諦めたほうが幸せになれるよ

「佐和」

孝司は、駅で佐和の姿が見えたので、声をかけに行った。

「孝司。ずいぶん早いね」

「遅れると思ってめっちゃ走ってきたら早くついちゃった」

「あはは」


「佐和、湊君のこと…、どうなった?」

「うん。この間ね、湊くんとランチ行ってね…」

「え!!ランチ行ったの?!」

何だか思った方と違う方向に行ってたので、孝司はびっくりした。

「なんでそうなったの?」

「ちょっとばかし、恩を売ったら…」

「あぁ。湊君、意外と律儀だもんね…。で…?」

「…振られちゃった」

「何て言われたの?」

「女の子としては見られないって」

「そっか。そうだよね。9歳下じゃね…」

孝司は可哀想だと思いならがらも、少し安心した。

これで、佐和と駿太が付き合ってくれたら最高だと思っていた。


「でも、諦らめられない」

「ん?えー!!何で?!」

またまた、思い描いていた方とは別の方向に行って、孝司は驚いた。

「どこかで、いけるんじゃないかって思っちゃう」

「…諦めようよ。そのほうが幸せになれると思うよ?」

孝司は、一生懸命に説得しようとした。


「…湊くんに本命の彼女ができたら諦める」

「本命の彼女なんて…」

「じゃ、諦めない」

「何で…」

「遊びの女に遠慮する必要がない」

「女の人の問題じゃなくて、湊君の気もちの問題なんじゃ…」

「だって…、何か思ったより話合ったし」「湊君が合わせてくれてるんじゃない?」「そんな感じじゃなかったけど…」

「湊君だよ?会話合わせるなんて、訳無いでしょ」

「だから、そんな感じじゃ、なかった…」

「湊君、本命いるよ?」

「知ってる」

「え…」

(湊君の本命が絵理だって知ってるの…?!)

「その人、誰?」

(ほっ…。…知らないのか…)

孝司は安心した。

「言えないけど…」

「適当に言ってない?」

「…言ってないよ…」

「……」


「佐和の事、真剣に好きでいてくれる人の方がいいよ」

「私が、真剣に好きなのは、湊くんだよ」

「もう…」

孝司は、ため息をついた。


「孝司だって、春乃以外を好きになれって言われてもこまるでしょ?」

「そりゃ、大困りだけど…」

「もうちょっとだけ、好きでいたい」

「もうちょっと…?」

「うん、あと1、2回デートしてみたい」「1、2回?」

「うん」

「それで諦めるの?」

「それで何の脈もなかったら諦めるしかない」

「そうか…」

(湊くん、1、2回だそうです…)

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