小花、光凜帝に物語すること

 扉の向こうはおおきな広間だった。床は不思議な色合いの石が敷き詰められていたよ。

 白いような、金色のような、淡く輝く石さ。

 正面に九段のきざはしがあってね、ひとつひとつに神獣が意匠されていた。

 獅子のかしづく段、麒麟の踊る段、鳳凰の舞う段……最後に龍騎、玉座があった。帝の座所を龍騎ってんのは、古き御代、の帝たちはその徳によって龍に乗った、って故事から来てるらしいね。

 いや、見えやしないんだ。階の上から三段は天井から下がる翠羽のしゃに覆われてた。うっすらと透けてるんだが、龍騎のあるところはさらに天蓋でおおわれていてね、その天蓋の横に人がひとり立ってて、

燈国とうこく英州宝徳県陸丹えいしゅうほうとくけんりくたんの里、圭芳雪けいほうせつあざなを小花」

 そう龍騎のあるじるわけだ。小花は面食らったよ。なんで会ったこともないやつが自分の名を知ってるんだってね。

「そのさが敏活びんかつにして好奇強し。浮薄のあり。魂魄こんぱくに物語を宿す」

 ――性質は頭の働きが早く、好奇心が強い。ただし軽々しく信念に乏しい。そして魂魄に物語を宿している。

 別になんて言われようといいんだけど、ずいぶん失礼なやつだと思ったよ。

 あとで小花は知ったんだが、光凜帝の冥界にはさまざまな官吏がいる。小花のことを光凜帝にご注進に及んだのは『命官めいかん』、人の命数を記録する係のひとりだった。

 階のしたに、柩がみっつ並んでた。飾りっけはなかったけど、立派な柩さ。

 小花は近寄ってなかを見た。思った通り、洪々こうこうと近所の仲良しがひとりずつ柩に収められてたんだ。

「特別に直言ちょくげんを許す。陸丹の小花、望みを申せ」

 命官がそう言った。

 それと同時に、左腕に付けてた熊避けの木札が、パリンと半分に折れて床に落ちたんだ。

 聯星になにかあったのかと思ったけど確かめる方法はない。「だいじょうぶ。きっと術の効力が切れただけだよ」と気にしないようにした。

「この柩に入ってるの、あたしの甥っ子の洪々と、その友だちの悪餓鬼なんだ。ここで物を食べたのは悪かったよ。でも、孺子こどもの失敗だと思って勘弁してやってくれないかな」

「できぬ。それはこの冥界のことわりげることだ」

 光凜帝は……というか、その横で帝の言葉を伝えている命官の返事はにべもなかったね。

 たしかにそうさ。

『冥界の食べ物は食べてはいけない』それは聴いてた。

 孺子だからって大目に見てもらえないことは、人界にだっていっぱいある。

 だから光凜帝の言うことは理不尽じゃない。

 そして、小花にはそれ以上の名案はなかったんだ。小花の頭にゃ、道理を枉げるやつに一杯食わしたり間抜けな幽鬼をだまくらかして出し抜く話はいろいろ思い浮かんだけど、光凜帝は道理を枉げちゃいないし、間抜けな幽鬼でもなさそうだ。

 道理を枉げようとしてるのは小花のほうさ。

 でも一縷いちるの望みもあった。無下にあしらうつもりなら、そもそもこうやって小花に会うだろうか? あの三女星さんじょせいの部屋での出来事みたいに、有無を言わせず部屋を追い出しゃ済むことだろ?

