贅肉ならばあるけれど、筋肉なんてありゃしません。
綴。
第1話 贅肉はあるけれど、筋肉なんてありゃしません。
俺はバイトが続かない。
まずは近所のケーキ屋さんでバイトの面接を受けた。
不採用だった。
コールセンターのバイトの面接を受けた。
不採用だった。
次はスーパーの面接に行った。
採用されてバイトを始めた。
3日間でクビになった。
次は色々な道具などを扱う店でバイトの面接を受けた。
採用されてバイトを始めたが1週間でクビになった。
(くそっ!何なんだ!)
次は工事現場のガードマンのバイトを始めた。
これは少しは続いたが、2ヶ月を過ぎた頃に辞めてしまった。
今度こそ!
荷物の配達のバイトを始めた。
頑張ってはいたけれど、3ヶ月でクビになってしまった。
それならば!
引っ越し屋さんでバイトを始めた。
一生懸命働いた。
それでも、3ヶ月でクビになってしまった。
ケーキ屋さんの面接では
「イメージがあんまり合わないよねぇ」
と断られた。
俺が太っているからか?
コールセンターの面接では
「電話の対応した事ありますか?「」
と聞かれ
「ありません」
と答えた。
スーパーでは窮屈なエプロンの紐を何とか腰の後ろで結んで働いた。
「力くん。これ運んでくれる?」
「はい!」
よっ、んと、よいしょ!
「おぃおぃ、飲料はケースで買うお客様もいるんだから、丁寧に持ち上げて!」
と怒られた。
色々な道具などを扱う店では台車に荷物を乗せて店頭に並べた。
台車に箱を乗せる時に(ガシャン)と大きな音がして、店長が飛んできた。
「力くん。これ、丁寧にねって最初に言ったよね?壊れてしまったよ。高いんだよー、これ」
と店長が頭を抱えていた。
店長も電話で上司から怒られていた。
工事現場のガードマン。制服が少しカッコ良くて気に入った。
最初の現場は通行人も車も殆ど通らなくて平和に過ごした。
2ヶ月たって現場が変わった。
赤色のコーンを息を切らしながら道路に置いていき、工事が終わると回収していく。
現場の作業員に毎日笑われた。
「おい、力くん。その作業だけでフゥフゥ言っててどうすんだ?」
荷物の配達は、ものすごい荷物の量だった。
「力くん、ちょっと」
営業所の所長によく呼ばれた。
「あのさ、箱を開けたら中身が潰れているとか、ケースを落とした後みたいなのが残ってるから交換してくれってクレームの電話が多いんだけど?」
「はい、落としてしまいました」
引っ越し屋さんのバイトは女の子と一緒の時もあった。
「力くん、そっち持って!」
「はい!」
「力くん、持ち上げてよ!」
「……んしょ……」
「もういいわ、車の整理しといて」
俺は必死で頑張ったのに。
引っ越し屋の最後の日は大きな声で文句を言った。
「贅肉ならばあるけれど、筋肉なんてありゃしません!」
贅肉ならばあるけれど、筋肉なんてありゃしません。 綴。 @HOO-MII
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