第15話


ペンと便箋、白い封筒を持って奥の部屋に、音をたてずにそっと入る。


小さい机を出して、便箋を開く。


時間をかけて、慎重に何やら書き込んでいる。


書き終え、白い封筒にたたんで入れる。


1通の白い封筒には広島に暮らす、宮島の娘の名と、もう1通の白い封筒には美紀の名前が記されていた。


宮島は目頭を押さえ、2通の封筒をまた、箪笥の引き出しにしまい、布団へ入った。


寝息をたてる、航太と美紀を眺め、宮島は微笑んだ。


朝になる。


美紀はいつも宮島が寝ている間に起きて、朝食の準備をする。


そして、宮島の昼食、夕飯の下ごしらえを済ませ洗濯機を回してパートへ出掛ける。


宮島は今日も公園へ行く時間が待ち遠しい…。


航太が小学校から帰ると、ふたりで公園に行く。


毎日の事だか、それが嬉しい。


公園に着くと、もう、ナッちゃんとまーちゃんが立ち話をしていた。


「あっ!ヒデちゃん遅いよー」


「まーちゃん、いつもと変わらないよ?」


「ミヤッチ、話を聞いてくれ!」


「ん?何?」


「あたしの家にコウノトリが来て、キャベツを落としていった」


「え?」


「ナッちゃん、なに回りくどい事言ってんのよ!ヒデちゃん、ナッちゃんに子供できたのよー」


「あぁー!せっかく、ミヤッチにドラマチックに話そうと思ったのに、先に言うなよなぁー」


「あはは、ゴメンね」

 

「ナッちゃん…でかした!これはめでたい!!」


「えへへ…はらみました!!シュウより10才も歳が離れるけどね…旦那がすげぇ喜んでるんだよねー」


「男かな?女の子かな?どっちでも嬉しいね!」


「うん、出来れば女の子かな?」


「たまには私、お風呂入れようか?私、入れるの上手だよ?」


「ヒデちゃん、言い方ちょっとエッチ」


「イヤイヤ、それは考え過ぎだよ」


「あはは、ミヤッチは大丈夫だよ」


「そうだよー、私なんかナッちゃんの裸見たって何とも思わないし、まして、可愛い赤ちゃんに…」


「こら!クソじじぃ!あたしを見たって、何だって?!」


「あはは…」


「あたしゃ、脱いだらすげぇんだぜ」


「そうそう、こうね、お腹の肉が、タプンってしてね…」


「こらこら、まーちゃんもデロンデロンしてるじゃん」


「あはははは〜、相変わらず良いコンビだね…あはは…」


「うん、あはは…」


「じゃ、大変な時は、シュウくんも私がみるよ」


「ミヤッチ、ありがとね」


「ヒデちゃんは、皆のじいちゃんだね」


宮島は、さて、忙しくなるぞ…と、喜んだ。

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