元カノ

「お腹やばい…」

「佐和、結局パフェ食べきったしね」

「太っちゃう」

「1日じゃ太らないらしいよ」

「太るよ〜」

心配そうな佐和を見て、湊は笑った。


お腹を少し休ませたあと、2人は店を出た。

「湊くん、ごちそうさまでした」

「いいえ。この間のお礼なので」

「そういえば、そうだった」

「じゃなきゃ一緒に来ないよ」

「わー、冷たっ」

「そういうキャラにしてみた」

「キャラって言ったら意味ないじゃん」

「…そうか…」

湊は少し悩んでるような顔をした。

そんな湊を見て佐和は笑った。


「あ、そうだ。ごめん。コンビニ寄っていい?支払い頼まれてたんだった」

湊は思い出したように言った。

「うん、いいよ」

「ごめん」


2人はコンビニに入った。

「私、お菓子見てる」

「あー、じゃ俺のも選んどいて」

「湊くんの好み知らないよ?」

「佐和のオススメでいい」

「えー」

「たまに自分では買わないもの食べてみたい」

「…わかった」

「センスが問われるね」

湊は意地悪そうな笑いを浮かべると、そのまま支払いのためにレジに向かった。


(グミとグミにしよ。いらないって言われたらもらお…)

佐和は、レジの方を見た。

レジから少し離れた所で、湊と佐和の知らない女の人が話していた。

(もしかして、元カノ?)


湊は佐和を見ると、女の人に手を振って佐和の方へやってきた。

「元カノ?」

「うん。中学の時のね。…お菓子選んだ?」

「うん」

佐和はグミを見せた。

「お。俺グミ好きなんだ」

「え、そうなの…?」

「…何で、暗くなってるの?」

「え…」(あわよくば2つとも食べようとしてたから…)

「どっちも半分個して食べよ」

そう言うと、佐和からグミを取ってレジに行った。

(またまた見破られてた…。でも、カッコいい…)


入口で待ってようと外に出ると、さっき湊と話していた女の人も、誰かを待っているように立っていた。

2人は目が合った。

お互いペコリと頭をさげた。

(うわ…。綺麗な人…)

佐和は見とれてしまった。

「あの…」

「え?」

「湊くんの知り合いですか?」

佐和は、どうしても気になって話しかけてみた。

「はい…」

女の人は探るように答えた。

「あ、突然、ごめんなさい。すごく綺麗だから、話してみたくなって…」

「小林くんの彼女…?」

「いえいえ、全然」

佐和は全力で否定した。

「違うの?」

ちょっと不思議そうな顔をした彼女が、すごく可愛くて、佐和はホワッとした。


「私は妹みたいなもんで…」

「妹?もしかして春乃ちゃん?!」

「え…」

「小林君が昔、ずっと話してたんだ。妹が可愛いって」

「いえいえ!違います。私、春乃の友達で…」

「あ…、そうなの?ごめんなさい」

「春乃は私より、ずっと可愛いので…」

「え、ずっと?あなたも美人なのに、春乃ちゃんてどんだけ…」

佐和は実を隠そう色白美人だ。


「佐和?」

湊が、佐和の所にきた。

「あ…、アンナ」

「あ、ごめん、小林君…」

2人は少し気まずそうだった。

「あ、私が、話しかけたの」

佐和は急いで訳を話した。

「あまりにも綺麗で、話しかけてみたくて…」


「ふふっ。佐和ちゃん?可愛いね」

「ごめんね」

湊は少し笑った。

「春乃ちゃんかと思ったって話をしてて…」

「春乃はもっと可愛いってちゃんと言っておいたから」

佐和は焦って言った。

「そう言うんだけど、佐和ちゃんより可愛いって、結構だよ?」

「うん。佐和より、少し可愛いね」

湊は佐和を見て、ニヤッと笑った。

「少しどころでは無いでしょ」

「…少し、だけど?」

「そんな嘘いりません」

佐和はキッパリと言った。

湊と、アンナは目を合わせた。

「これ、天然なの」

湊は、アンナに言った。

「そうなんだ。可愛いね」

「そうだね」

「……。付き合ったら?」

「相変わらず」

湊はフッと笑った。

「鋭い?」

アンナは、笑った。

「うん」

湊も笑った。


「あ、友達来たから行くね」

「うん、じゃ」

湊は手を振った。

「じゃね、佐和ちゃん」

佐和はアンナにペコリと頭を下げた。


「俺等も行こ」

「うん」

2人は歩き始めた。


「何してんの…」

「ごめん」

「いいけど。たいした話してないみたいだし」


「湊くん…」

「何?」

「あの人?」

「え?」

「ずっと好きな人」

「…違うけど?」

湊はキョトンとした。

「え!?あの人以上がいるの?!湊くんが好きだっていう人、何者?」

「そう言われると、アンナに比べたら、色々足りてないな…」

湊は考え込んだ。


「湊くんとアンナさん…お似合いだね…」

佐和は悲しそうに言った。

「あははっ。見た目は合うかも。中学の時、美男美女カップルで有名だったから」

「へぇ…。すごく話も合ってた…」

「実際、当時はしっくりきてたよ。…でも、性格似すぎて」

「似すぎちゃダメなの?」

「…中学の時はもう、気持ち読まれすぎて飼われてるペットみたいな…」

「可愛がられてたの?」

「あははっ。掌でコロコロいい感じにされてたのに、俺が手を噛んだ…みたいな」

「比喩がすぎる」


「アンナさんと、もう会わない?」

「連絡先知らないからね」

「会わなければいいな」

「何で?」

湊は笑った。

「綺麗すぎる」

「勝てない?」

「…ん…」


湊はグミの入ったビニール袋を佐和に渡した。

「食べながら、帰ろう。ちょうだい」

「うん」

佐和は、グミの袋を開ける。

「はい」

「ありがとう」

湊は、佐和からグミを受け取る。


「佐和も可愛いけどね」

湊はひょうひょうとした感じで言った。

「いいよ、お世辞は」

「そっか」

湊は笑った。

「やっぱりもっとも言って…」

「…お世辞は嫌なんでしょ?」

「やっぱりお世辞だったのか…」









※ 湊とアンナの中学生時代の話は、

前作『腹黒男子は遠恋中の女子に片思い』で!

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