第10話
「美紀ちゃんが嫌じゃなかったら、美紀ちゃんも泊まってくれないか?私も航太を帰したくないんだ」
「でも、迷惑かけるから…」
「迷惑だなんて…私は航太を本当の孫みたいに思っているんだよ。それに美紀ちゃんだって娘のように思っている。今日だけは、頼むから、ふたりとも、泊まってくれないか?ちゃんと新しい布団もあるから…」
「布団なんて何でも構わないけど…じいちゃん、本当にいいの?」
宮島は必死で頼んで美紀も泊まらせる事にした。
「それじゃ、着替えを持って来るね」
2軒先の自宅へ戻り、着替えを持ってまた宮島の部屋に来た。
宮島は新しい布団を奥の部屋から出してきて航太が横たわる布団から、少し離して美紀の為の布団を敷いた。
美紀は隣の部屋で着替えをし、宮島の勧めるビールを飲んだ。
航太はテレビを観ている。
宮島はビールを飲みながら、美紀に話す。
「私は毎日ほとんど外食かコンビニの弁当だから、今日の美紀ちゃんの料理は嬉しかった」
「料理くらい、いつでもまた作るよ」
美紀も普段の口調に戻って喋ってる。
「それは有り難い。食材代は気にしないでまた頼みたいな」
「やった!食費が浮くー」
「あはは…そう言えば、パートも大変だね…」
「うん、航太も大きくなるし、中学、高校に行くようになれば、もっとお金がかかるしね…大学へ行きたいならもっと稼いで貯めとかないとね…」
「そうか…大変だな…そうだ!もし美紀ちゃんがいいならさ…」
「え?」
「今の家、家賃払っているんでしょ?」
「うん」
「ならさ、美紀ちゃんが良かったらだよ…ここに住まない?そうしたら、家賃分はそっくり貯金できるし、食費も電気代も全部浮くよ」
「だってそこまでしてもらったら、じいちゃんに…」
「良いんだよ。私はこのアパートの家賃収入もあるし、年金も貰ってる。毎月、お金が貯まり過ぎちゃうんだよ…それに航太とずっといられる。もちろん美紀ちゃんともね…孫と娘と一緒に住めるなんて、これ以上嬉しい事はないよ…」
「本当の娘さん家族いるんでしょ?」
「うん、今は広島にいるよ。娘には、退職金をそっくりあげるつもりなんだ、私が死んだらね。それに広島の娘には、航太と美紀ちゃんの話はしていて、娘も安心だと喜んでいるよ。だから、美紀ちゃんは何も気にする必要は無いんだ…」
美紀は暫く考えている…。
「じいちゃん、とっても有り難い話だね…母子家庭には夢みたいだよ…」
「なら、良い?」
「本当にいいの?」
「私が頼んでいるんだよ…」
「うーん、じゃあそのかわり、毎日ご飯を作らせて毎日家事もやらせてくれる?」
「うんうん…」
宮島は涙をこぼした…。
宮島は涙を流して喜んだ…。
話を聞いていた航太が、宮島に抱きついた。
宮島を見上げて航太は微笑んだ…。
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