湊くん、気になるの?
湊は、佐和を家まで送っていた。
2人は、家が近づくたびに、言葉数が少なくなっていった。
程なくして二人は佐和の家の前に着いた。「じゃぁね」
「うん。送ってくれてありがとう」
「うん」
「…湊くん」
「何…?」
「また、一緒にランチ行ける?」
「…行けないよ。今日は、この間の相談のお礼で行っただけ」
「うん…」
「じゃ」
「ね、何か、困ってることない?また、話聞くよ…」
「…無いよ」
「そっか…」
「……」
「そっか…」
「ごめん…」
湊は、背中を向けて歩きだした。
「ね、湊くん」
佐和は、後ろから声をかけた。
「何だよ。もう家に入りなよ」
「うん、じゃぁね…」
「うん、またね」
「また?!」
佐和は大きなリアクションをした。
「佐和…。俺、佐和の事、女の子としては、絶対好きにはなれないから。佐和のこと、妹みたい思ってるから、遊びで付き合うなんてのも絶対出来ない」
「うん…」
湊は、それから何も言わず背を向けて帰っていった。
佐和は玄関のドアを開けると、止まらない涙を家族に見られないように、自分の部屋に駆け込んだ。
ピンポーン
「はーい」
谷川家のチャイムがなり、孝司がでると、そこには湊がいた。
「あ、湊君。絵理もパブロ兄ちゃんもまだ帰ってないんだけど…」
「孝司に用がある」
「俺?!」(何かしたったけ…?)
「ガスト行くぞ」
「え?」
「ドリンクバーおごってやるから」
「んなもんで、偉そうにされても…」
湊は、孝司の頭を叩こうとしてやめた。
孝司も叩かれると思って身構えたが、湊の表情が心なしか暗かったので、素直に出かける事にした。
「…書き置きしてくるから」
「悪い」
「何でもあるようで、何も無いのがガストのドリンクバーだ」
「深いね」
「ね」
「そんなことはいいんだよ、どうかした?」
珍しく孝司が突っ込んだ。
「佐和のこと、ちゃんと振ってみたんだけど…」
「そう。泣いてた?」
「俺の前では、泣いてない」
「そっか。でも、良かったんじゃない?佐和も吹っ切れたでしょ」
「俺、心苦しくて…」
「あら、意外」
湊は孝司を睨んだ。
「しょうがないよ。むしろ、ここまで、野放しにしてきた事の方が、残酷だったのかもよ?」
「また、グサッと刺してくるな…」
「嘘。そんなんで傷つくの?」
「春乃の元彼と早くくっつけてくれ」
「そうなればいいけどね」
「お前がそうしろよ」
「そんな技術もってないよ」
「絵理とパブロ君、くっつけたじゃん」
「あれは、もう既定路線だったから…」
「にしても、孝司いなきゃどうなってたか…」
「確かに俺じゃなきゃできないとは思う」
孝司は自信満々で言った。
「じゃ、その力また発揮しろよ」
「頑張ってみるけど…。佐和も駿太も、一筋縄じゃいかないからな」
「……」
「佐和も不毛な恋は終わったんだから、自分で相手、見つけると思うよ?美人でモテるだろうし」
「そうか」
「心配し過ぎだよ。新手のシスコンですか?」
「お前、今日ナマイキだな」
湊は孝司を睨んだ。
「湊君、佐和の事…気になるの?」
「…うん」
「好きってことじゃないよね?」
「俺、26だぞ」
「だよね」
「…そんなおじさんに振られて傷ついてほしくない」
「湊君、意外すぎ」
「…頼んだぞ」
「過保護だな」
「…やっぱ妹なんだよ」
「駿太なら、佐和は幸せになれると思うよ」
「うん。頼んだ」
「うん」
「…孝司なら、春乃は幸せになれる?」
「幸せだと思うよ。お互いに」
「そっか。頼む」
「うん」
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