルートなら走り抜けられるだろう。しかしこれはこれで重大な問題がある気がする。
「それだと北門の警備
入門待ちの広場から北門までは完全に開けている。どう考えても気づかれずに通るのは無理だ。
「ええ。それにここは王都です。壁越えは何処からやっても間違いなく気づかれます。
門を使わず壁を飛び越えても、時間と追っ手からの距離を稼ぐ事が出来るだけです。街門を正面から飛び越えるのは流石に阻止されるでしょう。ですので妥協点として北東角バンクから越えます」
そんな会話をしながら街の中を走り抜ける。ビルダー帝国の国民は割と夜が早い。だから街中は空いている。
更に現在僕たちはケーリーが使った防音装置と
それでもまだ問題はある気がするのだ。我ながらしつこいと思いつつ更にリサに尋ねる。
「街壁を飛び越えた先で待ち伏せされている可能性は」
「ほぼ100%でしょう。これくらいの作戦、筋肉採用の新人だって想定出来ますから。
しかし問題はありません。事態に気づいて急いで配備したとしても
それに第一
リサが武闘派すぎて洒落になっていない。今のなんてどう考えてもメイドが言う台詞ではないだろう。
もとから普通のメイドだとは思っていない。でも
なんて事を思いつつ走路へと入る。
「飛ばします」
リサが一気に速度を上げた。人1人を背負っているとは思えない速度だが、ある意味想像通り。だから俺は必死でくらいついていく。
遠いはずの北東角バンクがあっという間に近づいてきた。
「この速度で方向は直進より10度ほど西側です。壁の上3m位を飛び越して下さい。それ以上高さが高いと着地までの時間がかかりすぎます」
「わかった」
相変わらずリサ、六歳児に無茶を言う。出来ないかと言われれば出来るけれど。
「あと20秒でジャンプ地点です。私と同じコースをついてきてください。
なお着地地点にはやはり待ち伏せ部隊が1個分隊しかいません。しかも中級
何というか相手がかわいそうになる位に余裕だ。
北東角バンクが近づく。俺はリサの後をトレースする形で走り、そしてジャンプする。
街壁の上にある警戒路には
そしてその先、着地予定の広場はリサの言う通り
俺達の
前を飛ぶリサが両腕を一度広げた後に前方向へ戻し、全身をやや屈めたようなポーズを取る。
「モスト・マスキュラー!」
背負子を背負ったまま
「このまま一気にロイシンを目指します。それでも途中で追っ手に追いつかれるでしょう。ですがそれまでに出来るだけ距離を稼ぎます」
「おい、つか、れるん、ですか?」
俺ですら必死にならないと置いて行かれる位の全力疾走なのだ。すぐに気づいて追いかけても2時間足らずの間に追いつけるとは思えない。
「この程度の速度なら
どうやら俺は最近勝利続きで調子に乗っていたようだ。走りながら反省する。
「またここから先は人の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます