絶対誘うよ
(あ、家にビール、ないんだった…)
湊は、会社帰りに、ビールを買いにコンビニに行った。
「湊」
誰かに呼ばれて、湊は振り返る。
「アンナ?」
「また会ったね」
アンナは笑った。
中学の時もそうだったが、変わらずアンナは綺麗だと、湊は思った。
「ビール…?」
アンナの持っていたのは、湊が買おうとしていたビールだった。
「もっと可愛いの買えば良かったかな」
アンナは笑った。
「いや、俺もビール買いに来たから」
「あはは。ホント?」
「うん」
「あんまり行儀よくないけど、公園で飲む?」
アンナは、いたずらっぽく言った。
「うまっ」
「私等もビール飲んでうまいって言う年になったんだね」
「ね」
2人は、公園の角のベンチに座って話し出した。
「湊、仕事は何してるの?」
アンナはビールを流しこむ。
「外資系企業で働いてるよ」
「へー。湊、昔、英語得意だったしね」
「アンナは?」
「美容関係」
「ははっ。ポイな」
「ポイか」
アンナは笑った。
「結婚はしてない?」
「してないよ。アンナは?」
「してない」
「そっか」
湊は、缶ビールに口をつけた。
「彼女は?」
「いるよ」
「佐和ちゃん?」
「あはは。あの子9歳も下だよ?」
「見た目は20歳くらいだけどね」
「そうだね」
「可愛かったなぁ」
「…そうだね」
湊は曖昧に笑った。
「どうかした?」
アンナは湊が元気がないのに気がついた。
「…佐和に告白されたんだけど…」
「ふーん」
「ずっと前から、佐和の気持ちに気がついていたのに、ずっとはぐらかしてさ」
「うん」
「気づけば、6年も片思いさせてた…」
「そっか」
「でも、この間はっきり断って…」
「うん」
「すごい罪悪感…?」
「しょうがないよ…」
「…ん」
「彼女いるんだし」
「あ…。俺…」
「ん?」
「遊びの彼女しかいないんだ」
「遊び?デートしないで、ホテルだけ行くってこと?」
「デートもたまにはするけど」
「へぇ。私も遊びの彼女だったわけじゃないよね…?」
「違う違う」
湊は大きく首を振った。
「…中3の時、湊に好きな子いるからって別れたけど」
「うん」
「その人と付き合ったの?」
「ううん。告白出来なかった…」
「え?!ホント?」
「うん」
「何で?」
「…見込みがなくなったから」
「?」
「その子、遠恋してて。彼氏が帰ってこなかったら告白しようと思ってて。でもその彼氏帰ってきたから」
「告白だけでもしたら、良かったんじゃない?」
「その子と、…せめて友達でいたかったから」
「うーん、わかるけど…」
「それに、その子の彼氏とも友達になっちゃったから…。ますます言えず…」
「…へぇ。面白いパターンだね」
「うん。だよね」
「…で?」
「で?って?」
「そんな純粋な湊は、それから女の子と適当に遊ぶようになったの?」
「ま、そうだね」
「告白したわけでもないのに、一人で失恋して、一人で自暴自棄になってるの?」
「…そういうことに、なるのかな…」
「バカだな」
「…うん」
湊は飲み終わったビールの缶を見つめた。
「バカだな」
「繰り返し言うな」
湊は笑った。
アンナも笑って最後の一口を飲み干した。
そんなアンナの横顔が綺麗で、湊はつい見とれてしまっていた。
「…アンナは、そんなバカな事しなさそうだね」
湊は話を戻した。
「したよ…」
「そっか」
「言わないけど」
「そこ、言うところじゃない?」
「言わないよ。11年ぶりに会った人に言う話じゃないもん」
「ずっりー」
湊は笑った。
「ずるいよ。…私、こういう所がダメなんだろうな」
「ダメ?」
「うーん、取り繕っちゃう」
「それを言うなら、俺も同じだよ」
「そう?」
「ホントは大した人間じゃないのに…。何でもわかってる顔しちゃうから」
湊は寂しそうに笑った。
「そっか。似たもの同士か」
「やな所似てるね」
「ね」
2人はクスクス笑った。
「あー、何か、話したりないかも。これから飲みに行く?」
湊はアンナを誘った。
「ごめん、明日早いから、今日は、帰る」
「今日は?」
「うん。今日は…」
少しの沈黙が流れた。
「じゃ、今度、誘っていい?」
「うん」
「アンナのLINE教えてもらってもいい…?」
「湊が、」
「ん?」
「絶対誘ってくれるなら…、教える…」
「誘うよ」
「ホント?!良かった。連絡先交換したのに連絡来なかったら寂しすぎるなって」
アンナは安心したように言った。
「何…。…可愛いね」
湊はからかうように言った。
「うるさい」
「絶対誘うよ」
※ 湊とアンナの中学時代は
『腹黒男子は遠恋中の彼女に片思い』(同作者)に書かれてます。
好ければ是非!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます