第13話 妙に疲れた入学試験
次の日は街で買い物をした後、家で
「これで入学試験は大丈夫でしょうか」
少し不安になってリサにそう言ってしまった。
「こんな難易度が高い試験、義務
リサは苦笑という感じで説明してくれた。ちょっとほっとする。
「心配しなくていいんですね」
「勿論です。お坊ちゃまは知識も筋力も既に充分以上だと思います。お父様やお母様も仰っていましたけれど、6歳とはとても思えない位です」
なるほど。少しだけ安心した。それでも一応その後に入試対策の問題集を再確認。そして今日。つまり試験当日。
「本当はお坊ちゃまなら1人で行っても問題はありません。ですが6歳児を1人で試験会場に行かせるというのは一般的ではないのです。ですから私も御一緒いたします」
「わかりました」
学校までリサと2人で歩いていく。途中から大人と俺くらいの子供の組み合わせが多くなってきた。おそらくは俺と同じ試験を受ける子供だ。
さて、どんな試験が待っているのだろう。そう思いつつ道を進んで、そして校門をくぐる。
◇◇◇
試験終了後。学校の門を出た後でリサが俺に尋ねた。
「ところでお坊ちゃま、どうしたのでしょうか。何か疲れた顔をしていらっしゃいますけれど」
確かに俺は疲れている。理由は簡単だ。
「試験が多かったんです」
それも僕だけ試験がやたら多かった。そんな気がするのだ。
◇◇◇
まずは学習の方の試験。最初は解答用紙にアルファベットと数字を書けるだけ書いて提出するという内容。
試験問題集で見たのはこの問題だった。だからこれで終わりだろう。そう思いつつアルファベット全部と数字0から9までの全てを書いて、立ち上がって試験官に提出。
そうしたら試験官が俺の答案をさっと確認した後、箱の中から別の問題と解答用紙を出して僕に渡したのだ。
「次の問題です。答えられる部分を全部書いて提出して下さい」
今度は数字と数の対応という問題だった。イラストを見て、何が何個あるかを答える問題だ。
勿論こんなの簡単。だからすぐに全部書いて提出する。
そうしたら試験官、解答用紙を確認した後、また別の問題と解答用紙を出してきた。
「それでは次の問題です……」
これを繰り返す事7回。長文の要約問題と文章題の二元一次方程式までの問題の回答を提出して、やっと終わりになった。
「はい、以上です。それでは次、筋肉の試験になります。部屋を出て矢印の方向へ向かって下さい」
これを聞いた時ほっとしたものだ。そして思った。流石
しかし他の子供はそこまで何度も答案を提出していなかった気がする。数人が2枚目まで、3枚目もいたかなあという感じだ。勿論俺は自分の試験をやっている。だからそこまでしっかり確認してはいないのだけれど。
それに問題集に出ていたのはイラストの中から物を数えて答える問題、つまり2枚目の内容までの難易度だった。
おかしい。どうにも納得いかない。
そして筋肉の試験も似たような感じだった。
最初は定番の筋肉名、大きい順に名称を答えると共に両手で場所を示すという試験。その後50m走、幅跳び、垂直跳びの3つを行った。
しかしそれらを計測した後。
「それでは君は別の試験をしましょう。こっちです」
試験官に他の受験生から引き離され、違う場所へ連れて行かれた。
そこで背筋力、握力、反復横跳び、更にはベンチプレスや持久走なんてものまで、ほぼマンツーマン形式でさせられたのだ。
背筋等から反復横跳びまでは、
① 試験官が実際に見本を見せてやり方を説明
② 俺が2回実施して、結果を試験官がメモ
というやりかた。
ベンチプレスは試験官が横について、
① 試験官が持ってきたバーベルを言われた通りの速度で上げて
② いいといわれるまでその姿勢を保って、下ろす
というのを重さを変えて5回。
そして持久走はこんな感じだった。
「これから私と一緒に走ります。私を追い越さず、あまり離れず、出来る限りついてくるようにしてください」
そんな感じで時速30kmくらいから徐々に速度を上げ、最終的には時速80kmくらいまで速度を上げ、1周3kmくらいの周回路を合計10周した。
なお周回路には他の生徒はいなかった。
◇◇◇
「そんな感じで、他の子供より試験が多かった気がするんです。何かまずいことがあったのでしょうか」
リサは頷いた。
「帝立学校の入学試験の場合、試験内容が他人より多いのは悪い事ではありません。だから安心していいです。
実力は発揮出来ましたでしょうか?」
それは問題無いと思う。
「出された課題にはほぼ全部応じられたと思っています」
リサはもう一度頷いた。
「なら大丈夫でしょう。それでは試験終了と前祝いという事で、少し羽根をのばしましょう。
もう昼食の時間です。朝昼食分も食べてから、街の外の魔物と軽く戦ってみましょう。私は討伐許可証B級を持っています。ですから警備の
今の段階で前祝いなんてしていいのだろうか。しかし魔物と戦う事そのものは楽しみだ。なんというか気力が一気に復活した気がする。
何せ魔物や魔獣相手は久しぶりというか、実質人生二度目だ。ロイシンの街を脱出して怒られた後、魔物や魔獣と戦うなんて機会は全く無かったから。
勿論この街に来る途中に悪党と戦ったのは別勘定。でもあれもほとんどはリサの通称
なんて思ったらリサのフルヌードまで思い出してしまった。いけない、頭の中を切り替えよう。
「昼食は昨日と同じマッスルドナルドですか?」
リサは頷く。
「一番手軽で早いですから。勿論もっと高級な店ももっと堕落した店もあります。ですがお坊ちゃまは早く外へ出て魔物や魔獣と戦いたくないですか?」
言われてみれば確かにその通りだ。そう思ったので俺は頷く。
「そうですね」
戦う相手は魔物や魔獣か。もう楽しみで仕方ない。
「それで敵はどんなのが出るんですか?」
「これから行く場所がゴブリンが主です。あとはスライム、たまに魔鹿や魔猪といったところですね。
まだまだこれから幾らでも機会があります。ですから初回は小手調べという事で」
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