第42話 襲撃⑶
「あまりよろしくない状況です」
リサが呟く。
「街中にも
事故防止の為に走路の通行止めをしたいところですが、その余裕はなさそうです。とりあえず注意喚起だけはしておきましょう」
リサはそう言うとすっと構えた。俺は慌ててリサの正面から逃げる。
「アブドミナル アンド サイ!」
走路の後方に向けて
「最近は全力で戦闘しても問題ない戦闘用メイド服を着用しています。前に失敗しましたから」
なるほどそれは一安心……ではない。今回の本題は襲撃と、襲撃してきた敵なのだ。
敵は3名の模様。まだ姿は見えていないが
「ついでですからお坊ちゃまにはここで少し学習していただきましょう。内容は対人戦。相手が複数の場合、どうやって戦うかです。
お坊ちゃまは見学です。ただ多少は攻撃が届くかもしれません。その辺は適宜避けて下さい。お坊ちゃまの速度なら充分可能です」
リサの様子はいつもと全く変わらない。余裕というのだろうか。
敵が下から街壁上へ飛び移ってきた。俺達から50m程度離れた所に着地する。3人、いずれも男で30代前後に見える。
『ナフル・タグン 35歳 身長170.5cm 体重63.2kg
筋力98 最大135
特殊能力:隠蔽』
『フン・グルイ 33歳 身長181.1cm 体重138kg
筋力203 最大255
『ウザ・イエイ 28歳 身長169.2cm 体重59kg
筋力64 最大73
特殊能力:速度1+』
昨日襲撃してきた奴と比べると段違いに強い。速度特化らしい1人以外は俺やサダハルより強いだろう。
なおリサのステータスはこんな感じだ。
『リサ・クロス・※※※ 19歳 身長160.1cm 体重56kg
筋力※※※ 最大※※※
特殊能力:速度2+ 回復1+ ※※※』
筋力だけでなく名前や特殊能力すら見えない部分が多い。理由はわからないけれど。
見えている部分もほぼ最強級だ。何でこんなとんでもない人がメイドなんてやっているのだろう。そう思う位の化け物ステータス。
外見はそう見えないのだけれど。
速そうなのと筋肉が太いのの2組がこっちへ向かってきた。
「不条理な襲撃に対し、当然の権利として最小限の自衛をさせていただきます」
そう言い終わった直後、リサの姿が消えた。いや、とんでもない速度でダッシュしたのだ。
とっさに逃げようとした細い方を蹴り飛ばす。その反動で向きを変え遅いが筋肉が多い方へ。相手が構える間も与えず空中から後頭部へ2回蹴りを入れる。
残ったのは1人。最年長でステータス的に一番高いバランスのナフル・タグンという奴だけだ。
奴はリサがダッシュした瞬間、他の2人から離れ左側方へ逃れた。結果リサの一連の攻撃範囲から逃れる事に成功した訳だ。
「相手の人数が多い場合はまず減らす事、固まっている時こそ一気に殲滅するいい機会です。
あと筋肉が厚くて衝撃が通りにくくても蹴りによる気絶撃には耐えられません」
……今の、参考になるのだろうか? 俺だって速度に自信がある。しかし今リサがやったのと同じ事を出来るとは思えない。
「それではそちらの方にお伺いしましょう。何用でお坊ちゃまを狙うのですか。そして所属はツィーグラー派の残党ですか」
「この
残った男がそう吐き捨てる。と同時にふっと姿をくらました。逃げたか!?
そう思った次の瞬間、嫌な予感がした。俺は全速力で後方へと飛ぶ。
「正解です」
リサの声が近くでした。さっきまで俺がいた場所のすぐ先だ。そのすぐ前で男がどさりと倒れる。敵の最後の1人だ。
「『隠蔽』という技術があります。
お坊ちゃまは流石です。慣れないと不意をつかれるのが普通ですから。今のように不意に敵の姿を見失った場合、念のために場所移動するというのは重要です。これからも今のように気をつけて下さい」
今回はただ勘で逃げただけだ。ステータスにあった『隠蔽』とはそのような技なのか。知らなかった。
そう思って、そして技術という言葉に気がついた。
「今の隠蔽のような戦闘技術は他にもあるのでしょうか?」
「ええ」
リサは頷く。
「戦いは正々堂々と筋力をぶつけあってやるべきだ。そういう考え方があるのは事実です。しかし各人の身体の大きさが全く同じではない以上、ただ筋力で正面からぶつかるだけでは勝負にならない事も多いでしょう。
ですので体格の有利不利を埋める為に幾つもの技術が考えられてきました。隠蔽、急所打、飛空、瞬歩、筋縛、闇読……。これらは国でも
例えばいまの隠蔽を使われた場合、高速で移動しつつ全方向に
なるほど。なら俺やミトさんがやっているような格闘技も問題ない訳だ。もちろん問題があるとは思っていないけれど、少しばかり安心した。
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