第7章 野外学習準備⑵
第26話 資材と草刈り場所
本日5コマ目・6コマ目の授業は
各班ごとに大教室のテーブルに陣取って授業開始を待つ。
「確かこれで持って行く共用資材の分担を決めたり、全般の計画を立てたりするんだよね」
「その筈。共用資材は全体の重さはどの班もほぼ同じになっているという名目だけど、大きさ的に外れのものもが幾つかある。
中でも3本ある拠点建物の大梁。これは長さ10mで人力車に積む際のバランスがとりにくい」
「あとは討伐希望エリアが集中した場合、筋肉審判で決めるらしいです。昨年は無限バーピーで決めたと聞いています」
フローラさんとエレインさん、ミトさんは先輩達から情報を仕入れているようだ。サダハルは飛び級だからその辺あまり上級生との繋がりはない。俺に至っては知り合いの上級生なんてゼロだ。
ジャーン! 授業開始の銅鑼の音が響いた。5秒程度遅れて先生達が入ってくる。
いつものように起立、礼、着席とやった後、毎度お馴染み我が担任ショー先生が中央の教壇に立つ。
「ヤー! 前に予告したとおり、この時間で各班に野外実習の計画を立てて貰う。
まずは配布物からだ。ここに用意した封筒の中に地図や資材表など必要な物が入っている。
共用資材は既に割り振って記載済みだ。どの班も10kg以上の差は出ないようになっているが、大きさや形状によって運びやすい、運びにくいというのはある。そこは完全に同じには出来ないから仕方ない。
また拠点建築場所の草刈り担当範囲の指定も入れてある。範囲は全部同じ手間になるように考慮した。それでも生えている雑木や草の種類によって多少の当たり外れはある。
しかしどんな内容であっても受け取った結果は甘受するように。なお資材や草刈り場所の交換は認めない。もし発覚した場合は罰トレ最低1時間だから覚悟するように。
それじゃ各班1名、前に出てきてくれ。まずはどの封筒がいいか選んでもらう。希望が重なった場合は筋肉審判、戦闘する場所はないから今回は逆立ち腕立て無限勝負で決着だ」
「なら僕がいこう」
サダハルが立ち上がりかけたところで。
「待って」
ミトさんがサダハルを止めた。
「どの封筒も同じに見えるから、ここで筋肉審判に挑む必要はないでしょう。討伐エリアが重なった時の為に筋肉はとっておいた方がいいです」
「私がいってくるね」
フローラさんがささっと立って前へ。封筒を透かして見たり重さを比べたりなんて事をする
希望する封筒がダブった組が筋肉審判をはじめた。
いーち、にーい、さーん……周りのカウントにあわせて男子3名女子1名が逆立ち腕立て伏せをしている。
封筒の外見に差がない以上、ここでわざわざ筋肉審判をしてまで選ぶ必要はないだろう。それは判断として実に正しい。
しかしビル帝国の
サダハルはまさにそのタイプだし、実は
ただ今回は後でより重要な筋肉審判の機会がありそうだ。だからここで筋肉を使い切るのは避けるべき。ミトさんがサダハルを止めたのはそういう理由だ。
この学校、授業でも筋肉審判となる場合が結構ある。この場合に使われる筋肉審判は戦闘系や格闘系ではなく、いわゆる
ある程度誰が強いかは
なのでサダハルや俺が出ると、筋肉審判を挑むためわざと同じ選択をする輩が出てくる可能性が高い。
だからミトさん、サダハルが出るのを止めた訳だ。
「さて、結果はどうかな」
カウントアップの声が続く中、帰ってきたフローラさんが封筒を開いた。
入っていたのは、
○ 地図3枚
(全体記載の地図、拠点草刈り場所指定地図、討伐範囲指定地図)
○ 搬送資材一覧表
(共用資材、班員資材、食料をのぞく)
○ 食材一覧と注文票
○ 計画策定用紙(提出用・班員控用複写式)
○ 討伐希望範囲提出用紙
○ 参考資料一式
(昨年の優秀班の計画用紙の写し等)
といった内容。
ひゃくいち、ひゃくに……
そんなカウントアップが続く中でささっと確認。
「資材の方は悪くないと思うよ。壁パネルが多いのは面倒だけれど重ねて運べるし積むのも楽だから。
ただ草刈り範囲は外れかなあ。一番端って往々にして一番茂っているらしいんだよね」
さっと拠点草刈り場所指定地図を見る。幅20m奥行き30m。これくらいなら全然問題ない。
「草刈りは大丈夫だ。前に練習してそこそこ出来る様にはなったから」
「あ、それは助かる。例年この草刈り、班ごとに差が出るらしいんだよね。酷い班だと午前中かけても終わらなくて拠点建設に影響が出たりするらしいし」
にひゃくにじゅうに、おーっ!
どうやら逆立ち腕立て伏せ、決着がついたようだ。しかし222回とは甘い。俺やサダハルが本気になれば300位は余裕だ。
きっとこの後の事があるから中断したのだろう。多分。
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