大人っぽくなったね…

「わ、なんか久しぶり…」

「そうだよね。うちに来るのは中学生ぶりだね」

佐和と孝司は、前に約束した通り、春乃の家に遊びに来ていた。


「私、お茶入れてくるから。座って待ってて」

「うん。ありがとう」

佐和が、床に座ろうとした。

「佐和、ソファ座んなよ」

孝司が勧めてくれた。

「ありがとう。孝司って何気に優しいよね」

「ん?」

「駿太くんに、黙れ、って言ったの信じられない」

「もう、やめてよ…。恥ずかしい…」

孝司は、赤くなった顔を見られないようにした。

「そのくらい本気で、ヨリ戻してくれたの嬉しいよ」

「佐和が嬉しいの…?」

「うん。春乃の相手は孝司しかいないからね」

孝司は、さらに顔が赤くなった。

「ね…、佐和は…」


「おまたせー」

春乃がお茶を持ってやってきた。

(タイミング悪いな…)

「ありがとう。実は今日も塾あるから、3、40分くらいしかいられないんだけど…」

「じゃ、俺とお同じだ」

「ん?」

「あ。俺いつも30分だけ春乃といるの」

「え?30分?!」

「あ、だけど、毎日だよ?」

「春乃、いいの?」

「うん。前よりだいぶマシなの」

春乃は曖昧に笑った。

「へー、孝司、いい彼女持ったね…」

「うん。いい彼氏持ったと言われるように頑張ります」

「頑張んない事を頑張ってね」

春乃がジロリと、見た。

「はい…」

「仲よし〜」

佐和はニコニコしながら、2人を見た。


ガチャ。

玄関のドアが開く音がした。

「お兄ちゃんだ。 おかえりー」

春乃はリビングから、大きな声で言った。


「ただいま」

リビングに顔を出した湊は、佐和に気がついた。

「あれ?佐和か。久しぶりに見た」

「お久しぶりです」

「大人っぽくなったね」

「え、そうかな…」

佐和は照れた。

「俺の佐和のイメージ小学生で、止まってるからなぁ」

「…小学生って」

「孝司なんて、幼稚園のイメージだよね」

「えー」

「2人とも可愛かったな」

「バカにしてる可愛いでしょ…?」

孝司は冷めたように言った。

「可愛かったのにな…」

湊はため息をついた。

「じゃね。あ、孝司、パブロ君に土曜日行くって言っといて」

「何?」

「飲みに行く」 

「仲いいね」

「別に、じゃあね」

湊は、部屋に入っていった。


「湊君、照れてるね」

孝司は、ククッと笑った。

「お兄ちゃんの事、バカにしないでね」

「バカにしてないよ」

孝司は慌てて言った。

「春乃は相変わらず、湊くんの事、大好きだね」

「うん。勘違いされるけど、すごい優しいから」

「…そうだよね」(春乃にはね…)

一瞬、沈黙が流れた。


「ね、春乃と孝司がどうやってヨリ戻したか教えてよ」

「え…」

「何?」

「ちょっと…、俺、恥ずかしいから帰るわ…」

「じゃ、春乃から詳しーく聞いときます」

「…恥ずかしい…」

孝司は、小さい声で呟いて、帰っていった。


「本当に合う時間30分でいいの?」

「ん?うん」

「へー。てことは、別れる前は、30分すら時間とれなかったってこと?」

「そうだよ…。酷いよね…」

「ひくね…」

「ね。でも、お兄ちゃんが、孝司と交渉してくれたみたいで」

「アハハッ。交渉?」

「そう。私のためにどのくらい時間作れるかって」

「相変わらず、シスコンだね」

「だね。でも、ありがたい」

「いいね。湊くんが居てくれたら最強だね」

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