第49話 特訓の成果
皆と歩きながら俺は考えている。次の襲撃者を俺1人で倒す事が出来るかどうかを。
襲撃してきた4名は全員倒した。うち3人は俺ではなくリサが倒したのだけれど。
次に襲ってくるとすれば、今まで以上に強い相手か、さもなくば俺1人で完全に虚をつける時を狙ってくるだろう。
正面から襲ってくるならそこまで怖くはない。最悪逃げればいいだけだ。俺の全力走行だってついてこられる奴はいるだろう。しかしその速度域で攻撃を仕掛けられるとは思わない。
だから問題は不意打ち。気づかないうちに攻撃を受けるなんてのが一番まずい。
なるほど、だからリサが隠蔽看破なんて技を無理やり習得させたのか。改めてそんな事に気づく。
ただあの特訓で本当に隠ぺいを看破出来る様になったのか。俺は今ひとつ実感が無い。
なお昨日は午前1時ころまで目隠ししたままだった。日常生活だけではなく、夜の日課
リサは言っていた。
「これで隠蔽看破は出来るようになっている筈です。もちろん完全ではありません。隠蔽を完全に見破って気づくというレベルでまでは達していないでしょう。
ただそこに隠蔽がある時、違和感という形で気づくようにはなっている筈です。ですから違和感をおぼえた時にはためらわず回避行動をとってください。気のせいでは無く、隠蔽を見破った結果という可能性が極めて高いですから」
ただ実際に看破するというシチュエーションはまた無い。違和感も働かないままだ。
だから本当に隠蔽看破が出来る様になったのかはまだわからない。リサがああ言っていたのだから多分大丈夫だろうとは思うけれど。
それでもやるしかない、俺はそう思っている。先ほどフローラさんが言っていた事が理由だ。
『なら実は
俺だけがターゲットとなっているなら問題はない。いや問題がないわけじゃないけれど、何とか出来るだろう自信はある。
サダハルもどうにかなるだろう。あれでも勇者だし、上位筋肉貴族家でそれなりに環境が整っているから。
しかしミトさん、フローラさん、エレインさん。この辺が万が一ターゲットに加えられてしまったら。そう思うと心配になるのだ。
多分そうなる可能性は薄いと思う。
俺が
一方彼女達は俺の友人というだけの関わりだ。図書館での調査は中止したから目をつけられる可能性は更に低い。
しかしもし
わかっている事はなにもない。だからその可能性だって否定できない。
だから出来る限り早く俺から仕掛けるつもりだ。相手が簡単に乗ってくるかはわからないけれど。
「スグル君、どうかしました? さっきから黙ったまま何か考えているようですけれど」
ふとミトさんに聞かれた。周囲を見るとザバス町に入っている。結構長いこと考え込んでいたらしい。
「いや、何でも無い」
上手い言い訳が思いつかず、ただそう言って誤魔化したその時だった。
危ない、何故かわからないけれどそう感じた。次の瞬間俺はミトさんを抱きかかえて道左端へとダッシュ。
一瞬前まで俺とミトさんがいた場所を影が通り抜けた。いや、黒い服装をした男だ。顔は仮面をかぶっていてわからないけれど。
『ケーリー(ケリー)・ギャレット 42歳 身長170.1cm 体重58.2kg
筋力121 最大199
特殊能力:隠蔽1+ 聴音2+ 称号:
何というか最悪だ。
しかしミトさん達は正体に気づいていないだろう。この男がさっき会ったケリー先生だとは。ステータス閲覧スキルがあるサダハルはともかくとして。
実際見た目はかなり違う感じに見える。
「サダハル、言うなよ」
「わかった」
まだ手の内を見せないほうがいい。あと襲撃してきたという事を先生という立場で誤魔化されたくない。
サダハルもその辺は理解してくれたようだ。では確認作業をするとしよう。
「また襲撃ですか。ターゲットは僕だけじゃなかったのですか?」
襲撃と確認するため、わざとそう尋ねてみた。
「腐りしアガキスの実は周囲をも腐らせる。
俺の言葉にケリー先生はそう返答。声もケリー先生と違っている。ステータス閲覧スキルが無ければわからなかっただろう。見事だといっていい。
更に先生は短く言葉を吐いた。
「全ては
直後ケリー先生は姿をくらました。
しかし俺には居場所がわかる。明らかに違和感を覚える場所があるのだ。俺はその場所を目がけ
「サイドチェスト!」
俺の
「面倒な!」
再び奴が姿をくらました。しかしわかる。見えないし
奴のメインターゲットは俺のようだ。今回も俺を狙っている。高速で移動して接近してくる。
勿論さっと避けて
「サイドトライセップス!」
リサとの特訓のおかげだ。隠蔽を使った攻撃を防ぐことが出来ている。しかし攻められない。俺から攻める隙がない。
先生、攻撃後すぐに俺から離れて隠蔽を使う。そして俺目がけて攻めてくる。
俺は避けて
実際近づいてくるのがわかっても細かい姿勢まで見えている訳では無い。だから有効な攻撃を出せる自信がないのだ。
何か手がある筈だ。なぜならリサが何もしてこないから。
リサのことだ。学校を出た後、俺を警備しているのは間違いない。だから今も周囲の何処かでこの戦いを見ている筈だ。
それでも手を出してこないのは、出さなくても何とかなると判断しているから。
なら期待に応えるしかないだろう。そう思いつつまた来た攻撃を避けて、
「ラットスプレッド!」
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