「あの、折り入って話があるんだ。サシで話をするのは、無理かい?」

 すこし間を置いて命官が一歩うしろに身を引き、姿を消した。

 無言のまま龍騎に拱手したと思ったら、すうっと消えたんだ。

「百官は夫々それぞれ、自身の職掌に誇りをもっておる。あまり無下にするものではないぞ」

 翠羽の紗の向こうから男の声がした。

 若々しくて良く通る声さ。若いっても浮ついたところも、脂ぎったところもなかったね。

 至って沈毅ちんきな声さ。でもどこかに柔らかさもあった。

「しかし娘、『道理を通さば衆目のもと、無理を願わば人目なきところ』。そなたは自分がどういう立場にあってなにを通したいか、わきまえておるようだ」

 ばさりと音がして、ひとりでに翠羽の紗が上がり、龍騎の天蓋が巻き上げられた。

 階のしたからははっきりとは見えなかったけど、男がひとり、静かに座っていたよ。

 日、月、龍、山、華蟲かちゅう、火炎、虎猿、巻龍、藻、粉米、ふつ

 帝の司る万象を刺繍であらわした冕服べんふくは、小花が織女しょくじょの部屋で見た雲錦うんきんで仕立てられていた。すこしだけ首を傾げる仕草をしたとき、前後二十四りゅう冕冠べんかんの飾りがちりりと音を立てたね。

 表情は怜悧にして清雅。本心はともかく、小花を馬鹿にしたり、見下したりしているようすは窺えなかった。小花はその佇まいに薬研公主を思い出した。

 しかしお偉いさんってのはどうして人の名前を言わないのかね。

 さっき命官から聞いてるのに『娘』ときたもんさ。小花のなかで最初から彼女の名前を呼んでくれた薬研公主の株はうなぎ登りだったよ。

「道理をげようってのは分かってるんだ。でも、孺子こどもらを見逃してやって欲しい」

「道理、というよりは天のことわりであるな。道理はおおむね、人を守るように定められておるが、天の理とは万象の営みを司り、それはときに人には理不尽でもある」

 光凜帝はそう言って、小花の足元あたりを指差した。

 カラン、と小花の足元にかめの欠片が現れた。欠片に描かれた飛鳥ひちょうの絵に、見覚えがあった。彼女がこの街の門番に賄賂で渡した酒の甕、その欠片さ。

「ひとつ、われしんに不届きがあったようだな」

「違うんだよ。これはあたしがあげたものでさ、別に門番は悪くないんだ」

 このくらいの賄賂で罰を受けるのはさすがにあの門番が可哀想だった。ちゃんと門を開けて入れてくれたんで、小花にとっちゃ感謝こそすれ、恨みはないんだ。

「それは汝の言い分であるな。吾の国には、吾の定めた律があり、守らねばならぬ令がある。むろん、汝ら里人を都に入れたのを責めているのではない。生者を救うのは冥界の領分ではないが、民の難儀を救うのは吾が勤めのひとつであるゆえな。賢清門の者たちは、二日、酔い潰れておった。職務を放棄していた過失の罰は受けねばならぬ」

 光凜帝は一呼吸置いたあと、こうつけ加えたね。

「ひとつ機会を与えよう。汝は物語に憑かれているという。ならば吾の知らぬ物語を語ってみせよ。れば、吾は天の理をひとつ枉げて、その孺子らを生に引き戻すことを約そうぞ」

 小花には断る選択肢はなかったね。


 ところがどっこいだ。小花は物語をはじめてすぐに困ったことに気がついた。

 光凜帝はみんな知ってるんだ。小花の思い出せる物語なんかみんなね。

 小花が「昔、洛陽の街の孝行息子に子が生まれた」って話を始めるだろう?

 そうしたら光凜帝は「子を育てれば母親に孝行ができぬと考えた孝行息子は生まれた子を埋めて殺そうとするが、掘った穴から金が出てきてそこにはこう書かれてあった――」って先の話をするのさ。どこの本に書かれてあるのかも加えてね。

