【KAC筋肉】村娘とイケメンと筋肉

葦空 翼

村娘とイケメンと筋肉

 ここはとある辺境、田舎の村。

 当然若者は少ないし、居たとして全員顔見知り。友情を育むにしても恋愛するにしても、限られた顔ぶれの中で選ぶしかない。そんな環境の中。


「アルジャー! イザとの結婚を賭けて勝負しろ!」

「望む所だ。姫様は貴様のような愚鈍な男にはやらん」


 …………なんか始まった。

 渦中の人物、賭けの対象になっている少女イザはハァ。と深いため息をついた。


 どうしてこうなった、と聞きたいのは山々だが、問題はとにかく、彼女の未来が本人の預かり知らぬところで決められようとしている事である。

 

 熱く睨み合い、火花を散らす片方は村一番の力自慢ビリー。縦も横もでかく、まさに筋骨隆々。例え嵐が来ても怪物モンスターが現れても、この男の胸の中なら大丈夫だろうという謎の信頼を感じさせる。


 そしてもう一方のアルジャーは、眠り姫の目も覚めるような色男。すらりとした高身長に、色白の肌、よく手入れされた黒髪ブルネット、深い蒼の瞳。こんな田舎に住んでいなくともぜひ貴方の嫁に、と言われるだろう美形イケメンだ。

 ただし、


「姫様、下がっていて下さい。万が一とは思いますが、俺の内なる力が暴走しては困ります」

「…………私、いつからお姫様になったんだろう」

「またまたご冗談を。貴女は生まれた時から選ばれし天の姫ですよ」


 言ってることが意味不明だ。イザの知る限り、1年くらい前まではマトモな男だったのに。何に目覚めたんだろう。


「とにかく! お前のような筋肉のない男にイザは相応しくない! 腕相撲で勝負だ!」

「いいだろう。俺の姫への愛の力があれば貴様など一捻りだ!!」


 よくわからないながら、まぁ、頑張ってください。イザは緩慢な動作で手を握りあった男たちの間に立つ。


「レディ……ゴー!!」


 ダァン!


「なッ……」

「勝った! 勝ちましたよ姫様!!」


 瞬殺。恐ろしい事に、アルジャーの圧勝だった。


「愛の力は無限! 最強!」


 ……え、私これと結婚するの?

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【KAC筋肉】村娘とイケメンと筋肉 葦空 翼 @isora1021

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