人生で初めての告白

佐和の人生初めての告白。

小5から6年間ずっと好きだった相手に告白するという事で、佐和は一睡もできずにこの日を迎えた。



今日の告白にあたり、佐和は孝司に頼んで、湊を公園に呼び出してもらっていた。

待ち合わせ場所までの道すがら、佐和は湊に言うべき事を心の中で復唱していた。

(好きです…。好きなんだけど…。ずっと好きでした…)


そんな感じで歩いていると、待ち合わせ場所の公園に着いた。

待ち合わせ場所に、湊はいなかった。

(早く来すぎちゃった…。…てか、来るよね…?)

と思いながらも、佐和はさっきと同じように告白の言葉を心の中で復唱していた。


「佐和、遅くなってごめんね」

「湊くん」

佐和はびっくりして顔を上げた。

湊は焦るでもなくゆっくり歩いて来た。

「湊くん、急に呼び出してごめんね」

「うん…。歩く?」

「うん」

「あっちの、橋のある方行こう?」

湊は池の方を指さした。

「うん」


公園には大きな池があり、その周りは遊歩道になっている。

「佐和、勉強頑張ってる?」

「うん」

「将来、何になるの?」

湊はなるべく、子供扱いをした。

「湊くん…」

「うん」

「私、ずっとね…」

「……」

「ずっと湊くんが、好きだったの…」

「…うん」

「知ってたの?」

「…うん」

「そっか…」

佐和は曖昧に笑って下を向いた。

「佐和の事は…、妹みたいという意味で可愛いと、思ってるよ」

(え?可愛い?)

「だから、俺みたいなやつより、もっと誠実な人を選びなさい」

「湊君、誠実だと、思うけど…」

「違うよ。俺、今までたくさんの人と付き合ってきたけど、ほとんど遊びだから」

「うん。知ってるけど…」

「知ってるの?」

「うん」

「あはは。じゃ、わかるでしょ?」

「?」

「その中の1人になんてなっちゃダメだよ」

(その中の1人でもいいんだけど…)

「もっと良い人と付き合いなさい」

「…湊くん良い人じゃん」

「いや、だから、女の子と遊びで付き合ってばっかりなんだって」

「それが?」

「嫌でしょ、そんな人」

「別に…」

「え?!」

「そんなにモテてすごいなぁって思ってる」

「えぇ!?」

「諦める理由にはならない」

「えっ…?」

湊は、佐和をなるべく傷つけないような言い方で佐和を振りたかったが、予想外の方へ話がいってしまって焦った。

(シフトチェンジしなきゃ…)

「そもそも、俺は、佐和の事は好きではないから」

「さっき可愛いって言った」

「だから、妹みたいな感じで…」

「春乃みたいってことは、かなり可愛いと思ってくれてるってことだよね?」

「いや、春乃は別格で…」

「私、遊びの彼女でもいいの」

「はい?!」

「それでもいいの」

「ダメでしょ」

「今、付き合ってる人いるの?」

「いるよ」

「じゃ。その人の次に予約入れておいて」

「は?!」


「完膚無きまでに振られると思ってた」

「いや、振ったつもり…」

「良かった」

「さ、佐和?」

「じゃ、彼女と別れるの待ってるから」

「さ、佐和?!」

佐和はこれ以上何も聞きたくないので、慌てて逃げて行った。


(えぇ?!どうすんだ…、コレ…)

湊は頭を抱えた。

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