第8話 松崎殺人事件
10月半ば
本田たちの死に恐怖を感じた別所は、静岡県警の楠木恒夫に助けを求めるが、別所は松崎町にある別荘で斧で腕を切り落とされた上に滅多打ちにされた。
殺人鬼は
園子が手を掛けていたのは一足先に聞き込みにやってきた楠木恒夫と瓜二つの双子の弟、
園子はキルゲームに参加していた。園子は美幸にそっくりだった。
全てを告白した園子は2人の目の前で、持っていた剃刀で喉を切り自殺するが、無線で報告するために楠木とともに一度車に向かった貴恵が現場に戻ると、園子の死体は忽然と消えていた。落ちていた剃刀は、撮影用に血糊が噴き出すダミーだった。いつの間にか貴恵の背後に立っていた園子は、斧で貴恵を殺害、車に残っていた楠木恒夫は異変を感じ再び建物に入ろうとする。
園子は楠木恒夫をも亡き者にしようと斧を振るうが、楠木恒夫がドアを開けた拍子に、貴恵が倒れた際にドアに引っ掛かった金属製オブジェが園子を直撃、オブジェに体を貫かれた園子は楠木恒夫の悲鳴の中、絶命した。
別所は入院先の病室でニュースを見ていた。
園子は別所が『狼町殺人事件』をパクったと思い込んでいたようだ。木々が緑から赤や黄色に変わり始める。
キルゲームには永倉も参加していた。
松崎港の周辺に温泉街が広がる。
鏝絵の名手として知られる入江長八ゆかりの地であり、『伊豆の長八美術館』が存在し、また温泉地には『なまこ壁』の町並みが見られる。県道15号線沿いに源泉櫓が存在する。古くは、その櫓の下に湯船が存在し、入浴することができた。浴槽撤去後も源泉の傍に足湯が作れていたが、いずれも現存しない。
松崎町には
藤堂は元学校給食調理スタッフ、新見は元就職支援相談員。
藤堂は7人、新見は5人、永倉は3人殺していた。
もっと殺さないと勝てない。
永倉は
津田は大学時代の教授だ。ガッツ石松にどことなく似ている。大学時代、永倉は津田からよく叱られていた。
『遅刻しちゃダメでしょ』
『君には才能がない』
津田は『静岡歴史ゼミ』の顧問だ。
津田のせいで
『就職先見つけてやるから、みんなの前で裸踊りしろよ』
津田は鬼畜以外の何者でもなかった。
『
永倉紀香は、沼田の最後の言葉を思い出して泣きそうになった。
室岩洞は松崎町道部にある採石場跡だ。
伊豆半島が海底火山であった時代の海底に降り積もった火山灰が凝灰岩へと変化し、『伊豆石』と呼ばれる石材として重宝された。
室岩洞は、江戸時代から1954年(昭和29年)頃まで、伊豆石を垣根掘りの工法を用いて石を切り出していた採石場跡であり、切り出されたものは奥側にある出口から海岸まで運び出し船で輸送をしていた。この採石場跡を整備し『室岩洞』と銘うって1982年(昭和57年)4月に公開された。
江戸城の石垣にも使われたとの説があるが、ひとくちに『伊豆石』と言っても、伊豆石には凝灰岩系のやわらかい『伊豆軟石』と、安山岩系の硬い「伊豆硬石」の2種類がある。室岩洞は凝灰岩系の伊豆軟石であることから、江戸城の石垣に使われたとは考えにくい。江戸城に使われたのは主に伊豆半島東側から産出される安山岩系の伊豆硬石である。
洞内は約2000m2の広さがあり、内部をめぐる遊歩道はおよそ180m。地下水が溜まって澄んだ水たまりになっている箇所もある。内部の構造は複雑である。
結局、紀香は津田を見つけることは出来なかった。
10月26日 - 英会話学校NOVAが会社更生法適用を申請し営業を停止。のちにジー・エデュケーションに経営譲渡。
屋久島を脱出した永倉と靖子も、松崎町にやって来た。
「永倉さんって兄弟いるの?」
「いや、ひとりっ子だよ」
レンタカーで大沢温泉にやって来た。
那賀川の支流池代川沿いに2軒の旅館が存在する。他にも民宿が数軒並ぶ。またライダーハウスや、自炊型の湯治場など、伊豆地方の温泉地では少ない宿泊施設も存在するのが特徴である。
かつて遊戯場が存在したが、現在は営業をしていない。
北海道の開拓に大きく貢献した依田勉三はこの地の出身である。池代川の中の岩場には、勉三の兄、依田佐二平の石像が建てられている。
温泉に浸かり、部屋で靖子は地図を広げていた。
「どこの銀行狙おうかしら?」
掌で黒い玉を弄んでいる。
「強盗は足がつきやすいからやめとけ」
永倉は缶ビールをラッパ飲みした。
靖子はリモコンでテレビをつけた。
お笑いをやっていたが、臨時ニュースに切り替わった。静岡市内にある派遣会社にピースの缶(50本入り)に偽装した爆弾が投げ込まれたらしい。不発であり、犠牲者なし。
「怖い事件だ」と、永倉。
「これやったの私。私、弁護士やる前は派遣社員だったから。派遣切りとかマジ、ムカつく」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます