動き出す佐和。困る孝司。嫌がる湊。

「孝司、私、湊くんに告白する」

佐和が湊への告白宣言をしたのは、孝司と佐和が春乃の家に遊びに行った、その帰りだった。


「まじで…?」

孝司は少し嫌そうな顔をした。

「だって、孝司、前に告白したほうがいいって言ってたじゃん」

佐和の頬が少し膨らんだ。

「そうだけどさ…」

孝司は駿太の事を思い浮かべていた。

佐和が湊に告白する前に、駿太を好きになってくれるのが一番ベストだと思っていたからだ。

「他に好きな人できそうにないの?」

「うん」

「ずいぶん、はっきり言ったな…」

「そんなのできてたら6年も片思いしないよ」

「そうだよね…」

「もしかしたら、ワンチャンあるかもだし」「はい?」

「ワンチャン」

「無いでしょ…」

佐和が孝司の肩を強く叩いた。

「痛って!」

佐和は孝司を睨んでいた。


「…佐和が湊君に告白する事で、前に進むキッカケになるんならいいのかもね…」

「湊くんと、前に進めると思う?」

「いや、振られて、次の人に行くっていう意味で…」

「嫌な事いうな…」

「一番現実的だと思うけど…」

「とにかく、告白してみる」

「オー、ガンバレ」

1ミリも気持ちがこもっていない返事に、佐和はこれまでにないほど、孝司を睨んだ。

(怖…)


(ま、これでようやく諦められるか…)


「で、湊くん呼び出して」

「え?俺!?」

「孝司しかいないじゃん」

「えー…」

「孝司、昔の恩忘れた訳じゃないよね…?」

中学の時、佐和のおかげで、春乃と付き合えたと言っても、過言ではなかった。

「わかったよ…」

「次の日曜日は?」

「はぁ…。聞いてみる…」

「孝司…。ちょっとは応援してくれても良くない?」

「…本当に押したい人が別にいるんだよ…」

孝司はボソッと言った。

「え?」

「いや、俺は結果はどうあれ、佐和が幸せになるのを願ってるよ」

「ありがとう。じゃ、私、頑張る」


(あぁ、イタイイタイ…。ポンコツがすぎる…)




「何だよ、孝司!また、まだいんのかよ!」

7時頃、家に帰ってきた湊が、孝司を見て言った。

「あ、湊君、俺、今、来たとこで…」

「こんな時間に?非常識だぞ」

「湊君に、話あって…」

「何…?」

湊はあまり良い予感がしなかった。

「ここじゃ、ちょっと。湊君の部屋に入っていい?」

「いいけど、春乃は?」

「ご飯作ってる」

「珍し…」

「俺のために」

湊は孝司をはたいた。


「で、何?」

湊は1人用の椅子に座った。

孝司は床に座る。

「佐和が…」

「ヤダ」

「早いよ…」

孝司が困ったように湊を見上げた。

「俺が、佐和に告白されないようにどんだけ配慮したわかんないだろ」

「やっぱり気がついてるよね…」

「お前の方でどうにかしろよ」

「それがもう難しくなっちゃったんだよ…」

「何で?」

「もう、告るって決めたって」

「あぁ…」

湊は片手で頭を抱えた。


「でもさ、そうでもしないと次に行けなさそうで…」

「俺の長年の苦労が…」

「湊君、そういうのが良くなかったんじゃない?」

「……」

「変に繋ぎ止める形になっちゃって…」

「そんな気も…少し…する」

「とにかく、佐和の事、振ればいいから」

「お前、冷たいな…」

「じゃ、優しく振ってあげなよ」

「ん…。あぁ、嫌だな…」

「佐和のことだから、別に、恨んだりしないでしょ」

「泣いたらどうする?」

「…そんくらいいいでしょ」

「お前、すぐ慰めてやれよ」

「過保護だなぁ」

「小学生の頃から見てるんだからそうなるだろ…」

「俺には冷たいクセに」

「どこが」

「頭叩くし」

「ただのツッコミだろうが」

「パブロ兄ちゃんは絶対叩かないもん」

「比較すんな」

「俺のおかげで、春乃とヨリ戻せたんだろうが」

「はい…」

「可愛がってるだろ?」

「はぁ」

湊は頭を叩きたかったが、グッとこらえた。


「でね、日曜の11時くらいに佐和と待ち合わせて…」

「どこで?」

「公園?」

「子供だな」

「大人はどこで待ち合わせするの?」

「ん?どっかの店とか…」

「どこ…?」

「……」

「待ち合わせするトモダチいないもんね…」

「…公園でいい」

湊は図星すぎて、反撃の言葉が出なかった。








※佐和が孝司に、売った恩?

佐和と春乃と孝司の関係は、

前作『幼馴染みの恋 15歳 エピソード1』

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