第14話


宮島は航太と一緒に相変わらずに公園に来ている。


ナッちゃんまーちゃん以外にも町内の住人達と友達になれた。


入れ替わり立ち変わり宮島の元へとやって来て、話かけては笑顔で帰って行く。


「桜が綺麗に咲いたね」


「あはは、私は毎日、お花見してるよ」


公園の桜は満開である。


航太は小学3年生になって、増々元気で優しい子供に成長している。


航太がふざけて逃げまわると、宮島はもう追いつけない。


息を切らすと、航太はいたわってくれる。


そんな航太を宮島はとても愛しく思う。


航太の行末が宮島の生き甲斐でもあったのだ。


航太と一緒に公園から帰り、美紀は夕飯の仕度、航太は宿題をやっている。


宮島はビールを飲んでテレビを観ていた。


テレビのコマーシャルを観て、何かを思い立ったのか、箪笥の引き出しを開け、何やら探している。


探し物があったのか、何かを確認して、引き出しを閉めた。


テーブルに料理が並び、航太を呼んで食事となる。


食事をしながら、宮島は美紀に話し掛ける。


「美紀ちゃん、パートから帰って、すぐに食事の用意で大変じゃない?」


「別に平気よ」


「でも、いつも手の込んだものを作ってくれてるから」


「平気!じいちゃんは気にしないで」


「パート少し減らしたらどうかな?」


「だから平気よ」


「洗濯も掃除までみんな世話になってるから」


「だから!平気!!」


「パート代くらい、家事代で支払っても…」


「じいちゃんしつこい!あたしがやりたくてやってるの!」


「そっか…」


「判ってくれたらいいよ…って、このトマト煮、どう?」


「凄くうまいよ。肉も柔らかくておいしい」


「でしょ?じいちゃんの好みだなって思ったんだー」


美紀は笑顔でそう言った。


美紀ちゃんと航太が、本当の娘と孫だったら良いのになぁ…。


宮島は心から強く思った…。


航太が寝て、美紀も布団へ入る。


しばらくすると。美紀の寝息が微かに聞こえる。


宮島はそっと起き上がり。箪笥の引き出しを開くと、便箋と白い封筒を取り出した。

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