第3話 黒狼SHIVERING

 7月31日 - 兵庫県豊岡市で野生のコウノトリが日本で46年ぶりに巣立ちをする。


 旅行先のグアムで、富豪の愛人、右近郡司うこんぐんじとの別れを決意した佐伯貴恵。右近は千葉真一ちばしんいち、貴恵は土屋太鳳つちやたおに似ている。旅行を終えて黒狼の自宅に戻ると、家財道具一切が部屋から持ち出されており、右近の姿も見えない。そこへ、貴恵の上司である黒狼署刑事課の調所ずしょ警部が現れ、右近の死を告げる。調所は寺島進てらじますすむに似ている。調所警部によれば、右近は家財道具のすべてを競売にかけ、その落札代金2000万を持って日本脱出のために成田行きの列車に乗ったが、駅で何者かに突き落とされたという。


 右近沼子は黒狼署で夫の遺品(小さなバッグに手帳、櫛、ボールペン、沼子に宛てた未投函の手紙、偽名のパスポート4通)を受け取り、沼子は警察署を後にする。沼子は自宅に戻り途方に暮れていたが、そこに千葉が現れ、「右近さんの事件は新聞で知った。何か協力できることはないか」と申し出る。


 右近の葬儀は寂しいもので、出席者は沼子と、沼子の親友で弁護士の松永靖子、そして調所警部だけであった。黒狼市の南東にある葬儀場で行われた。途中、ハゲた小柄な豊後ぶんご、やせた背の高い外人のプルート、大柄で右手が義手の江口えぐちが現れ、右近の柩を確認する。

 沼子は公安調査庁の毛野けのからの手紙で呼び出され、右近の正体が『仙堂せんどう』という男だと知らされる。毛野は豊川悦司とよかわえつじに似ている。

 仙堂は昭和後半、『オルトロス』って機関に所属してロシアに向かった。金塊の輸送任務にあったが、葬儀に現れた3人を含めたメンバーたちは金塊を盗まれたことにして密かに地中に埋め、バブル直前に山分けすることにし、その後、犯罪組織『ビゾーン』の攻撃を受け江口が右手に大怪我を負い、散り散りになってしまう中、仙堂が独り金塊を掘り返し、持ち去ったのだという。

『ビゾーン』はロシア語で野牛を意味する。


 仙堂が持ち去った金塊の在り処は妻の沼子が知っているに違いないと信じた3人が沼子の前に現れ、「金をよこせ」と脅迫する。調所は3人の脅迫から沼子を守ろうとするが、彼も3人と旧知だった。沼子の信頼を得た調所が金を独り占めすることを危惧した江口は、彼女に電話を掛けて彼の正体を知らせる。沼子は調所をホテルの電話で呼び出し、彼は4人と共に金を盗み出した『人でなし』だと告げる。同じころ、沼子の甥、哲也てつやを人質にした3人は、彼女と調所を呼び出して金の在り処を聞き出そうとする。

 3人は廃校の男子便所に哲也を監禁していた。

 調所は「3人の誰かが仙堂を殺して金を独り占めしようとしている」と語り、3人は疑心暗鬼に陥る。5人はそれぞれの部屋を探索するが、江口が仕掛けられた爆弾で殺される。


 金の在り処を探す中で沼子と調所は親しくなるが、毛野から調所が末期癌で余命いくばくもないと知らされた。沼子は愕然とする。


 8月10日の午前11時、黒狼病院に沼子は見舞いにやってきた。

 調所は彼女に、自分の正体が怪盗パンプキンだと告げる。その夜、電話で呼び出された豊後が高架下で射殺され、プルートが行方不明となる。沼子はプルートが犯人だと疑うが、プルートは「金の在り処を教えろ」とパンプキンに電話をかけてきたため、パンプキンは彼女が金の在り処を知っていると考え、2人は右近の遺品を確認する。翌日、パンプキンはプルートの部屋から右近のメモ帳を見付け、沼子を連れて黒狼公園に向かう。そこにはプルートも来ており、金の手掛かりを探していた。パンプキンと別れた沼子は靖子と川べりで出くわした。

 靖子は突如、バタフライナイフで沼子の腹を刺してきた。沼子は病院に搬送されたが死亡した。靖子の父親、松永誠一まつながせいいちは刑事で『アルラウネ』という宗教団体に潜入していたが、正体がバレて、五寸釘を体のアチコチに刺される拷問にかけられた挙げ句、首を日本刀で切られた。生首は自宅に送られ、当時17歳だった靖子は見てしまった。あれから13年が経つが教祖は未だに逮捕されていない。靖子は『アルラウネ』に復讐する為に右近たち4人を殺害した。

 靖子は去年の大晦日、黒狼城の地下で黒い玉を手に入れている。

 靖子は途中、警官に見つかり銃で撃たれたが沼子を殺した直後で不死身だったので無傷のまま、黒狼城の近くまで逃れた。

 ケータイが鳴った。協力者の1人だった。

《『アルラウネ』のアジトを見つけたぞ》

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