第28話 メニューは材料から決めるもの
次に決めるのは食事メニューだ。
① 必要なタンパク質の量やカロリーから食材を決め、
② そこからメニューを考え、
③ 必要な材料の合計を出し、
④ 計画表に記載して提出する
という作業になる。
こうすると学校側で提出した通りの食材を準備してくれる。それを当日出発前に学校で受領。荷車に積んで持って行き、自分達で調理して食べるという仕組みだ。
もちろん提出時に先生のチェックが入る。必要な成分が大幅に少なかったり材料の整合性があわないと突き返されて再提出だ。
「カロリーとタンパク質を出さないと」
「だね。それじゃここから計画書記載はミトちゃんお願い。計算今ひとつ得意じゃないから」
「わかりました」
ミトさんは計画表をフローラさんから受け取って、そして皆に尋ねる。
「とりあえず全員、自分の分の基礎代謝量とタンパク質必要量、1日分を教えてください。どれくらいの食材が必要か計算します」
この辺の数値は体重を量るたびに計算して出すのが常識だ。食事が身体を作る以上、普段から摂取量に気をつけるのは当然。
ミトさんは全員から聞いた数値をささっと足して、メモ欄に書き込む
「基礎代謝が合計で8,800キロカロリー、必要タンパク質が1日400g。ならこの実習では1日16,720キロカロリーですか。
これをもとに必要食材を考えます」
「あ、そこで提案いい? どうせだから注文するの、普段食べない珍しい食材にしてみない?」
フローラさんがそんな事を言った。
注文可能な食材は資料に表として入っている。それぞれ標準的なカロリーや主要栄養素の量が記されているので、知らない食材であっても概ね使用量が判断出来る状態だ。
「知っている食材でまとめた方が確実だと思います」
「そりゃそうだけれどさ。せっかくだからいつもと違うものを食べてみたいってのもあるじゃない。学校で出る食事ってパターン決まっているし」
確かにパターンは決まっている。
昼食が茹でor蒸し鶏肉、蒸し野菜(ブロッコリー、アスパラガス、インゲン、キャベツ等)、生野菜(トマト、キュウリ等)、玄米かトウモロコシの粥、パン、乳清。
朝昼食や昼夕食が蒸し鶏肉、ゆで卵、ヨーグルトのどれか。
こんな感じで確かに代わり映えしない。
「確かにいつもと違うものを食べてみるのもいいかもしれないな」
サダハルが同意した。意外だ。もっとストイックな奴だと思っていたのだけれど。
『
確かに
「確かにこの食材表、いつもと違うものが多い。クリームやバター、ラードなんて危険なものも入っている」
エレインさんが言うとおり脂質たっぷりの危険なものが幾つか載っている。他にも炭水化物ばかりというものも。
「注意した方がいいのかもしれません。選ぶと減点になる食材がある、という事も考えられます」
「そこまで気にしなくてもいいと思う。献立としてのバランスが出来ていれば問題ない、多分」
エレインさんは問題なしという立場のようだ。俺自身は無難にいつも食べているような食材でまとめたい。評価に関係なくその方が安心できる。
ただこの場でそういう意見は僕とミトさんだけのようだ。
「知らない食材でかつ栄養素的に問題ないものを選べばどうだろう? 例えば魚系の食材、普段学校では出ないだろう。部位さえ選べば栄養的に問題ない」
こんな案がサダハルから出る。
「その辺りが妥協点でしょうか。スグル君はどう思います?」
ミトさんに聞かれてしまった。どう答えよう。
「個人的には普段食べているものの方が使いやすいし安心です。ただ万が一に備えて食べ慣れない食材でも正しい食事が出来る様に練習するのも
「確かにそうだよね。ならいつもの食材の他、これはと思う食材、この中にあるかな?」
これはフローラさんだ。皆で表を見て、良さそうな食材を探す。
「このモロヘイヤって野菜、良さそうじゃない? 茹でても蒸しても炒めても大丈夫みたいだし」
「このサツマイモって食材、甘くて美味しいと聞いた事がある。栄養分を考えると玄米やソバ粉、バナナの代わりに1食くらい使えるか」
『食材を決めてから献立を作るというのは何か違和感がある』
『どういう事だ? 栄養価を考えれば当然だろ』
『地球では食べたい料理をまず考えて、そこから必要な食材を割り出すのが一般的だ。確かにこの世界の食事ならこの方法が効率的なのかもしれないが。蒸すだけとか茹でるだけとか』
言われてみれば確かにそんな知識もある。しかし料理で無駄な塩分や脂肪分を加えて味を変えるなんて邪道かつ危険な行為だと思うのだ。
何やら
ひととおり食材が出て、毎日の食事に割り振ったところで、ショー先生の声が聞こえた。
「ヤー! 討伐場所希望調査1回目が出た。素直に決まったのは5つの班だけだ。
まず1番が1組3班、次7番が3組1班……」
うちの班はあっさり場所が決まった。そして7割以上の班が再び希望調査の模様。
「1番なんてなんでまた一番不人気そうな場所を選んだんだよ? まさか筋肉審判から逃げたんじゃないよな」
横のテーブルを陣取っている1組5班のコウイチが小声でそんな事を言ってきた。
「これはこれで作戦です。ところでそっちは何処を希望で出したんですか?」
コウイチは筋
5班のメンバーから考えるに、他の班とかぶることを全く気にせず第一希望場所を書いたのだろう。男子3名女子2名、いずれも筋肉強硬派だから。
「やっぱり4番だろ、河原が広いし拠点から行きやすいし地形もいいしな。サダハルも
初志貫徹で希望を4番のまま押し通すつもりらしい。こいつららしいなと感じる。
「何なら筋肉審判、オープン参加で付き合いますよ」
「スグル君、3日間の献立確認して」
おっと、ミトさんがら注意が来てしまった。
「じゃあまた後で」
視線を班のテーブル中心へと戻す。
◇◇◇
授業終了10分前の15時10分になっても、半分以上の班は討伐場所が決まらないままだった。
なおうちの3班は場所も献立も食材も、学校出発時間や2日目の予定時程も作成し、先生の承認済み。
「それじゃ討伐場所を決める為の筋肉審判だ。残った班は代表者を最低1名出してくれ。何人参加してもいい。有効なのは一番回数を稼いだ班員になる。
またもう決まっている班からもやりたい奴は出てきていいぞ。場所の変更はしないが記録はしっかり確認してやる。
それじゃ筋肉審判、種目は片足スクワット。参加者は教室後ろへ集合。パワー!」
「行くか?」
サダハルがこっちを見る。
「当然です!」
勝負とあれば行かねばなるまい。たとえ自分の班が関係なかろうと。ミトさんが生温い目で見ている気がするけれど、ここは気づかないふりで。
なんやかんやで男子の7割近く、女子も3割くらいが教室後部の空きスペースに集合した。
「それでは準備いいか。片足スクワット、用意……開始!」
「1、2……」
◇◇◇
俺とサダハルにとってはこの勝負、不完全燃焼に終わった。なぜなら353で俺とサダハル、そして5班のコウイチとアキノブだけになってしまったからだ。
「終了! お前ら4人だといつ終わるかわかったものじゃない。班別順位は決まったから問題ないだろう。授業時間を大分過ぎているしな」
これで俺とサダハルの勝敗は俺からみて15勝27敗35分となった。
負けが多いのは年齢にともなう身体の大きさ分の差だ。何せサダハルの体重、俺の倍ある。自重系
それでもせめて中等部では……
そう思っているのだけれど。
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