顔を上げるとそこには駿太が
「野々花、彼氏できたの?」
「うん。昨日、告白されて」
「へー、すごい。いいなぁ」
佐和のクラスでは、野々花の彼氏の話で、盛りあがっていた。
「そういえば、佐和って彼氏いないの?」
「いない」
「あの人は?駅で、青南高校の男子と話してるの見たよ」
「あぁ。あの人は、友達の友達で」
「カッコ良さそうだったけど」
「まぁ、そうだね」
「…好きとかではなさそうだね」
「うん」
「好きな人は?」
「…いるよ」
「その人とは、付き合えないの?」
「ずっと片思い」
「いつから?」
「引くよ?」
佐和は笑った。
「6年くらい」
「えー?!」
「告白は?したの?」
「いいえ」
「しないと、ずっと片思いだよ?」
「そうだよね…」
(湊くんに告白か…。そんなの…、どうやってしたらいいの?あー…、無理無理…)
佐和は最近、その事ばかりを考えていて、今、文字通り、頭を抱えていた。
「どうしたの?変な顔して…」
「へ?!」
佐和が顔をあげると、駿太がいた。
「…あ、駿太くん…」
駿太は、佐和に話しかけずに済むのならそうしたかったがここが電車のホームで、そこで春乃の親友だという人が変な動きをして、周りからヒソヒソ言われてるのを見てはいられなかった。
「大丈夫…?」
「え?大丈夫…」
「そう…?」
「うん。普通だよ」
(普通じゃねーだろ…)
「今日、暖かいね」
「うん」
(そんなのどうでもいいだろ)
「今日は孝司いないの?」
佐和は話を切り替えた。
「多分いないよ。正直ホッとする…」
「あははっ。やっぱり、孝司嫌われてる」
「…嫌いじゃないよ」
「え?」
「別にいいヤツなんだと思う」
「そうなの?!」
「ただ、気まずいから、イヤだ」
「そうだよね」
「なのに…あいつ、俺の事、好きらしい…」
「あははっ。孝司にしては珍しく積極的だな」
「そうなの?」
「うん。あんまりね、馴れ合わないから、あの子」
「そうなんだ」
「…相当好きなんだね…」
「怖い…」
駿太が険しい表情で言うので、佐和は笑ってしまった。
「ずっと気になってたんだけど…」
「ん?」
「谷川と小林って、別れる必要あったの?」
「うーん…、なかったかもね」
「だよね。あんだけ仲良いんだから」
駿太はため息をついた。
「ごめんね。巻き込んで」
「ううん。逆に水差しちゃったし…」
「いい水でした」
「何とも言えないけど」
「ははっ。ごめん」
「…谷川ってどんな人?」
駿太は、正直そこまで知りたくなかったが、間をもたせるために聞いた。
「孝司?」
「うん。変なやつだって言うのは知ってるけど」
「あぁ。頭いいよ?学年1位から、落ちたことないから」
「そうなの?!」
駿太は大きな声を出した。
「あ、ごめん…」
「あはは。そう見えない?」
「見えない…」
「あははっ。そうだよね。あと、子供っぽく見えるけど、意外としっかりしてるよ」
「子供の部分しか感じない…」
「そう?」
「そう」
「ここだけの話、孝司はお姉さんとお姉さんの彼氏と一緒に住んでてね」
「え?!」
「いつも、二人の世話が大変って嘆いてたよ。本当かわからないけど」
佐和はクスクス笑った。
「親は?一緒に住んでないの?」
「ご両親、孝司が小さい頃になくなってるんだって…。私も、詳しくは聞いてないんだけど…」
「そういえば、前にチラッと聞いたような…」
「苦労人だよね」
「そうだね…」
「だから、大人にならなきゃいけない事、結構あったと思う。でも、根は子供なんだろうね。天然」
「だね」
「孝司って、あまり人に懐かないんだけど…、同情的なのされたくないからみたい」
「ま、そうだよな…」
「同情はしないでね」
「うん。…彼女の元彼に友達になってなんて言うクレイジーなやつだと思ってるから」
「あははっ。ホントそうだよね」
駿太は、苦笑いをした。
「あ、電車来たね」
「うん」
「あ、葉山さん」
「何?」
「何があったのか知らないけど、」
「ん?」
「あんまり悩まない方がいいよ」
「え?」
(何で、私が悩んでる事わかったんだろう?!)
「…気がついてない?」
「え?」
「俺と会う前、変な動きしてたよ…」
「え?!」
「考えすぎない方がいいよ…。…葉山さん?」
(恥ずかしすぎる…!)
佐和はまた頭を抱えた。
「フッ…」
「今、笑った…?」
「笑うでしょ、そりゃ」
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