 小花はその本のことは知らないけど、結末は小花の頭に思い浮かぶのと一緒だったから、それ以上はなにも言えずに次の物語を探す。

 でも全部光凜帝は知ってた。全部だよ。ひとつ残らず、全部だ。

 小花は焦ったよ。このままじゃ洪々たちはほんとうに死んじまう。

 まずいよこれは。不首尾が頭にちらついて、集中できなかった。

 新しい物語を、と一生懸命思い浮かべようとしたけれど、出てこないんだ。

 落ち着け、小花は念じたよ。

 光凜帝はきっと理不尽なことを言う人じゃない。わざわざ自分の家臣の手落ちを探してきて、小花に機会を呉れてやろうってんだからさ。

 そう――

 小花はそのとき、ひらめいたのさ。

 光凜帝が絶対、知らない物語を、あたしは知ってる。彼が一番良く知ってて、でも『知らない』物語さ。

 小花は深く息を吸って、静かに吐いた。

 そしてね、

「そうだね、今日はとっておきもとっておきの話をしよう」

 と、小花は光凜帝に言い放ったものだよ。

「十七で即位したあと、神農氏の教えを深く学んで農地を開墾し、氏に学んで治水をして国を拡げ、東海を治めていた燧人すいじん氏に教えを請うて火を国にもたらし……まあ、八面六臂の働きで国を富ました光凜帝の物語さ」

 階のしたからじゃよく見えなかったけどさ、光凜帝がふと、苦笑いしたような……気がしたよ。


 小花はこの話を虞御史ぐぎょしに聴いたんだ。虞御史はこう言ってた。

『儂は光凜帝が崩御なされたおり、帝の殉葬の列に加われなんだ。儂の夢は、帝の死後の宮廷に侍り、御前で帝の生涯の偉勲を記した史書を捧げることじゃったのに』

 ってね。で、書巻はみんな虞御史の手元にあった。

 ならあの『史書』は虞御史が月震宮のあの場所で書いたものなんだ。

 光凜帝は自身が身罷みまかったあとの現世のことも知ってるけど、敵の国、冥耀君の冥界の出来事は知らないはずだ。

 もちろんこれは『彼の生涯の歴史』なんだから、全部『知ってる』はずの話ではあるんだろうけどね。

 でも、光凜帝はひとことも口を挟まず小花の話を聞いていた。


 小花は虞御史に聴いた話についちゃ、いろいろ付け加えた。何故なぜって、史書ってなあ、いろいろとわからないことがおおいからさ。

 冥界攻めの意図を隠して妹の輿入れを冥耀君に申しで、薬研公主にはただ黙って嫁に行けと告げるとかさ。どうしてって思うじゃないか。

 妹が嫌いだったのか? たぶん違う。

 光凜帝はこの母親の身分の低い、賢い妹を大切にしていた。一緒に神農氏の教えを深く学んだりしてね。だいたい、月震宮で会った薬研公主は兄貴のことを憎んでる感じじゃなかった。

 冥耀君のことはあなどっていた? これもきっと違う。

 簡単に攻め滅ぼせる相手じゃないと分かってたから、妹を嫁がせたんだ。

 小花は慎重に、光凜帝の『物語』を語った。

 虞御史の書いた史書に、小花なりの因果を付け足していったのさ。

 そして小花の話は最後の山場、光凜帝の冥界攻めに至る。

 冥耀君の冥界が現世から消え、戦が終わったところで、ずっと黙って聞いていた光凜帝が口を開いた。

「では、汝にひとつ訊く。燈国とうこく英州宝徳県陸丹えいしゅうほうとくけんりくたんの里、圭芳雪けいほうせつあざなを小花。『光凜帝は何故なにゆえ、冥耀君の国を攻めたのであろうな?』」

 それはあんたが一番良く知ってるだろう?

