第3章 王都へ向かおう
第7話 移動も訓練?
父とGLUの戦いで己の未熟さとこれから進むべき道の遠さ険しさを知った日から3ヶ月程経った3月頭。
俺は帝立学校初等義務
義務
わざわざ
『
帝立学校は初等義務
これは父の意見。母も同意見だったし、他の街へ行ってみたい俺としても大歓迎だ。なので
その後ロイシンの街へと帰るというスケジュールだ。
日常の着替え、試験用の服、通称赤本と呼ばれる試験対策用の問題集と筆記用具。そして水と行動食。
試験用の服装は学校から指定されている。具体的には『運動にふさわしい上下。半袖短パン、色は上が白色無地、下が黒色無地』。
これは実のところ義務
一般の児童はあまり鍛えられていないから安全や健康の上で仕方ないのかもしれない。それに指定服なら児童全員が持っているので、試験会場で差が出る事もない。
これらをザックにぎちぎちに詰め込んで、朝8時に家を出る。お供は毎度お馴染み僕付きメイドのリサだけだ。
リサはそれなりに
『色々あって辞表を出したところで
父や母などから聞いた話では、筋力は女子隊の中ではトップクラス。男性の上級
『リサがいれば下手な護衛よりよっぽど安心だろう』
今回も父母からそう言われた位に信頼されている。年齢はまだ18歳でかつ色白、そしてシュレイテス男爵と同じように筋肉が目立ちにくい体形なので見た目は強そうに見えないのだけれど。
メイド服に背負子というスタイルのリサと、半袖半ズボンにランニングザックという姿の俺は、ロイシン南門を出た後走り始める。
「坊ちゃまの走る姿勢は安定していますね。大分走り込みの訓練もなさったように見えますが、違いますでしょうか」
「ロイシンの周回型
ロイシンの街の街壁際には街を一周する周回型
それに姿勢が安定しているのはリサもだ。長いスカートのメイド服に大きめの背負子を担いでいるという姿。なのに全く動きに無駄もブレもなく、楽々という感じにすら見える。
「でしたら少し速度を上げましょう。試験が明後日でしたら筋肉の回復時間は充分あります。
リサはそう言うと、
「これで5割増し、時速90kmといったところです。ロイシンの周回型
行動食は途中2回、走りながら食べれば大丈夫です。準備は私の方でします」
「わかった。ありがとう」
これだけ速度を上げて長距離を走るのは初めてだ。
前に父とGLUとの戦いを見て以来、僕は街の外に出ていない。何せ俺はまだ6歳児。1人で街の外に出る許可なんてとれる訳がない。
そしてロイシンの街壁内で長距離を走れる場所は18kmの周回型
東側にある直線型
ただそれでもこの程度の速度は大丈夫だろう。そう俺は感じている。
確かに今まで長距離の練習をした時速80kmより少しばかり早い。しかし
俺の筋肉そのものは最高時速120km以上を出す事が出来るのを確認済み。更に言うと循環系も呼吸系も今のところ問題を生じるような
3分程度走って、そしてリサは頷いた。
「流石坊ちゃまですね。この速度でもフォームにブレが出ていません。ならもう少しきりがいい速さまで上げましょう。2時間で
リサ、更に速度を上げた。勿論俺もついていく。
この辺りの速度となると
ただリサは余裕そうだ。背負子も上下動せずぴたりと安定している。恐ろしくスムーズな走りだ。俺よりずっと。
俺の方は正直辛い。筋力的にはまだ余裕がある感じだが動きが上下してしまう。あと先程と比べて目がすこしチカチカする。これは速度のせいだろうか。
「目は細く開いて、かつ瞬きを多めにするのがコツです。瞬き後の視界で自分の100m前程度先の状況を把握します。小石等については足裏の感触で確認して膝と足首であわせて下さい。
膝はある程度意識して曲げて、腰から上を上下させない事を意識すると楽です」
リサの言う通りにしてみる。周回トラックを走っている時とは違う走り方だ。でも確かに走りやすくなった。先程より無駄なくスムーズに走れている。
ふと思いついたので聞いてみる。
「ひょっとして父から、高速走行の訓練させておけと言う指示があったのですか?」
「わかりましたか。その通りです。ロイシンの街の中ではこういった訓練は出来ませんでしたから。だから出来るなら規定速度の倍まで上げて走る訓練をさせるように。そう指示を受けています」
やはりそうかと思う。父が考えそうな事だ。それにこの速度、慣れるとなかなか爽快だ。前から受ける風も、横を流れていく風景も。
「慣れるとなかなかいい感じです」
「坊ちゃまは流石だと思います。普通はこの速度、すぐには慣れませんから。マユミ様も時速120kmは帰りの半分程度でいいと言ってらっしゃいました」
それはそれでスパルタだなと思う。
しかし以前はこうでは無かった気がする。それなりに年齢相応の子供らしい扱いをして貰っていたような……
記憶を時系列に並べ替えて確認。父が俺の
それがスパルタになったのは、街を抜け出して第三
しかしおかげで通常の6歳を遙かに超える筋力を身につけることが出来たのだ。今では
だから結果オーライだ。そう微妙に自分をごまかしつつ、俺は走る。
◇◇◇
「このペースならあと20分程度で
リサの言葉が中途で途切れる。理由はすぐにわかった。悲鳴が聞こえたのだ。たとえ遠方からで、かつこちらが時速120km走行中であっても鍛えた耳はそれくらい簡単に捉える。
「速度を上げます」
「わかった」
リサは更なる速度へと加速する。今度は本気のようで今までのと違い加速が急だ。俺も必死になって後をついていく。
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