番外編 お兄ちゃんと何話してるの?
土曜の昼下がり。
春乃は、孝司の家に遊びに来ていた。
「春乃、ケーキ食べる?」
「うん」
「絵理が昨日、チョコレートケーキ買ってきて。春乃の分もあるからって」
「うん、ありがとう」
「じゃ、持っていくから俺の部屋で待ってて」
「うん」
「はい」
「ありがとう」
「紅茶も」
孝司は温かい紅茶をテーブルに置いた。
「孝司が入れてくれたの?」
「うん。湊君のマネ」
春乃の兄の湊は、家に行けば、紅茶やフルートティーを入れてくれる。
春乃は、普段お茶なんて入れない孝司がしてくれたのが嬉しかった。
「美味しい」
「そう?」
「うん…」
「…。…春乃、元気ない?」
春乃の声がいつもより小さかったので、孝司は心配になった。
「そんな事ないよ」
春乃はケーキを頬張る。
「美味しかった。ご馳走様」
「うん…」
「何?」
「春乃が何?だよ」
「え?」
「元気ない」
「そんな事…」
「何?俺、何かやらかした?」
「……」
「教えて?」
「…私の事好き?」
「好きだよ」
孝司は立ち上がって、春乃の隣に座った。
「春乃の事、大好きだよ」
「孝司」
「ん?」
「孝司」
「うん?」
「あのね」
「うん」
孝司は春乃の髪を撫でる。
「最近、お兄ちゃんと何か話してるみたいだけど、何話してるの?」
孝司の手がピタッと止まった。
そのあと、何事もなかったようにまた髪を撫でだした。
「内緒」
「何で?」
「湊君と俺だけの話だから」
「私の事?」
「内緒」
「教えて」
「俺が勝手に喋るわけにはいかないよ」
春乃は、孝司と反対の方向を見た。
「春乃が心配することは何一つしてないよ」
「じゃ、教えてよ。私、誰にも言わない」
「…言えないよ」
「私の事好きじゃないの?」
「好きだよ」
「じゃぁ…」
「春乃、そうやって聞き出して、湊君がどう思う?」
「…お兄ちゃんなんて知らないもん」
「…ブラコンが何言ってるの」
孝司は笑った。
「…あー。やだな」
「ごめん」
「…言わないと…嫌いになっちゃうよ?」
春乃は、また孝司の方に顔を向けて言った。
「嫌いになっちゃダメ」
「……」
「俺の事嫌いになったら、泣くぞ」
「私も泣く…」
「うん」
孝司は春乃を抱きしめた。
「…俺は、春乃のだから」
「言う事聞かないのに?」
「そう。ちゃんと可愛がってね」
「……」
春乃は孝司の頭を撫でた。
孝司は春乃の肩に頭をつけた。
「…孝司」
「ん?」
「やっぱり教えて」
「えー?!もう、言わない流れだったじゃん!」
孝司は体を少し離して、春乃の目を見た。
「誰にも言わないって」
「湊君に殺されるから…」
「…お兄ちゃんが孝司を殺したら、私がお兄ちゃんを殺すから…」
春乃は、怖い顔で言った。
「何を物騒な事を…。それに結局、俺、殺されてるじゃん」
「あ、…ホントだ」
2人ともフッと笑った。
「…もう、全然違う空気だけど…」
「何?」
「……」
孝司は春乃を見つめると、キスをした。
そしてゆっくり唇を離した。
「…春乃、チョコレートの味…」
「さっき食べたからね」
「…美味しい」
「やだ、口についてた?」
「…食べたい」
「ごめん、もう全部食べちゃった」
「………」
「言ってくれたら、残したのに…」
「春乃ちゃん」
「何、その呼び方…」
「無理やりじゃなきゃわからないのかな?」
「なに…?」
孝司はゆっくり春乃に近づく。
「これから俺がなにするかわかる?」
「うん…」
孝司は春乃にキスをした。
「じゃ、次は…?わかる?」
「…わかんない」
孝司はまたキスをした。
「次は?」
「…抱きしめる?」
「…違うよ」
孝司は、春乃にキスをして、そのまま優しく押し倒した…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます