第8話



「ねぇ、じいちゃん」


美紀は宮島をじいちゃんと呼ぶようになっていた。


「何だい?美紀ちゃん」


「明日、パートで残業なの」


「珍しいね」


「うん、それで帰るまで航太をみてて欲しいんだけど…図々しいお願いだけど…」


「何言っちゃってんの?大歓迎に決まってるよ!何なら、航太と一緒にお風呂入って、一緒に寝たいな、泊まらせてもいい?」


「有り難うね。航太が大丈夫なら…」


翌日、美紀は夕食用に航太と宮島のお弁当を作り、宮島に手渡す。


「嬉しいなぁ、私の分もあるんだね」


「おいしいかどうか判らないけど、食べてみてね」


じゃあ、ママは行って来るね…と航太に言い美紀は仕事に行った。


「航太、今日も公園に行こう」


航太と宮島は手を繋ぎ、公園まで歩く。


公園に着くと友達が航太を呼ぶ。


航太は友達と走り回る。


宮島はベンチに腰掛け、眺めている。


近所に住む浪人生が来た。


「こんにちは」


「こんにちは、受験勉強は進んでいるかい?」


「中々難しいっすね…親の期待もありますし…」


「折角、親御さんが応援してくれているんだから、もう1年頑張ってみたら?」 


「そうなんすけど、受験止めて、働いた方が家にお金も入れられるし、良いんじゃないかな?」


「そんな事無いと思うよ。大学入って就職して欲しいんだよ。親としてはね」


「そんなもんっすかね?」


「そんなもんだよ。親御さんはちゃんと大学行く費用の事だって考えてるさ。まだ若いんだから、親に甘えなよ」


「そうっすね」


「君の場合は、大学出て働いて、早く孫を見せてあげるのが親孝行だよ」


浪人生の彼は笑顔を見せて、帰って行った。


そうこうしている内に、ナッちゃんとまーちゃんが合流する。


「ヒデちゃーん、こんちはー」


「ミヤッチ、生きてたか?」


「あはは、こんちは」


宮島はポケットからスマホを取り出した。


「ねぇ見てよ。今日夜、航太と一緒に夕飯食べるの…」


宮島はスマホを開き、写真を見せた。


「美紀ちゃんがお弁当作ってくれたんだ」


航太のお弁当はくまさんのキャラ弁。


宮島のお弁当はシャケの切り身を真ん中に置き、卵焼きや紅生姜、緑のほうれん草にハムと唐揚げまで入った超豪華な弁当になっていた。


「すごーい、美紀ちゃんってお料理上手なんだね」


「キャラ弁すげぇな…作り方教えてくんないかな?」


「ね?美味そうでしょ?食べたら無くなるから、さっき、写真を撮っちゃった」


「ねぇねぇ、今度遠足あるじゃん。3人のガキがキャラ弁持って行ったら、奴ら喜ぶよな?」


「そうだね」


「こりゃ何としても美紀様に、教えを請わなきゃなるまいな…」


ナッちゃんが歌舞伎の様に見栄を張り、時代劇掛かった喋りで宮島の笑いを誘う。


「美紀ちゃん、パートで忙しいからな…訊いてみたら?」


「じじぃ、嬉しそうだな。今度、ウチのシュウも預けるか?」


「あはは…いつでも大歓迎だよ…そうだ!今度、うちに皆で来て一緒にご飯でも食べたら良いね」


「ヒデちゃんち?それは楽しそうだね!」


「あたしとまーちゃんと美紀ちゃんでご飯作ろう!」


「いいね!」


「私は子供達と遊んでるよ」


「うんうん、絶対にやろうねー!」


今日もいっぱい笑って楽しかった。


航太と手を繋ぎ、家に帰った…。

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