【SS】獅堂くんの目標と決意
同じクラスの篠宮さんは、学校で笑った姿を見たことがない。
表情筋が死んでいる、なんて噂のある篠宮さんだけど、笑わせようと一緒に過ごしているうちに、少しずつだけど、どんなことを考えているのか分かるようになってきた気がする。
授業がつまらない時は、黒板を見ているようでどこか遠くを見ていることが多いし、給食でデザートが出ると、普段より嬉しそうに見える。
表情が乏しいだけで、篠宮さんにはしっかり喜怒哀楽があるのだ。
つまり俺が面白いことをすれば、篠宮さんは笑ってくれるということだ。
クラス全員を笑わせる俺の目標も、達成できる日も近いだろう。
そんな話を友達に自慢してみたら、ちょっと変な顔をされてしまった。
「獅堂、篠宮さんのこと見過ぎじゃね?」
そう呆れたように友達に言われるくらい、俺は篠宮さんのことが分かるようになってきたらしい。
「そう? 他の友達と同じくらいの頻度で話してないか?」
「いやいや。昼休みになってすぐ篠宮さんのとこに行く奴が何を言っているんだか」
放課後は別の友達と話したり遊んでいたりしているのだから、他の友達と変わらないと思う。
その言葉にもあまりピンと来なくて、首を傾げる。
篠宮さんにそのことを言ったら「それは私に言う話じゃないと思うよ」と何とも言えない表情をされた。
前言撤回。俺が篠宮さんを笑わせる日は、まだまだ先なのかもしれない。
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