湊の怒り 春乃&孝司のピンチ

「ただいまー」

湊が家に帰って来た。


「!やばいっ!」

春乃と孝司は、さっきまで、ベットの上でまどろんでいた。

「服っ、服!」

2人は大慌てで、服を着た。


「春乃、髪…」

孝司は、春乃の乱れた髪を素早く手でとかす。

春乃は少し顔が赤くなった。

孝司はそれを見て、次は丁寧に撫でた。


「孝司!!」


春乃の部屋のドアの向こうから、湊の怒鳴る声が聞こえた。


「はいっ!!」

孝司は、急いで部屋を出た。

「いつまでいんだよ」

「ごめんなさい…」

「ホントに大事にしてくれてる?」

「はい」

「そうなの?」

湊は春乃に聞いた。

「うん」

春乃は湊の目を見て言った。

「はぁ…。あまり羽目外しすぎんなよ」

「はい」

「…人の事言えないけど…」

湊はボソッと言った。

「だよね…」

孝司はやばいと思ったが、もう遅かった。

湊の顔は、キレているのがあきらかだった。

「帰れ!!」

「すいません」

孝司は逃げるように帰った。

玄関を出るとき、春乃に軽く手を振った。

湊は、熱い視線を交わしている2人を見て、さらにイライラした。



「お兄ちゃんごめん」

「…いや、シスコン出しすぎた」

「フフッ」

「…春乃。幸せ?」

「うん」

「そっか。じゃ、いっか」


湊は、キッチンへ行って、冷蔵庫からビールを取り出した。

「お兄ちゃんは、幸せ?」

「…俺?!」

「うん」

「…わからん」

湊はビールを開けて飲む。

「彼女いっぱいいるのに…?」

「…その一度に大勢みたいな言い方やめて…」

「あぁ、元カノ沢山いるのに…」

「…別に、本気で好きじゃないから」

春乃は、ポカンとした。

「もしかして、まだ好きなの?絵理ちゃんのこと…」

「違うけど。でも、同じくらい好きって思える子には、まだ会ってないだけ」

「イケメンなのに、もったいないね」

「…イケメンではないけど。でも、遊ぶ女の子に苦労しないんで」

「最低…」

「お互い合意のうえです」

「信じられない」

「…だってそこ割り切らなきゃ、いつまでも彼女できないもん」

「やっぱり、絵理ちゃんの事引きずってるよね…?」

湊のビールを飲む手が止まった。

「…そう…なの?」

「うん」

「そう…なの…?」

「そうだよ…。いつもの冷静なお兄ちゃんじゃなくなってるよ」

「うーん、気が付かなかった事にしよう」

「叶わない恋もあるんだね」

「…哀れんでない?」

湊は、うっすら笑った。

「哀れんでないよ。お兄ちゃんでも、できない事あるんだなって」

「ね」

「意地悪な話になるけど、パブロ君から奪えないの?」

「…奪えないよ」

「お兄ちゃんでも?」

「過大評価だよ」

「そんなことないと思うけど」

「それより大事なんだよ。あの2人と今の関係で一緒にいることが」

「好きな子と付き合うより?」

「そう」

「…もし、あの二人が別れたら?」

「…そんなのは、無い」

「あったら?」

「…知らん。もしもの話なんて意味ない」

「孝司が…、私よりもっと好きな人ができたら。それを応援するなんて絶対無理」

「その相手が佐和だったら?」

「わー、無理無理」

「どっちも好きな人なのに?」

「だからだよ。勝てないのわかるもん」

「勝てない…ね」

「パブロ君に勝てないの?」

「勝てない。あの人…、結構…、奥が深い」

「お兄ちゃんが言うくらいだから、相当だね」

「だから過大評価」

「だから、そんなことない」

「もう」

湊は笑った。

「パブロ君はさ、俺みたいに軽くないんだよ」

また、ビールを飲み始めた。

「軽そうに見えるけどね」

「あははっ。そうなんだよね。不思議な人だよね」

「お兄ちゃん、パブロ君も好きなんだ」

「そだね」

「…孝司もパブロ君のこと崇拝してるしな」

「崇拝?」

「そ。ホントに嬉しそうに話すんだよね、パブロ君の事」

「そっか。いいな。あぁいう人間になってみたい」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんのままがいい」「…ありがとう」

「それに崇拝じゃ負けてないから」

「あははっ」









関連小説 


※「腹黒男子は遠恋中の彼女に片思い」

(湊&えり の中高時代)

※「同居人は魔法使いで、意地悪で、好きな人」

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読むと、より世界観が掴めます(*^^*)

よろしくお願いします!

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