第8話 武装盗賊団?
「状況を確認します」
リサが跳躍して上へと消えた。先の状況を確認する為だろう。しかし大丈夫だろうか。敵からも丸見えになると思うのだけれど。
「敵は武装盗賊団らしき者12人。襲われているのは人力車2台と24名。お坊ちゃまはそのまま突っ込んで下さい」
上空からリサの声。仮にも
しかしこれはリサが俺の筋力的に問題無い相手だと判断したという事だ。実際前方で戦闘中なのにあまり大きい
だから俺は特に不安は感じず、そのまま全速力で突っ込む。
対象らしい一群が見えた。最初の攻撃目標はどれだ。
『ステータスで確認するぞ』
ステータス閲覧能力は万能では無い。例えば自分の3倍以上高い能力は見えない。だから父とかGLU、シュレイテス男爵、リサあたりだと筋力値が出ない。
しかし武器なんて物を使う連中だ。そこまでの値はないだろう。そう思ってステータスで筋力を確認してみる。
やはりどいつも弱い。筋力値50以下、普通の大人より筋力が弱い奴がほとんどだ。盗賊等になるのは
なお今の俺の筋力値が63。母が100前後でリサ以外の使用人が55前後。
盗賊団らしき中でいちばん筋力値が高いのは人力車近くで戦っている剣を持った男。だがそれでも筋力値45しかない。
でもとりあえずはこいつから倒す事にしようか。
『いや右から2番目、弓を持っている奴だ。飛び道具を先にたたくのがセオリーだろ』
ようやく向こうの敵がこちらに気付いたようだ。こちらを見て何か言おうと口を開けている。
遅い! 俺は速度を殺さず、目標目がけて突っ込んだ。
あっという間に目標のすぐ横。パンチだとゴブリンの時のように胴体に穴をあけてしまいそうだ。だから平手で軽くはたくだけ。
それでも男は5mくらい吹っ飛んだ。俺の速度も大分落ちる。まだ止まらないので足で石畳を蹴って急ブレーキ。道路に凹みを作りつつ20mかけて停止。
直後背後で何やら音がした。これは飛来音? さっと右に避ける。矢がすぐ近くを飛んでいった。
『当たらなければどうという事は無い!』
男が弓を捨てナイフに手を伸ばした。しかし遅い。
平手ではたくだけて男は3m位吹っ飛んだ。もうこいつは戦えまい。そう判断して他の敵の方へ向き直る。
リサが言ったとおり人力車が2台。そして倒れている男4人。人力車を背に戦っている男が4人、そして人力車内に8人ずつ。
それ以外は全て武装強盗団の一味という訳だ。見るとそれらしい連中、確かに剣とか槍とか武器を持っている。
ビル帝国では武器の使用は御法度だ。所持だけでも労役1年、人に使った場合は基本的に
遠慮はいらない。俺は一番近くにいた槍を持っている筋力値42の男めがけて駆け寄る。4歩目で目の前に到達。男は槍を振り下ろそうとしたが遅い。右手で槍を弾いてそのまま相手の胴を突く。
空を切る音。背後からこちらに何か攻撃が来ている。左腕で音の元だった槍を弾き飛ばし、勢いのまま振り返って槍の持ち主筋力値44を右足で蹴り飛ばす。
膝から倒れた男を無視し、更に次の攻撃へ移ろうとした時だった。
「動くな! これが見えねえか!」
男の怒鳴り声。見ると槍を持って人力車内へ突き刺そうとしている。人力車の幌は布製で、そして中には人が8人。
俺と奴の間には人力車の梶棒がある。飛び越えるにせよ迂回するにせよ一アクション余計に必要だ。俺が奴を倒すより前に俺の動きを見た奴が槍を突き刺す方が早い。
ただし奴の筋力値は40。近づけば一撃で倒せる程度だ。
どうする。無視して倒す方が正しい。それはわかっているのだが迷って動けない。
その時だった。
「フロント・ダブルバイセップス!」
強烈な風が俺の背後から前へと通り過ぎた。いや風ではない、
強烈な