 小花は思わずそう口走りそうになった。でも違う。光凜帝はそんなことを訊いてるわけじゃないんだ。

『小花の物語の光凜帝』のことを尋ねてるんだ。

「光凜帝はさ、ずっと民のことを考えてた。そのためにいろんなことをしたけど、戦を仕掛けたことはなかった。南の国や東の国に難題をふっかけられても知恵で解決した。けど、最後に戦を仕掛けた。それは――」

 光凜帝は静かに小花の言葉に耳を傾けていたよ。

 小花は考えた。そりゃもう、知恵を振り絞って考えたさ。

 たとえばこう考えるのはどうだろう? この冥界……これが彼の造りたかった世界だとしてみよう。百官に仕事があり、民にも暮らしがある。そう、あの馬腹ばふくや都のなかの影みたいな化け物だって、たぶん……衛士の仕事を作るために、光凜帝がわざわざこしらえたんじゃないかな。小花はそんなことも考えた。

 だとしたら、さ。

 小花の物語の光凜帝は、陸丹の里に伝わる話の一説にあるような、自分が冥界に行ったとき、冥耀君に頭を下げたくなかった、そんな器のちいさい帝じゃないんだ。

「それはさ、どれだけ光凜帝が世の中をよくするために頑張っても人は死んでいく。それに我慢がならなかったんじゃないかな。農地が広がって、偉いやつがいろんなところに民を救う仕組みを作っても、その歳の作物の出来不出来で餓えて死ぬやつは出るし、水害に苦しめられるのも減ることはあってもなくなりゃしない。火を使えるようになるのは便利だけど、それで死ぬやつも出てくるだろう。光凜帝はなんとかしたかったんだ。それで――」

 『物語』は、小花の口からするすると出てきたよ。

 ああ、だからあたしに機会を呉れたんだ。理不尽に死んだ洪々たちを助けてやるためにね。

「思い余って、冥界を攻めたんだと思う。こっちの冥界を見てたら、そんな気がするんだ。ここにだってあたしには分からない面倒ごとがあるんだろうけどさ、みんな、それなりにうまくやって暮らしてるみたいだ。これが光凜帝の望んだ世界だってなら、光凜帝は民を理不尽に死なせたくなかったんだよ。守れないのは嫌だったんだ。もちろん冥耀君を攻めたのは間違いだと思うけどさ、この戦を最後の理不尽にして、冥界をなくして人が死なない世界を造りたい、そう思ったんじゃないかと、あたしは思うんだよ」

 光凜帝は立ち上がった。九段の階を、ちりちりと二十四旒、冕冠の飾りをゆらしながら足音もたてずに降りてきた。

 そして柩のなかの洪々を腹を下に抱き上げて、背中をぽん、と叩いたんだ。

 洪々の口から饅頭の欠片が転がり出てきた。ほかの孺子たちの口からも、焼いた肉の欠片とか、桃の果肉とかが吐き出された。

「吾の知らぬ物語を成した汝に免じ、天の理に絡め取られたこの者たちの時を巻き戻した」

 光凜帝の表情は嬉しそうで……なんだか寂しそうだったね。

「あとでみなのもとに送り返す。加えて、汝にも褒美を授けよう。なにがよい? この光凜帝に二言にごんはない。生者の世界での栄誉に及ぼすちからはないが、冥界の富、死者の術、汝の求めるものを与えようぞ」

 じつのところそのときには小花はだいぶ熱でくらくらしてた。腕の傷の熱がぶりかえしたのもあるし、必死に考えすぎて頭がもういっぱいいっぱいだったのもある。あたしはやり遂げたんだって、ほっとして気が抜けたのもあったね。

 でもぼんやりしながら小花はこう言ったんだ。

「なら、あたしに読み書きを教えておくれよ。いまのあたしになるまえのあたしが、死んでも手放さなかった物語をもっと知りたいんだ。でもこのままじゃ、だれかが口伝えで教えてくれた分しか増えない。それに、あたしは自分で物語を書くこともしたい」

 光凜帝がふと笑った気がしたけど、それは気のせいだったのかも知れないね。

「この冥界には数多あまたの書聖、詩聖が暮らしている。汝のことは彼らに伝えておこう。読み書きなど、その者らにかかれば造作もあるまいよ。それと――梓萱しかん、そなた、この娘になにか術をかけているね? おそらく耳でも宿して、いまこの吾の声を聴いておるのだろう? 長い間、無沙汰をした。近いうちに、そちらに碁でも打ちにゆくよ。約束しよう――」

