9歳差はアリ?

電車を待つ学生達が溢れている駅のホーム。

そこで、孝司は佐和を見つけ声をかけた。

「佐和」

「孝司」

「また会ったね」

「ね。あれ?春乃は?」

佐和は孝司の近くをキョロキョロ見回した。

「春乃ね早退したらしい。な?」

その目線の先には、駿太がいた。

「あ、どうも。具合悪くて帰ったみたい」

「あ、どうも。そっか、心配だね…」

「うん、俺、帰りに春乃の家に寄ってみる」

「うん。お大事にって伝えておいて」

「うん」


「…じゃ。俺行くから」

駿太は、佐和に軽く会釈をした。

佐和もペコリと頭を下げた。

「駿太、またね」

「……ん」

駿太はその一文字だけ言って、去って行った。


「孝司、相変わらず嫌われてるね」

佐和は笑った。

「うーん。でもさ、元カレ、今カレの関係性の中では、仲いい方じゃない?」

「そうだね。ものは考えようだね…」

「呆れてない…?」

「いや…」

「呆れてんだろ」

「あはは。孝司って変わらないから安心する」

「どうせ成長してないよ」

「…私は早く成長したい」

佐和は、ボソっと言った。

「え?」

「ううん。なんでもない」

え?とは言ったが孝司には聞こえていたし、

その言葉の意味も理解していた。


「佐和は、彼氏いないの?」

「いたら言ってるよ」

「そっか。好きな人は?」

「いないよ」

「佐和…」

「何?」

「春乃は、全く気づいてないけど。俺は気づいてる」

「…何が?」

「湊君」

「え…?…あぁ…」

孝司は佐和をじっと見た。

佐和は目をそらした。

「…ちょっとカッコイイって思ってるだけだよ」

「そっか…」

「…ちょっと」

「ん?」

「ちょっとだけ、好きだけど…」

「うん…」

佐和は顔が赤くなった。


「孝司って、自分の事まったくないわかってないのに、人の事、すごい気がつくよね…。やだな…」

「あははっ。いやでしょ」

「私が17歳で、湊くんが26歳…。9歳差は大きいよね…」

「そうだね」

「でも、いけなくもない年の差だから、困る…」

「いけるんだ…」

「たまにいるでしょ。年の差婚とか」

「いるね…。でもさ、年の差どうこうって話だけではないよね、湊君って…」

「だよね。こう…、相手を見透かすような…。笑ってても、別の事考えてそうな…」

「腹黒ね」 

「きっぱり言ってやんな…」

「あははっ。見た目だけじゃなくて、そこまでわかってて好きなんだ」 

「うん…」

「わぉ」

佐和は、孝司を本気で殴りたくなった。


「湊くんて、今、彼女いるの?」

「あー、いる…のかな。2、3ヶ月前はいたけど。ほら、あの人トッカエヒッカエだから…。あ…、…ごめん」

「あははっ。いいよ。それもまたいいんだよね」

「いいんだ…」

「…その中の1人でもいいから、付き合いたい…とか思ってたりして…」

「湊くんは、そんなことしないよ…」

「だよね。春乃の友達にね…」

「真剣に好きになってくれる人と、遊びで付き合ったりしない。結構、真面目だから」

「そっか。ね、孝司…」

「ん?」

「私、どうすればいいと思う?!」

佐和はグワッと孝司の顔をみた。

「お、俺は、あんまり付き合ってほしくないけど…」

「付き合うにはどうしたらいい?」

「えー…、湊君の好きなタイプとか知らないしな…」

「忘れるなら、どうしたら…」

「思ったんだけどさ。全部の答え。告白するってことじゃ…」

「あー…、だよね…」

佐和は頭を抱えた。

「……。佐和って、自分のことになるとほんとポンコツだよね」

佐和は今度は、本気で、孝司を殴った。

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