何とか耐えきって周囲を確認。俺以外は意識を刈り取られたようだ。全員がそのまま倒れている。もちろん槍を人力車の方へ向けていた男もだ。
今の
「リサですか」
「全員気絶させました。まずは武器を持っている側を行動不能にしましょう」
やっぱりリサだった。しかし振り向いた俺は一瞬硬直する。
筋力値が測定限界を超えて見えない事が理由ではない。むしろ見える方の問題だ。
リサ、何故か全裸だった。白い肌、服を着ている時はわからなかった胸、そして身体のライン……
「あまり時間はありません。お坊ちゃまは気絶撃を使えますか」
気絶撃とは後頭部をチョップして人を気絶させる技だ。俺は対人技をまだ
一方、俺の挙動でリサは気絶撃が使えない事を察したようだ。
「でしたら私が一通り措置しておきます。お坊ちゃまは出血している人の傷口にパウダーをかけてください」
リサが投げて来たボトルを受け取る。
パウダーとはプロテインだのキトサンだの殺菌剤だのがまざった粉だ。これだけで殺菌・止血・固定が出来る優れものである。
「わかりました」
リサ、思ったより胸も尻もあってエロい。しかし今はそういう状況ではない。怪我人の応急措置だ。全裸で動き回るリサにどうしても意識が行きそうになる中、出血が多い順に回って傷口にパウダーを振りかける。
重傷者はいるが死者はまだいない。不幸中の幸いだがそれでも出来るだけ早く医者に連れて行く必要がある。
それにしても何故リサ、全裸なんだ。その疑問を口に出せたのは、リサが武装盗賊団全員に気絶撃をかけ戻ってきてからだった。
「リサ、どうして裸なんだ?」
「メイド服には
急ぎの作業が終わったら替えの服に着替えます。幸い全員気絶していますから問題はありません。お坊ちゃまでしたら以前お風呂の世話をして差し上げた事もありますし今更問題はないでしょう」
確かに余分な記憶が戻る前はそんな事もしてもらっていたなと思い出す。しかし記憶が戻ってからは遠慮していた。何かこう、エロいし申し訳ない感じがして。
そして今はもっとエロい。太陽の下で見る白い肌という異常なシチュエーションのせいかヤバい。6歳で当然精通もしていないのだがおっきしてしまった。それくらいヤバい。
「もしお坊ちゃまがもっとご覧になりたいのだったら、それでもかまいませんが。
何でしたら触って確認されますか?」
いや待ってくれリサ。確かに見たいし色々したいのは確かだ。メイドに手を付けるなんてのはやっていい事かどうかは別として、実際にはよくある話。
しかし俺はこれでもまだ6歳、当たり前だがそんな事は出来ない。そんな思い悩む俺の中で
『女の裸に興味はない』
■■■ 蛇足の用語解説 ■■■
○ 人力車
アナボリック世界における正しい交通機関。大きさは概ねトヨタのハイエース(日産派ならキャラバン)と同じくらい。
公害にならないし化石燃料も必要無い。貨物用が主だが旅客用もあり、旅客用の場合は概ね6人乗りから10人乗り程度の大きさ。
ただ健康な成人なら自分の足でも時速60kmで半日間ぶっ通しで走るなんてのは余裕。だから乗客となるのはは主に子供、老人、その他体力の無い人がほとんど。
〇
なお相手の
これらは
○ 女の裸に興味はない
なぜなら
(cf 野獣先輩)
○ ステータス閲覧能力
筋力以外にも色々見る事が可能。しかしアナボリック世界ビルダー帝国で育ったせいかスグルは筋力しか気にしていない。
なお見えている対象にしかこの能力は働かない。また自分より3倍以上高い能力は測定不能。
とまあ細かい事を書いた、要はドラゴン○ールで使われていたスカウターと同様に捉えて貰えれば幸い。こちらはその気になれば戦闘力以外も見ることが可能だけれど。
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