「クラスの男子全員マッチョ化計画!?」「うん。だから君も頑張ってね」
富士之縁
第1話 見かけは怖いがとんだキレてるサイドチェストだ
「今日からクラスの男子全員には筋肉モリモリになってもらいます」
真面目くさった文字で「クラスの男子全員マッチョ化計画」と書かれた黒板を背に、クラスの姫的ポジションの女子、芳川が言い放った。
運動部の陽キャ男子たちは反対する理由もなさそうに頷いていた。
お前らは良くても僕は困る。
運動苦手そうなグループも「芳川さんの指示なら」とノリ気である。
体育教師の担任は、文化祭の出し物を決めるためのHR中に男泣きした。
「芳川から話を聞いた時、俺は猛烈に感動した! 体育祭で負けたのはやっぱり悔しいよな! 俺も付き合うぞ!」
もうダメだ。僕は猛烈に絶望した。
放課後。トイレに行くフリをして逃げようとしたのだが、女子の密告に遭って数分後には陽キャたちに捕獲されてしまった。
以来、放課後は男子たちにマークされながら筋トレや運動を渋々やらされている。
運動後には担任お手製のプロテイン付き。
文化祭にクラスの映像作品を出すとかいう話で、女子たちが交代でカメラを回していた。
夏休みも小学生のラジオ体操ばりに駆り出された。
文化祭直前の或る日、
「今日の撮影で筋トレ終わりです。じゃあコレに着替えて」
芳川から白くて細長い布を渡された。えぇ……。
更衣室で男たちがググりながら褌の着付けを試行錯誤する。
着替え終え、芳川の指示で体育館の床に寝転がる。
まあまあムキムキになった男たちが折り重なり、一部の男子たちには芳川の指示でペンキが塗られていった。虚無の時間が続く。
「写真撮るので合図に合わせて筋肉に力入れてください。3、2、1、はいチーズ」
文化祭当日、僕の教室には《見かけは怖いがとんだキレてるサイドチェストだ》と題された写真とメイキング映像が展示されていた。江戸時代の有名な画家のパロディだ。
芳川はその作品で有名大の推薦入試を突破したらしい。
僕はその噂を聞きながら、ダンベル片手に受験勉強をしていた。
「クラスの男子全員マッチョ化計画!?」「うん。だから君も頑張ってね」 富士之縁 @fujinoyukari
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