第36話 戦闘よりも疲れたけれど
はあはあ、我ながら大変だった。賢者状態で一服したくなる意識を必死にとどめる。
スグルもシュウヘも意識が無い。シュウヘはまあ、テクニック全開で責め立ててイってしまったから仕方ない。スグルも初体験の衝撃で気絶してしまったようだ。
本当は
空気抵抗で落下速度が落ちるよう身体を制御。完全にイってしまったシュウヘは動かないので苦労しまくりだ。
しかし
だからシュウヘの姿勢もこっちで動かしつつ地表近くまで降下。先ほどシュウヘが使っていたテクニックを見よう見まねで使って落下速度を殺す。
更に着地の衝撃を和らげる事が可能な落下地点へと誘導。先ほどのクレーターに水が貯まって池になっている。そこが目的地だ。
なんとか池上空へ到達。姿勢を立て直しつつ全力の
ドヴァヴァヴァン! 強烈な水飛沫と轟音。おかげでこれで衝撃がかなり殺された。ついでに色々な汚れも水しぶきで跳ね飛ばされた。もちろんこれも計画通り。
もっと浅いかと思ったがそこそこ深さがあったようだ。俺はシュウヘの顎を抱える形で引っ張って、足が付く程度のところへ。
「むっ、此処は?」
今の衝撃でシュウヘの意識が戻ったようだ。
「全て終わった。今いるのは先ほど出来た凹みに水が溜まった場所だ。俺は航空力士ほど空中が得意ではないからな。速度を殺すのに水も利用させて貰った」
さて、ここからだ。口先でこれ以上の面倒を回避できるか。出来れば反則技を使ったフォローの方も出来るか。
「流石に本物の航空力士は強かった。少々反則に近い技を使ったのは申し訳ない」
「いや、肉体を使った技には相違ござらん。そして航空力士は背を地に着けたら負けてござる」
おっと、なかなかいい奴だ、シュウヘ。尻の締まりもよかったし掘れて、いや惚れてしまうやないか。
顔がにやけそうになるのを抑え、シリアスモードを意識しつつ更に事態収拾を図る。
「俺の立場はあくまでイレギュラーだ。
そろそろ面倒な連中が来るだろう。できればその前に立ち去ってくれるとありがたい。航空力士なら訳もない筈だ」
「承知」
シュウヘは立ち上がる。
「確かにその通り、空を飛べぬ者を引き離す事など容易い。
ところで貴殿には世話になった。いい一番であった。その礼として少し情報を提供させて貰おう。
貴殿は
少なくとも今まで読んだ本にも学習した内容にも出てきてはいない。
「いや、知らない」
「なら一度調べてみるべきであろう。貴殿が勇者では無くイレギュラーというのなら。
ではさらば」
強烈なジャンプでシュウヘは宙に舞った。飛び散る水飛沫が視界を覆う。
「待ってくれ」
今のはどういう意味だ! どういう意図なんだ! その
水飛沫が晴れた時には既に奴の姿は無かった。何だ思わせぶりな事を言いやがって。気になるじゃないか。奴の尻への未練と同じくらいに。
ただこれで当座は一件落着だ。撤収作業に入るとしよう。何せ俺は疲れきっている。だから考えるのは後。
満足感はあるけれど賢者モードの時にここまであれこれやるのは勘弁して欲しい。気持ち良かったけれど。
とりあえずは気絶して現実逃避をしている奴を叩き起こそう。奴に身体を任せれば俺という思考は休む事が出来る。
『いい加減起きろ!』
『あ、あれは!!』
『全て終わった。詳細は後で記憶から確認しろ』
『終わったって、ではさっきのアレは……』
まだ
あれ、皆さん先ほどの場所に姿がない。更に周囲の
どうやら先生達へ事態を知らせに向かったようだ。俺とシュウヘが高空へと消えた瞬間を狙って。
確かに正しい行動だ。しかし待っている人がないのは寂しいよな。そう思いながら俺は適当な岩にへたり込む。
疲れた。何せ今まで精通していなかった身体で3発分の色々をやったのだ。いくら鍛えているとはいえ6歳の身体の限界を超えている。
あと少々気が重い。今回、勇者だの前世だの今まで秘密だった事を結構喋ってしまった。
説明が面倒だ。どうするべきか……サダハルに任せて必要な部分だけを言うのがベストだろうけれど。
それにしてもサダハル、気絶する位ボロボロだったのにかなり復活しているようだ。全開のミトさん程ではないけれど結構な速度で走っている。
何というか流石勇者の回復力。
此処には誰もいない。かと言って今の時点で下へ向けて走るのも面倒だ。しばし休むとしよう。
下が固いが文句を言うような余裕はない。あと正直動きたくない。その位に疲れ果てている。
俺の回復力ならここで少し休めばなんとかなる筈だ。何せ気絶する位にボロボロになっていたサダハルだって10分少々で走れるくらいまで回復している。そのサダハルと俺の回復能力は同等の筈。
ただ
『いつまで逃避しているんだ。いいかげん現実を見ろ』
『悪夢だ。最悪だ。汚れてしまった……』
更に
なるほど、アレでショックを受けたという事になっているのか。何というか鬱陶しい。
どうやら肉体が回復するまでに片付けておく必要があるようだ。だから
『何を演技している。お前も俺と同様、
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