第19話
恵里子へ
終活と言う訳ではないが、私ももう歳だから、一応死んだあとの事を書いておくよ。
お前は、旦那も真面目で金銭的には裕福だろう。
だが、私は退職金をそっくり手付かずに残してある。
それはお前と家族の為に使ってくれ。
それとお前の子供達の名義で積立もしていた。
それは、子供達が成人したら、祝いに渡してくれ。
それでアパートの権利は美紀ちゃんに渡してくれないか?
美紀ちゃんと航太は、遠く離れたお前達に変わって、私の世話をやいてくれた。
航太との時間は私の生甲斐となった。
お前達も家族でお前は娘だが、美紀ちゃんも私の娘、航太は私の孫だと思っている。
私がいなくなれば、また、航太と美紀ちゃんは母子家庭に戻る。
せめて、航太を寂しくさせないためにも、パートの仕事を辞めて、アパート経営で収入を得られるようにしたいんだ。
航太の行末も安心したい。
お前の事だ。
私の話は判ってくれると信じてる。
あのふたりをお前も見守ってほしい。
私の最後の我儘として、判って欲しい。
美紀ちゃんへ
これを読んでいると言うことは、もしかしたら私は死んでいるのかな?
航太と遊べて、航太と話せて、航太と笑って本当に私は幸せだったよ。
私は航太の将来が楽しみだよ。
航太は大丈夫。
たとえ、言葉が話せなくとも気持ちを伝えられる、優しい子だよ。
美紀ちゃんが作ってくれる食事は、いつでも暖かく幸せな味がしたよ。
パートで忙しいのに、掃除や洗濯、家事をみなやってくれて、パートを辞めて、楽したら?って私が言っても、頑として辞めないで頑張っている。
そんな美紀ちゃんに私は感謝していたよ。
だから、もし、私が死んでも、この部屋でずっと暮してくれないか?
広島の私の娘にも話すけど、このアパートの権利は美紀ちゃんへ渡したい。
それと航太への積立を私の名義でしている。
これは航太に使って欲しい。
私の娘の恵里子は、きっと判ってくれるだろう、そして、美紀ちゃんを応援するはずだ。
あいつはそういうやつだからね。
航太と美紀ちゃんは本当の私の孫と娘だよ。
美紀ちゃんはまだ若いから、好きな人が出来たら結婚したら良い。
それまで航太を寂しくさせないで欲しい。
私の最後の我儘だから、本当に有り難うね。
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