第40話 理由
第一
つまり以前人さらいについて事情聴取された時より手際がよかった。やはりあの時の担当者は筋肉採用だったのだろう、なんて今頃になって納得したりする。
さて、気になっている事についてリサに聞いてみよう。
「リサ、インフィデルという言葉を知っていますか?」
「ええ。坊ちゃまは何処で聞きましたか?」
これについては先ほど
「襲撃してきた男は僕に『インフィデルに死を!』と言って攻撃してきたんです。ただ
リサは頷く。
「
禁忌か。どういう事だろう。
「
宗教がらみか。まあ不信心者という意味がわかれば納得できる。ただ
「
突然話が飛んだ気がした。しかしきっとこれは説明に必要な内容なのだろう。そう俺は判断し、リサの言葉を追う。
「20年程前、
内容は
これが教団外に対して
「ツィーグラの直接筋肉審判請求事案ですか」
およそ20年前、ツィーグラ首席枢機卿と彼を支持する多くの者が帝国政庁へ押しかけ、直接筋肉審判により政体革新を図ったという事案だ。直接筋肉審判とはまあ、武力革命とほぼ同義だ。
「直接筋肉審判を訴えた者の中には現役筋肉貴族、
おっと、何も言わないのに
念のためリサに確認して答え合わせをしておこう。
「僕を襲った男は筋肉だけは発達していました。しわがれ声で、そして頭髪はハゲが進行していました。これは
「お坊ちゃまは
この問いには問題なく答えられる。
「学校でも
学校での注意喚起があったのは事実だ。ただ理由は『身体がむしばまれる』とか抽象的なものばかりではっきり示されない。何がどうしてどうなるのか、一切教えないのだ。
ただ『ダメ、ゼッタイ!』と理由の詳細を書かずに広報してもあまり意味はないと思うのだ。少なくとも俺はそう感じる。
だから調べた。そういう言い訳だ。
リサは頷いた。
「そうですか。
確かにその症状は
ツィーグラ派の残党が動いているのではないか。
きな臭い話になってきた。
「残党がいるんですか?」
「おそらく。ツィーグラ派捜査の結果、千人近い
国や
なるほど。確かにそれなら残党はきっといるのだろう。
このビルダー帝国は筋肉こそ判断基準にして価値。故に人生逆転をかけて
つまり残党が生き残る余地はいくらでもある訳だ。
「その男がツィーグラ派残党だとした場合、残る疑問はひとつです。何故お坊ちゃまを
お坊ちゃまは今日、確か図書館に行ったと伺っております。それ以外に何処か立ち寄った場所はありますでしょうか?」
「いいえ」
これは本当だ。ずっと図書館にいた。昼夕食も図書館で食べたくらいだ。
「なら理由は図書館で読んだ本にある可能性が高いでしょう。実習で
まさか
このアナボリック世界、少なくともビルダー帝国ではLGBTは犯罪ではない。といかそこそこ認められている。
勿論身体が女子限定の場所に自称女性が勝手な理屈で入った場合は現代日本以上に厳しくわかりやすい処罰をされる。通称玉抜きと呼ばれる性犯罪防止措置を即時執行され……
しかし他者にお気持ち以外の不利益を与えない行為はオールOKだ。だから俺がナニした行為そのものは罪に問われる事はない。
問題はアッー! の相手が
でもアレ、周囲に観察できるような人間はいなかった筈だ。そもそも雲の上なんて高空でヤった事だし。
はっ、まさかシュウヘから漏れたなんて事は……
「お坊ちゃまは図書館で何か特殊な本を読まれたりしませんでしたか? 原理主義的な
言われてみれば確かにそんな本を読んでいた。
しかしそれはそれで疑問がある。
「図書館でそういった本を読むだけでターゲットにされたりするんですか?」
「ツィーグラ派の思想は
なるほど、そういう事か。正直僕はほっとした。シュウヘとのアッー! が原因ではない可能性が高くなったから。
あとこの国にも異端っぽい思想はあったようだ。あとでサダハルに話しておこう。
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