純粋に可愛いと思ってしまった
佐和と湊は、前に2人で行った大型書店の中にあるカフェにいた。
2人は席に案内されるとメニューを開いた。
「うーん。フレンチトーストか…。あっ、このボロネーゼも美味しそう」
佐和はメニューを見ながらつぶやいた。
「…お前はフレンチトーストにしとけ」
「ん?何で?」
「なんでも」
「?わかった。あのフレンチトーストは何回食べてもあきないしね」
佐和は笑った。
「何で駿太と食べちゃうかね」
「え…、ごめん」
「ま、2回目でもいっか」
湊は溜息をついた。
「えっ」
佐和の心臓がバクバクした。
2人は店員に注文を終え、料理を待っていた。
「ねぇ、佐和の誕生日っていつなの?」
「5月だよ」
「そっか」
「湊くんは?」
「俺、6月」
「じゃ、近いね」
佐和は、笑った。
「そうだね」
(5 月に成人か…。ま、関係あるかわかんないけど…)
「そういえば、絵理ちゃん達と仲直りできた?」
「…まだ」
「しないの?」
「だってさ…。パブロ君に関しては、殴っちゃったんだよ?気まずすぎるしょ」
湊は下向きかげんで言った。
「…でも、湊くんの大事な友達なわけでしょ」
「うん…。でもさ、謝って拒否られるのが一番辛いよ?」
「でも、とか、だって、とか。子供みたい」
佐和はクスクス笑った。
「佐和の図太さが羨ましいよ…」
「湊くんの事でしか図太くないよ」
「………」
「黙るな」
「…ありがとう」
「…ん?それってOKってこと?」
「違う。けど…、そんなに思っててくれるのは、ありがたいというか…。ま、嬉しい?」「そう?良かった」
佐和は嬉しそうに笑った。
「…佐和、やっぱり美人だね」
「え!いやいや!」
「…色白だし、目が大きいし、まつ毛も長いし…」
「うわ…。見ないで…」
「あははっ。モテるでしょ」
「モテないモテない」
「そうかなぁ」
湊は佐和の顔をじっと見た。
佐和は恥ずかしすぎて顔が赤くなった。
「モテるのは、湊くんじゃん…」
「ん?うん」
「…ちょっとは否定してよ」
佐和は拗ねた。
「別に好きじゃない人にモテてもね…」
「すいませんね」
「いやいや、佐和からは嬉しいよ」
湊は佐和を見た。
湊はずっと引きずっていると思っていた絵理への気持ちが勘違いだと気づき、改めて佐和
に向かい合うと、純粋に可愛いと思ってしまっていた。
佐和は湊の発言や態度に、心臓がバクバクして苦しかった。
「湊くん…」
「何?」
湊は優しく笑った。
「その笑顔、やばい。心臓飛び出る…」
「あははっ」
湊はもっと佐和の目を見つめた。
佐和は目をそらした。
「佐和」
「何?」
「かわいいね」
佐和の心臓がバクバクを通り過ぎて、ギュッとなった。
「殺す気か…」
佐和は心臓を押さえながら言った。
「あはは。りんごソーダ飲む?」
「ううん。今日は甘いもの食べるからバーブティーで」
「俺は、りんごソーダ」
「すっかり、りんごソーダに乗り換えられてハーブティが可哀想…」
「ハーブティーはこれから佐和が飲むから大丈夫」
(これからも、一緒に来てくれるの?)
「また、こよう?」
「うん…」
「返事が、弱いなぁ」
「だって…。信じられなくて」
「…別に一緒にご飯食べるだけじゃん」
「そうだよね…」
佐和は、だけ と言われ少し悲しかった。
「佐和と一緒にいると楽しいしね」
「もう…!心臓!破裂するから。やめてよ…」
「ふ~ん。破裂すれば?」
湊はニヤッと笑った。
佐和は悔しくて湊を睨んだ。
テーブルにフレンチトーストが運ばれてきた。
「相変わらずフルーツの量がすごいなぁ」
佐和はそう言ったあとにハッとした。
「2回目だもんね」
湊は佐和の目を見ずに言った。
「うん…。…そうだね…」(相変わらず…なんて言わなきゃよかった…)
湊が佐和を見ると、2人の目があった。
「佐和、今日が初めてだと思ってリアクションしてみて」
「えぇ?」
「ほらっ」
湊がフレンチトーストの乗った皿を佐和の方へ近づけた。
「わ、わぁ!フルーツがたくさん!美味しそう!…って…勘弁してください…」
「ふ~ん。で?」
「で?! …えー…、バターのいい香り!」
「で?」
「で?!…えっと…、彩りがいい!」
「ふ~ん。あとは?」
「インスタ映えしそう!」
「ふ~ん。インスタやってるの?」
「やってないけど…」
「ふ~ん。そうなんだ。で?」
「…もう…、ホント、勘弁してくださいよ…」
佐和は疲れた声をだした。
「やっぱ2回目じゃダメだな。いただきます」
「この…。散々やらせておいて…」
「早く食べれば?」
湊は意地悪そうに笑った。
「もう!」
佐和は怒って、フレンチトーストを食べだした。
「悔しいけど、美味しい…」
プリプリしている佐和を見て、湊は笑った。
「あー、美味しかった。ごちそうさまでした」
佐和は満足した表情で言った。
「ご馳走様でした」
湊も同じく言った。
「お腹パンパン…。ちょっと休んでから行っていい?」
「うん、私もパンパン」
「ハーブティー飲も」
湊は店員を呼ぶボタンを押した。
「湊くんは、絵理ちゃんのどこが好きだったの?」
「ゴッホッ…!ごめ…。何、急に…」
佐和からの急な質問に湊はむせてしまった。「昔は好きだったんでしょ?」
「…言わない」
「まだ、引きずってるの?」
「引きずってない」
「じゃぁ…」
「そんな事聞いて、佐和は嫌な気持ちにならないの?」
「…なるかもしれないけど…。参考のために、聞きたい」
「参考?」
「どうやったら湊くんに好きになってもらえるのか知りたい」
「どうやったらなんて…無いよ」
湊は誤魔化すようにお茶を飲んだ。
「じゃ、ただの興味本位で」
「ただ、境遇が一緒だっただけだよ。うちの妹と、あっちの弟が仲良かったから」
「それだけじゃないでしょ」
「…気が合ったんじゃないの?」
「じゃ、友達でも良かったわけじゃん」
「…もう!うるさい」
「あ、ごめん」
「俺は…、もう次に進みたいの」
「そうなの?」
佐和は湊に置いていかれるような気がして不安になった。
「…まだ予定はないけど…」
「そっか」
佐和は少し安心した。
「あの…、それで…、今、模索中というか…」
湊は歯切れの悪い言い方をした。
「模索?女の子を?ちょっと引くわ…」
「違う!じゃなくて…」
「?」
「自分の気持ちの模索…というか…」
「…自分の気持の、模索…?」
「…引いてない?自分でも思ったよ?26歳でそれは…って」
「…昔の恋を引きずりすぎたね…」
「…そこ、いじんないで」
湊は恥ずかしそうに言った。
「ごめんごめん」
「真面目に考えてんの」
「そっか」
(佐和の事を…)
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