 梓萱ってなあ、薬研公主の名前だね……そう思ったところで小花の記憶は途切れてる。

 彼女が目を覚ましたのは、陸丹の里に帰ってきたあとだったよ。


 陸丹の里は案の定、荒らされてたけど、畑は無事だった。まだ春も早かったから、大地が凍っててろくな作物を植えてなかったせいだ。でも畑の土を荒らされなかったおかげで蜀黍や大麦、豆の種まきは上手くいった。

 打ち壊された里の壁や家は、里人みんなで協力してなんとかした。面白いのは光凜帝の冥界から門番たちが応援に来てたことさ。賄賂を受け取ったうえに酔い潰れて職務放棄。罰として生者の世界に島流しされたうえで里の修繕を手伝うよう、申しつけられたってわけさ。いまでも完城旦舂かんじょうたんしょうとか、髡鉗城旦舂こんけんじょうたんしょうって罰がある。さっきとっ捕まった巾着切りもきっとこの罰を受けることになるだろうが、まあそんな感じの労働刑だろうね。

 おかげで修繕はずいぶんはやく片付いた。門番たちは里のおじさんたちと意気投合して、いろんな酒で三日にいちどくらい酒盛りしてたから、罰ったってそれなりに楽しかったんじゃないかな。

 最後には名残惜しそうに還ってったね。

 これは冥界の秘事ってやつだけど、寧寧ねいねい婆さんの死んだ旦那もこっそり一緒に付いてきててね、婆さんが天寿を全うして亡くなるまでの三年、仲睦まじく暮らしてた。

 都の将軍はなかなか砦に戻ってこなかったけど、陸丹は食糧をかっぱらいにくる北狄のやつらとなんとか折り合いを付けてしのいだよ。

 小花はときどき冥界に下って、読み書きを習ったんだ。

 習った読み書きで、小花はどうしたんだって? さて、どうしたんだろうね。あたしは陸丹を離れてずいぶん経つからね。

 聯星の正体はだれなんだって? そうそう、それがあったね。

 ただもう今日はずいぶん日も傾いた。あたしも今日は張り切ってしゃべりすぎたから喉がカラカラさ。それはまた次回の講釈ってことでどうだい?

 

 てててんてんてんてんっ

 物語売りは骨張った指先で鼓を打った。うらうらとした春の陽射しは西に傾いている。江帝廟の真新しい巴黎緑パリーリューいらかは西日に輝き、街を東西に流れる鵜水うすいの流れは夕風に波立ち、夕日にきらめいて眩いばかりだ。河縁の客待ちの渡し守、物売りの舟はそろそろ店じまいに取りかかっている。

 日はまだ充分に明るかったが、廟前市の店のなかには品物を売り切ったところも出始めた。客たちは今日一日の買い出し品を抱えて、家への帰り道を、旅人は宿へ戻り始めている。なかには馴染みの妓楼へ顔を出そうという者もいる。

 波蝕の乱が治まってもまだ都の夜の外出は禁じられていたから、あと半刻もすれば街の城門はすべてしまってしまう。


 物語売りは最後の締めに声を張り上げた。

「さあ、お代は聞いてのお帰りだ。今日の話が面白かったと思ったやつはどうかあたしに銭を投げとくれよ。また明日もここで話を聞きたいってんなら、おひねりははずんで欲しいね。なにせ今日の稼ぎで宿を取らなきゃならないからね。さあさ、頼んだよ」

 剣士が前に進み出て、砂糖黍のまだ幾本か残った籠を聴衆の前に差し出した。

 聴衆はみな、めいめいに銭を投げてよこす。

 ててん、てんてん、ててん、てんてんっ

 小気味よい音が雲ひとつない晴天に吸い込まれていった。

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