鏡見たことある?
(あ、小林と谷川の友達だ…)
駿太は、電車の駅で佐和を見つけた。
(目合わないようにしとこ…)
「駿太」
「なんだよ…。あ、ごめん。間違えた」
「びっくりしたー」
駿太と同じクラスの女子だった。
声も全然違うのに、条件反射で孝司だと思って悪態をついてしまった。
「ごめん。最近、ずっと話しかけてくる変なやついて、それかと思って…」
「女子?」
「男子」
「男子と声間違われるってショック…」
「ごめん」
「でも、何か駿太っぽい」
「そう」
(俺っぽいってなんだよ…)
「ね、今度、近くの神社でお祭りあるの知ってた?」
「うん」
「そっか。あのね、一緒に、行かない?」
「あ、俺、祭りとか苦手で。クラスのやつらで行くの?」
「あー、じゃぁ、そうしようかな…」
「……」
「駿太、今、好きな人とかいる?」
「いや、いないけど…」
「そっか」
「……」
「あの…、好きなんだけど、付き合ってくれないかな」
「ごめん」
「…そうだよね。春乃ちゃんと付き合ってたのに、次の彼女が私じゃね」
「そんなんじゃないけど」
「ごめん、時間取らせちゃって」
「ううん。ごめんね」
女子は気まずそうに遠くへいってしまった
駿太が春乃と別れたあとでも、あの超絶美人の春乃の元彼ということで、気が引ける女子は少なからずいた。
(すんごいメンクイって思われてんのかな…。ま…、あながち間違ってはいないか…)
駿太は、何となくこの場所にいるのが、気まずくて、空いてそうな列に並び直した。
「モテるんだね」
「わっ!」
「ごめん、そんな驚くとは…」
「あ、すいません」
声をかけて来たのは、佐和だった。
駿太は、いつの間にか、佐和の並んでいた場所のすぐそばに立ってしまっていた。
「えっと…」
「見てたよ」
佐和はニヤッと笑った。
「…声聞こえてなかったよね?」
「うん。でも、ほら何となく…」
「あ…、勘鋭いんだっけ…」
駿太はボソッとつぶやいた。
「春乃達よりはね」
「告白かぁ。すごいなぁ」
「…すごかないけど」
「すごいよ。いいなぁ」
駿太は、佐和の顔をチラッと見た。
「…モテそうだけど?」
「私?全然!」
佐和は笑った。
「春乃の橋渡しばっかりやってたから」
「そっか」
「そうだよ」
「…あの、名前…。佐和さんだっけ?」
「ん?うん」
「名字は?」
「葉山です」
「葉山さん。呼び名ないと話しづらくて…」
「そうだよね。私、駿太くんでもいい?」
「え。…はい」
駿太は下の名前を呼ばれて、頬が赤くなった。
「春乃と喋ってるとき、駿太くん呼びだったから、慣れちゃって…」
「…俺の話してたのか…、恥ず」
駿太は思わず口を押さえた。
「あ、そうだよね。ごめん…」
「いや…」
「でも、春乃、否定的な話は、全然してなかったよ?」
「そうなの…?」
「うん。話しやすいって」
「そっか、なら、まぁ…」
「…実際、会ってみると…」
「……」
駿太は身構えた。
「思ったよりイケメンでびっくりした」
「あははっ。思ったより、ね」
「あ…」
「あ、いいのいいの。そんくらいの方が…」
「そう?」
「うん」
佐和は安心したように笑った。
「……」
「どうかした?」
「いや…、小林の橋渡しばっかりしてたって、損だね」
「あはは。何?話もどったね」
「だって…、美人なのに…」
「あはは。全然」
「……」
「何?」
「鏡見たことある…?逆の意味で」
「?」
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